帰還
ここからは人との戦争です
王都陥落。
ガウラン辺境伯とのホットラインで、とんでもないニュースが飛び込んで来た。
俺達は国境でイーゼルト帝国との戦争で帝国兵を殲滅したが、王都方面は帝国の攻撃を防衛しきれずに、王城まで攻め込まれ、王国騎士団、冒険者ともに多数の死傷者を出し、ブルネル地方へと、国王含めて敗走中らしい。
俺達は第9階層の魔法陣(第5階層へ転移する)へと移動した。
ナナシが破片のまま転がっていたので、ナナシの同意を得て回収して同行してもらうことになった。
すぐに第5階層へ飛び、続いてガウラン辺境伯邸へと転移する。
待ち受けていたメイドの案内で全員がいつもの会議室へ移動した。
用意してあった食事を済ませ、お茶が配られる頃、ガウラン辺境伯が入室して来た。
横にベルタが付き従っている。
戦闘用の鎧ではなく、メイド服だった。
背が高いのでモデルが、メイドのコスプレをしているみたいだ。
ああ、よく考えてみれば、親衛隊がメイドのコスプレをしているのか。
ガウラン辺境伯が席についた。
「皆、ダンジョン攻略ご苦労であった。冒険者の諸君は帰りに報奨金の残りを受け取るように。それで、次回の依頼もここでさせてもらう。当然受けるも受けないも自由だ」
ガウラン辺境伯はベルタを見る。
すると、ベルタが少し前に出て、話しはじめた。
「ホットラインでお聞きになったと思いますが、王都が陥落しました。敗走中の王国軍は国王陛下、女王陛下を護送しあんがら、我がブルネルへ向かっています。ブルネル領内への到着は約2週間後。国王陛下一行を城内へ招き、王国軍は場外に駐屯して防衛ラインを引きます」
「私は直ぐにでも援軍に向かいたいのですが・・・」
ダミアンが苦悩の表情で発言した。
「行かれるのは構いませんが、我々も救出部隊を編成し、国王陛下を迎えにあがる予定です。
それに同行されたほうが良いのではないですか?」
「救出部隊の出発は?いつでしょうか?」
ベルタの提案にダミアンが問い返す。
「3日後です」
「それでは、遅いのではありませんか?やはり私だけでも・・・」
「遅くはありません。敗走中の王国軍ですが、国王陛下及び王妃の護衛部隊と王子、王女他王族の護衛部隊の2部隊が先行しています。その後に王城内の貴族が続き、王国騎士団を含む王国軍が殿を務めています。早々帝国軍に追いつくことはできません」
「王族の方は皆無事なのでしょうか?」
さらにダミアンが問い返す。
「王国軍に潜入しているこちらの手の者と連絡を取っていますが、そこまでは分かりません。ただ王弟殿下は討ち死にされたとの報は入っております」
「王弟殿下が・・・」
ダミアンはがっくりと頭を垂れる。
「ですが、救出部隊と合流さえ出来れば、救出は100%可能です」
「何故そのような事が言えるのですか?」
「ヒデキ様とエリー様に救出部隊に加わっていただくからです。ヒデキ様!参加していただけますよね?」
いきなり話が俺に振られてしまった。
国王に王妃、王子に王女の救出か・・・ここで断る選択肢はないな。
「3日後ですね?2日休めれば充分でしょう。参加しますよ。エリーも構わないな?」
「もちろんです!!ヒデキ様!!」
「そうか!!ヒデキ殿が参加すれば・・・」
「そう、可能です」
なし崩しに国王一行の救出部隊への参加が決まってしまった。
だが構わない。
この世界に呼ばれた(?)のは、安穏とした生活を送るためじゃない筈だ。
だから、戦争でも参加するのが因果律に従った流れなのだろう。
お茶を飲み終える頃に、国王救出部隊は編成が終わった。
エバートン、俺とエリー、ベルタ、デトレフさん、ディートリッヒ、それにダミアンの7人だった。
今回、冒険者チームは不参加だ。
2週間後の国王一行の来城に備え、防衛ラインの構築に参加する事になるそうだ。
「ありていに言えば、ヒデキ殿の国境での戦闘を見れば、ほぼ勝利は確実なのです。いかにしてヒデキ殿の魔法を隠しながら、国王陛下一行を救出し、護送するかが課題なのです」
エバートンが真剣に語る。
「この2日間でヒデキ殿と使用する魔法の打ち合わせをして、完璧な作戦を立てます。国王陛下一行の救出は、間違いなく成功します」
エバートンはダミアンを見て、
「ですから、ダミアン殿は安心して下さい。国王陛下一行の同行は、毎日ホットラインで連絡が来ることになっております。ですから最短距離で国王陛下一行と合流できます」
「はい!納得いたしました」
ここで会議は終り、解散となった。
俺とエリーは、エバートンと供にエバートン邸へと向かう。
帰りに報酬は受け取らず、後で届けてもらうことにした。
エバートン邸へ戻ると、クロエが出迎えてくれた。
クロエの姿を見た時に、何故か込上げて来るものがあり、涙が溢れて止まらなくなった。
エリーとクロエに支えられて、用意してもらっている客間に戻り、そのまま眠りについた。
どっと疲れが出て、夢を見ることもなかった。
朝遅く目覚めると、エリーが俺の横で寝息を立てていた。
ノーマはロケットが気に入ったらしく、もう一度俺に購入させて、ロケットの中に納まって寝ている。
暫く惰眠を貪るつもりらしい。
一晩寝たらすっきりした。
昨日の涙は何だったのだろう?
まあいいか・・・
朝食を部屋に運んでもらい、ゆっくりと済ませて、エバートンの研究室に向かった。
エバートンとの作戦会議は、いかに実力を隠して勝利するかに終始した。
会議が終り、スマホのフォルダを整理すると、丁度昼食の時間になったので、エリーとクロエと三人で外食をすることにした。
ダンジョン攻略で暫く外食をしていなかったので、どこにするか迷ったが、ムカイと出会った酒場のランチにする事にした。
ムカイに出会ったおかげで、生きて戻れたし、幸運を呼ぶ店みたいに思えたからだ。
店の中に入ると、夜とは全く違う雰囲気の食堂だった。
店は夜の酒場ほど混雑はしておらず、カウンターに3人並んで座ることが出来た。
エバートンから文字を習っていたので、今回はメニューが読めたのが、少し嬉しい。
ランチメニューは、山羊の肉シチューか焼魚にスープにライ麦パンのセットだった。
俺は焼魚のセットを、エリーとクロエは山羊の肉のセットを注文した。
料理が来るまで、クロエがダンジョン攻略の話を聞きたがったので、色々な魔族がいて苦戦の連続だったと話した。
昼食が運ばれて来て、それぞれのメニューを楽しんだが、山羊肉のシチューは少し臭みがあったようだ。
焼き魚にすれば良かったと、女性陣二人がぶつぶつと文句を言っていた。
昼食を食べ終り、エバートン邸へ戻るとダンジョン攻略の報酬が届いていた。
俺とエリーに金貨500枚ずつ・・・大金すぎると思い、ガウラン辺境伯に返金しようとエバートンに頼むと、もらっておくのが礼儀だと諭されてしまった。
「報酬を1部でも返すと言うことは、雇い主を侮辱したと取られてしまいます。報酬を出す側は、無理の無い範囲で支払っているのですから、遠慮なく貰っておくのが礼儀です」
「そうですか・・・分かりました。こんな大金持っていても使いようがないので、冒険者ギルドに預けに行って来ます」
「それが賢明です」
ずしりと重い金貨の袋を持って、エリーと冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドへ着いて、俺とエリーは金貨500枚をそのまま預ける。
預けた金額が2人で金貨1000枚・・・受付のお姉さんが驚いた顔をしていた。
そりゃそうか、どんな仕事をすれば、こんな大金が稼げると言うのだろう?
こうやって冒険者ギルドに金を預けておけば、どこの冒険者ギルドでも金を引き出すことが出来る。
俺の世界みたいにコンピューターネットワークもないのに、便利なものだ。
魔法の力は本当に偉大だな。
少し苦戦して、投稿しました。
明日も頑張ります。




