実力差
今日は少し遅くなりました
俺は三つの僕を召還した。
露払いは三つの僕・・・定石である。
その後に二世ではないが俺の出番だ。
後ろには、驚異的な計算能力を持つコンピューター(エバートン)。
黄泉とかつくような奴が敵にいなければ、戦力は圧倒的なはず。
城壁の下に雷獣、ロックゴーレム、上空に翼竜が出現させる。
雷獣がゴーレムに襲い掛かり、電撃で破壊し始め、ロックゴーレムは投石器を端からなぎ倒し始めた。
翼竜も投石器とゴーレムを上空から叩いてゆく。
200メートルほど後方に待機していた敵兵に動揺が見て取れた。
無理も無い、見た事もないでかいゴーレムと翼竜が出現したのだ。
同様に味方も呆然としている。
ブライアンに至っては、顎がはずれそうなくらい、口を大きく開けていた。
実に分かり易い奴だ。
「ヒデキ殿、投石器とゴーレムを排除し次第、一旦僕を回収して下さい」
「了解です」
敵のゴーレム達には別の指令が下ったらしい、投石を中止して、ロックゴーレムに向かって突撃を始めた。
しかし、ロックゴーレムと敵のゴーレムでは巨人と小人ほどの大きさの差がある。
足首までの大きさがないゴーレム達をロックゴーレムは投石器をなぎ倒すついでに、蹴散らして、破壊して言った。
翼竜には時折魔術師からの魔法攻撃が飛ぶが、全く効果がない。
無視をして雷獣と供にゴーレムを破壊し続ける。
色々と事態を理解して来たのか、敵魔術師からの僕に対する攻撃が激しくなってきた。
「これで、敵魔術師のおおよその戦力が把握できます」
エバートンが冷静に敵の攻撃を観察している。
ロックゴーレムや翼竜へ結構でかい魔法が飛んでいた。
ファイヤー・キャノンは当たり前に連発している。
時折、ファイヤー・ノヴァと思しき魔法も、ロックゴーレムへ炸裂していた。
「なるほど・・・大体の敵の攻撃力は分かりました。次は防御力ですね」
エバートンがそう言うと同時に、敵ゴーレムと投石器が壊滅した。
俺はすぐさま、僕を回収する。
「ヒデキ殿、サンダーレインを出来るだけ広範囲に落として下さい」
「サンダーレインですね。分かりました」
コンピューター、もとい、エバートンの指示が出た。
俺は素早く『サンダーレイン』の魔法陣を呼び出す。
「エリー、最大規模でぶちかますから、魔力を俺に流し続けてくれ!!」
「はい、ヒデキ様」
エリーが横に来て右手で俺の左手を握った。
気合を入れて魔力を魔法陣へ流す。
敵兵の上空に突然雷雲が広範囲に広がった。
恐らく5万の敵兵全ての頭上には雷雲がかかっていることだろう。
俺は今一度全力で魔力を込めた。
敵兵に落雷の雨が降り注いだ。
落雷は敵兵の頭上1mぐらいで、放電していたが、それも長くは続かず、落雷は敵兵5万に落ちた。
目がくらむ程の放電現象が敵兵を包み込む。
俺は引き続き魔力を流し続けた。
エリーが魔力回復ポーションを飲みながら、俺に魔力を流し続ける。
図らずもエリーとの連携の練習になってしまった。
落雷は5分以上敵兵へ落ち続けて、収まった。
敵兵5万のうち、まともに立っているのは、1割ぐらいだろう。
残りの兵は倒れて痙攣していたり、酷い者はブスブスと煙を出して、燃えていた。
残敵掃討には、少し数が多いか?
無事な者達は、魔術師が防御魔法を個別で施した範囲が助かったのだろう。
敵兵全体に張ってあった防御結界は、すぐに破れたからな。
「ふむ、少し威力が大きすぎたかも知れませんが、結果オーライとしておきましょう。敵魔術師の力量は把握できました」
エバートンは満足そうだった。
周りの警備兵達は化物を見るような目で俺を見ている。
ブライアンはへなへなと腰砕けになり、尻餅をついていた。
エバートンは暫く熟考し、
「残敵掃討に入りましょう!」
「え?まだ1割ほど敵が残っていると思うのですが・・・」
「作戦があります。今日だけで、ここの戦いを終わらせて、ダンジョンへ戻りましょう!!」
エバートンはルーカスの方へ向いて指示を出す。
「ルーカス、下へ行って残敵掃討開始と伝えて下さい」
やはり『ホットライン』は使わない。
さすがだ。
エバートンの指示を受け、ルーカスが階下へ向かう。
「さて、ヒデキ殿には魔術師を片付けて行ってもらいます」
「遠すぎて、ピンポイントでの攻撃は難しいですよ」
「それを今から解消します」
エバートンはスクロールを取り出して、魔法陣を広げた。
すぐに魔力を込めると、俺とエバートンの5メートルくらい前に敵兵がクローズアップされた映像が現れた。
まるで映画のスクリーンのようだ。
「これで見えるでしょう?ローブを着用している者を攻撃して行って下さい」
「使う魔法はどうします?」
と聞いたところで、敵を攻撃する事にためらいがない自分に気付いた。
下を見れば、セルゲイ達が城壁の外へと出てくるところだった。
「魔法は・・そうですね。威嚇する意味を含めて、まずは『奈落』で行きましょう」
「分かりました」
『奈落』の魔法陣を呼び出し、スクリーンに映っているローブを着た男を見ながら、魔力を込めた。
ふっと消える、きっと足元には穴があいている事だろう。
周りの兵士が驚いた顔をしている。
エバートンが右手を挙げて少し横に振ると、画面も横に移動した。
再び魔術師が画面に入る。
直ぐに『奈落』を発動させた。
魔術師が消える。
ルーチンワークで10回ほど繰返すと、敵兵全体に動揺が走り始めた。
それを見計らったように、こちらの魔術師達から攻撃魔法が飛び始める。
攻撃魔法は敵の魔術師に防がれるのだが、俺がその間も魔術師を『奈落』で落とし続けた。
そして、俺が『奈落』を使った周辺の兵士達には、攻撃魔法が直撃していた。
「ヒデキ殿、魔法を変えましょう。『かまいたち』を!!」
「はい、『かまいたち』ですね、了解です」
俺は『かまいたち』に魔法陣を切り替え、引き続き魔術師を攻撃してゆく。
エリーは俺の肘に腕をからめ、ポーションで魔力を補給しながら魔力を俺に供給し続けている。
ここで、魔力回復ポーションを使い切る勢いだ。
『かまいたち』を浴びて、敵魔術師はぼろぼろに切り刻まれてゆく。
見た目にグロイ分『奈落』よりも効果的だ。
ここで敵兵にも動きがあった。
場外に出てきた人数が少ないことに気付いた敵兵が、突撃を開始したのだ。
当然のように、味方魔術師から、多くの攻撃魔法が飛ぶ。
敵魔術師から防御魔法が展開されるが、ところどころ防ぎきれずに敵兵が吹っ飛んだ。
「ヒデキ殿、ここで『サンダーレイン』を!!」
急いで『サンダーレイン』を呼び出し、魔力を込める。
再び上空に雷雲が立ち込め、落雷の雨が始まった。
魔術師と離れてこちらに突撃してきた敵兵は、モロに落雷を喰らう。
落雷の雨が収まった時、敵の数は数百になっていた。
しかもスクリーンで見ると、無傷の敵兵は殆どいないようだった。
鎧から、未だに放電の火花が出ていたり、魔術師のローブからも煙が出ていたりと、散々な状態だった。
「ヒデキ殿、今一度『サンダーレイン』を!!これで決めてしまいましょう」
「了解!!」
エリーも心得たもので、ポーションを飲み干し魔力を俺に流し始める。
「サンダーレイン!!」
必要なかったが、思わず叫んでしまった。
雷雲が立ち込め、雷特有の音が響き始める。
スクリーンには絶望的な表情をした敵兵達が映し出されている。
再び落雷の雨が敵兵へ降り注いだ。
落雷が収まった後、残っている敵兵は数十人にすぎなかった。
そこへセルゲイ達前衛が突撃を開始した。
魔術師以外、全員が敵兵へと向かい走ってゆく。
ふらふらになった敵魔術師達が攻撃魔法を撃ってきたが、全て味方の魔術師が防いでいた。
セルゲイ達が敵兵と激突する。
瞬く間に敵兵の数が減って行った。
S級戦士達の実力をまざまざと見せ付けられる。
敵兵達は全く太刀打ち出来ずに30人を切る前に、武器を捨て投降した。
こうして、ブルネル国境攻防戦は幕を閉じた。
サブタイトルの通りです。通常の人間VS人間の戦いならこうなります。




