第6階層
ようやくダンジョン攻略も後半です。
魔法陣には大量の武器、防具が置かれ、その前にベルタともう一人屈強な男が立っていた。
この男がヘンドリクの交代要員だな。
そう思ったのだが・・・
ベルタはフルプレートだった。
「ただ今戻りました!これよりガウラン親衛隊隊長に着任いたします!!」
ベルタが親衛隊の隊長だった。
では一緒に来た屈強そうなフルプレートの男は?
「ヒデキ殿、また手を煩わせてしまうが・・・」
「はい、武器と防具の強化ですね、まずはベルタさんから・・・」
「かたじけない」
俺はベルタの防具とバルディッシュをオリハルコンに元素変換する。
魔力回復ポーションは大量に俺の横に置いてある。
次に後ろの屈強な男・・・
後は運ばれて来た武器と防具にポーションをどんどん補給しながら処理していった。
皆が武器と防具を手にして、準備が整った。
「皆、休息も取れたと思う。これより第6階層攻略に入る。何か質問は?」
エバートンが皆に激を飛ばす。
「ポーションがかなり余っているのですが、置いてゆくのですか?」
「いや、その対策にポーションを運搬する自動人形をベルタに連れて来てもらった」
エバートンが屈強な男を指差した。
ああ、運搬用の自動人形だったのか・・・納得だ。
「転移魔法陣はこのままで良いのですか?」
デトレフが屋敷を襲われる可能性を懸念して質問する。
「既にここからは転移できないようにしおいた。私のスクロールを使わなければ、ここから転移はできない」
「なるほど、安心しました」
「他に質問は?・・・ないようなので、攻略開始!!」
この辺り、あっさりと終わらせるのも、ガウラン辺境伯の影響だろう。
こうして第6階層の攻略が始まった。
俺が恵理子から与えられた課題を解消しなければ、ここにいる皆が全滅してしまうのだ・・・
口外するわけには行かないが、絶対に全滅はさせない。
俺は不退転の決意を持って、皆に続いた。
極寒だった第5階層と違い、第6階層は砂漠だった。
上空に太陽が輝いているわけでもないのに、じりじりとした暑さと乾いた空気が容赦なく俺達の体力と水分を奪っていく。
皆時々立ち止まって、ウォターボールを使い、喉を潤わせていた。
襲って来る魔物は、毒の尾が二つあるツインテールスコーピオン、逆に頭が二つある、ツインヘッドスネーク、上空からはトカゲの頭にトンボの身体を持つドラゴンフライ。
どれも3メートルはある手強いモンスターだ。
しかしオリハルコンで完全武装、魔力は満タンの俺達の敵ではなかった。
途中地中から大きな口が現れて、セルゲイ、ダミアン、エルザを飲み込んだが、セルゲイが飲み込んだサンドワームの顎をバスターソードでぶち破り、あっと言う間に脱出していた。
そこから道が分岐を始めエバートン、親衛隊、デトレフさん、ダミアン、俺、エリーのメンバーでの探索になっていた。
先頭にベルタ、ダミアン、デトレフさんの三列縦隊で進んでいた。
途中でベルタが歩みを遅くして、俺の横に並んだ。
エリーが対抗する様に反対に並んだ。
「ヒデキ殿、頼みがあるのだが、よろしいか?」
「はあ・・・俺に出来ることでしたら・・・」
「うむ、聞くところによれば、ヒデキ殿の持つ魔法の中で分身を生み出すものがあるとか?」
「ええ、正確には分身を生み出して、その分身に意識が移ってしまうので、本体は隙だらけになりますよ」
ベルタになるべく正確な情報を与える。
「力は本体のおよそ8割、魔力の総量、魔法の威力も同じです。しかも分身が傷つくと、本体にもフィードバックが来て、傷ついてしまいます」
俺はベルタを見てちょっと肩をすくめながら、
「使い勝手が悪い魔法ですよ」
「例えば、分身が死んだ場合は?」
「その場合本体は瀕死になります」
「死ぬわけではない?」
「ですが、少し回復に時間がかかるので、すぐに戦列復帰とはいきませんよ」
ベルタはにやりと笑った。
「この後強敵と対した時、私がこのように横に並んだら、即座に分身の魔法を頼む」
「えっ!?ですが・・・」
「心配無用、私にはこの戦法が一番合うのだ。頼んだぞ、一度見れば分かる」
「はあ・・・そこまでおっしゃるなら・・・分かりました!!」
「ありがとう!!」
今度はにこりと笑って、ベルタは前衛へ戻って行った。
あの自信はどこから来るのだろう。
「ベルタさんの言っている意味がわからなかったのですが・・・」
「俺もだ・・・まあ強敵が現れて『ドッペルゲンガー』を使えばわかるさ」
「そうですね」
俺とエリーは会話しながらも、襲って来る魔物に2人で1つのファイヤー・キャノンを使って撃退している。
何度も訓練しているうちに、お互いの魔力の流れまで分かるようになり、完全に魔力の共有はものにしていた。
しばらく進むと、アイオロスから『ホットライン』が入った。
「エバートン殿、領域ボスの部屋を発見しました」
「そうか、少し待機を・・・待てサラサから連絡が・・・」
「エバートン殿、領域ボスの部屋を発見しました」
「何!?」
とセルゲイ、エルザからも同じ連絡が入る。
「全員『ホットライン』を繋いだまま、暫く待機・・・」
全員が領域ボスの部屋を見つけたと言う。
どういうことなのだろう?
「エバートン参謀、領域ボスの部屋は複数ある場合が?」
「それはない・・・恐らくこれは・・・」
エバートンが思考を廻らせる。
「危険だが、領域ボスの部屋に突入してくれ!!どれかが当たりで、他はミラージュ現象だ!!当たりを引いたら連絡を!!」
「「「「了解!!」」」」
少しの間があって、
「外れです」
「外れだ」
「ミラージュでした」
「こちらも外れです」
??全員外れ??
「どうやら、こちらが当たりのようだ。すぐにこちらに合流するように!!」
「今行きます」
「急ぐぞ!野郎ども!!」
「直ぐに合流します!!」
「今から向かいます」
どうやら俺達の道が当たりらしい、この先分岐すれば、親衛隊と二手に分かれることになるだろうが・・・
ドラゴンフライを魔法で叩き落し、ツインテールスコーピオンやツインヘッドスネークは、バサバサ切り倒されてゆく。
暫く行くと、分岐することなく領域ボスの部屋に着いた。
「突入しますか?」
ベルタがエバートンに聞いた。
突入する気満々だ。
「皆を待っても良いが・・・少し気になる事がある・・・突入する!!」
「承知!!」
ベルタが先頭を切って突入する・・・と今まであった部屋が消えてしまったのだ。
「えぇぇぇぇー!?」
ベルタの驚愕の声が響き渡った。
俺達の目の前には広大な砂漠が広がっているだけだ。
「やはりそうか・・・」
「な、何が起きたのでしょう?」
ベルタがうろたえて聞いた。
「我々はとうに領域ボスの部屋にいたのだ!」
「「「「えっ!?」」」」
俺も含めて複数が声を出していた。
「エバートン参謀!どういう意味ですか?」
俺が代表して聞く形になった。
「うむ、我々は最初に分岐に当たり、チームを分けた時、既に領域ボスの部屋に入っていたと言うことだ」
「と言うと?」
よく分からない。
俺の頭でも理解できるように解説して欲しい。
「分岐からしてミラージュだったのだ、我々は領域ボスの部屋をうろうろと彷徨っていたのだ」
なるほど、漸く理解できた。
ここの領域ボスは闘うのが苦手らしい。
俺達を蜃気楼で惑わせて、消耗させようとしているのだろう。
と各チームから、エバートンに『ホットライン』が入った。
「「「「道が消えています!!」」」」
「よく聞け、我々は全員すでに領域ボスの部屋にいる!!ミラージュに惑わされているのだ」
「何だって!?」
セルゲイだな・・・
「今からこちらで大きな魔術を使う、それを探知して集まるように!!」
「「「「了解」」」」
さすがにS級の面々だ・・・切り替えが早い。
「さて派手な魔法を・・・ヒデキ殿『サンダーレイン』を!!」
「了解です!!」
なるほど、派手な魔法だ。
俺は『サンダーレイン』を呼び出し、魔力を込める。
エリーが密かに魔力を同調させた、見事だ。
俺達の前に雷撃の雨が降り注ぐ。
うん、これなら皆すぐに合流できるだろう。
早めの投稿ができたので、プロットにかかります。




