純白の魔族
本日今から外出して、帰りが遅くなるので、今投稿します。
昨夜は後書きでは、夜遅くなると言ったのですが、やはり今投稿することにしました。
氷のダンジョンの主は、魔族に似つかわしくない純白の魔族だった。
真白なスーツにシルクハット、白い蝙蝠の翼。
暢気な口調で親しげにしゃべる魔族だったが、その実力はとんでもなかった。
ファイヤー・ゴーレムの炎を凍らせ、粉々にしてしまったのだ。
その魔族が言ったのは・・・
「このまま終わらせてあげるからねぇ~」
だった。
「全員最大防御!!物理、魔法両方だ!!」
普段口調がていねいなエバートンがあせって指示を出した。
エバートンは魔族の口調に危険を察知したのだろう、防御魔法陣を取り出し最大の防御結界を展開させる。
皆、前日に配られた3つの指輪に魔力を込め、さらに各々最大防御の体制を取った。
魔術師は防御結界を全員に張り、凄まじい多重結界になった。
通常なら無敵状態だが・・・
「すごい!すごい!ベリアルにやられたのが相当堪えたみたいだねぇ~」
魔族は余裕の言葉で、腕をこちらに向け続ける。
シンと静まり返った空間に、微妙な音が響き始めた。
ピシッとか、パキッとか、何かにひびが入るような音だ。
「気をつけろ!!何か変だ!!」
俺の前で防御姿勢を取っていたダミアンが、辺りを見回しながら叫んだ。
「床が・・・」
誰かが呟き、皆が床を見た。
床にひびが入り始めている・・・いや、よく見ると壁や天井にもひびが入り始めていた。
崩落?違う!この空間がどんどん冷え続けているのだ!!
「まずいぞ、足が床に張り付いて動かん!!」
「俺もだ!」「私も!!」
「魔術師で熱魔法が得意な者、全員を暖めよ!!凍死を防げ!!」
魔族の攻撃はこちらの防御魔法、多重結界を無視してこの部屋全体を冷やし始めたのだ。
エバートンは指示を出し、新たに魔法陣を取り出して書き込み始めた。
が、その手が止まる。
見れば魔法陣のスクロールが凍り始めていた。
エバートンの得意技が封じられてしまった。
魔法陣への書き込みが出来ないのだ。
「!?一時撤退するぞ!皆、撤退だ!!」
エバートンが叫ぶが遅かった。
誰も動けなくなっていたのだ。
魔術師による保温で身体自体は動くものの、靴が床に張り付き足が床から離れない。
防具は凍り、身体を動かす事が出来ない。
「僕はベリアルと違って、手抜きはしないからねぇ~逃げる事が出来るなんて思わないでねぇ~ここで終わらせるからぁ~」
いちいち鼻につく喋り方だが、その実力は計り知れない。
これは・・・絶対零度の魔法だ・・・
摂氏マイナス273.15度・・・到達不可能な温度・・・
魔族の魔法なら可能なのか・・・
全ての動きが止まり凍りつく・・・
俺は辛うじてスマホを操作して『ブースター』を呼び出し自分に掛けた。
これで少し動ける、動けるうちに『サンダーレイン』をこの空間全体に落とす。
魔族、味方、全員に落とした。
防御結界が発動しているので、ダメージはないが、運動エネルギーの回復を狙ったのだ。
魔族には当然効果はなかったが、全員が辛うじて動けるぐらい回復したみたいだった。
「今だ!!少しでも良いから動けるうちに下がれ!!」
俺は魔力回復ポーションを飲みながら叫び、スマホを操作して『指定崩壊』を呼び出し、魔族が翳している右手を凝視する。
その間に全員が少し下がり、そこで再び凍り始める。
当然、俺が一番前に立つ形になった。
「ヒデキ様!!何故?」
「ヒデキ、何故下がらない?」
エリーとセルゲイが同時に叫んだ。
下がろうと思ったのだが、攻撃を優先したら、逃げ遅れただけなのだ。
格好悪いから言わないけど・・・
「今からあいつの右手を消す、動けるようになったら撤退だ!!」
「ヒデキ殿!!可能なのか?」
「出来る!!」
ダミアンの問いに答えたところで、魔族の右腕がぼろぼろと崩れた。
「おや?やりますねぇ~でも・・・腕はもう1本ありますからぁ~」
魔族は暢気にしゃべりながら、すぐに左手を翳す。
一瞬弱まった冷気が一気に元通りになる。
冷気が弱まった瞬間にエリーが俺を少し引きずり、皆少し下がった。
未だ俺が先頭の態勢だ。
エリーが俺の横に付いているのが、少し違うか・・・
脱出口にはまだまだ距離がある・・・
魔族の右手は既に復活していた。
「次はすぐに右腕と交代するからねぇ~さっきの戦法は使えないよぉ~」
むかつく奴だ・・・
俺は次の魔法陣を呼び出す。
「エリー、ファイヤー・ノヴァを撃てるか?」
「はい、なんとか行けます!!」
「よし、やってくれ!!」
「はい!!」
エリーがファイヤー・ノヴァを魔族に放つ!
と、同時に後方から攻撃魔法が魔族に飛んだ。
数名の魔術師が援護してくれたのだ。
全ての攻撃魔法は打ち消されたが、その隙に俺は『スーパー・ノヴァ』を発動させた。
魔族の身体が一分揺らぎ、冷気が少し緩む。
俺も含めて、2、3歩後退したところで、また凍りついた。
急いで魔力回復ポーションを飲み干して魔力の回復をする。
「ヒデキ殿暫く休まれよ!!私が引き続き攻撃する」
エバートンが俺に助言をくれたので、振り返るとエバートンが新しいスクロールを取り出していた。
その魔法陣にエバートンが魔力を注ぎ込む。
その瞬間に魔族の周りがスパークし閃光に包まれた。
冷気は少し緩むが、すぐに元に戻り、スクロールは粉々に砕け散る。
「逃げるまでスクロールが持つとは思えないなぁ~あきらめて、みんな凍りついてしまおうよぉ~」
魔族は平然と絶対零度の攻撃を継続させていた。
確かにこのままではジリ貧である。
多重の防御結界と魔術師の発動魔法で皆は辛うじて生きている。
しかし、ほとんど身動きもとれない。
魔力が切れた時が、最後だ。
なんとか打開策はないのだろうか?
「ヒデキ殿、自動人郷に『ブースター』をかけてもらえるか?奥の手を使う」
エバートンが「奥の手」と言うからには、何かこの現状を打開する方法があるのだろう。
「分かりました、行きます!!」
急ぎ『ブースター』の魔法陣を呼び出し、二人の自動人形に魔法をかける。
同時にエバートンがスクロールを取り出し、二人に魔法をかけた。
「行け!!」
エバートンが命じると、自動人形二人は高熱を発しながら魔族へ向かって行った。
高熱とブースターのおかげで、自動人形は走りながら魔族へ向かう、それが小走りになり、歩くスピードになり、スローモーションになった時に魔族に到達した。
「何ですか?あなた達?」
魔族が面喰って、普通の口調に変わる。
その瞬間に二人の自動人形は魔族に抱きつき・・・大爆発を起こした。
核爆発のような閃光と爆煙が立ち上る。
あっと言う間に周囲が常温に戻る。
「今だ!!撤退!!」
エバートンの叫び声を合図に全員が出口へと走り出す!!
先頭を行くゴールド・エクリプスのパーティが出口に達しようとした瞬間、バシッという音と共に、出口が分厚い氷で閉ざされた!!
「!!??」
ゴールド・エクリプスが急ブレーキをかけた乗用車の様に止まった。
「エバートン殿!!出口を塞がれました!!」
魔術師がファイヤー・キャノン等で出口の氷を攻撃するが、全く溶けずに凍りは厚さを増すばかりだ。
「闘って勝つしか道はありません!!」
「当然でしょう!!ここで終わらせると言ったのですからぁ~逃げられる訳がないでしょう~」
魔族の声が非情に響き渡った。
全員が同時に振り向くと、上半身だけの魔族が両手を翳していた。
よく見ると、徐々に下半身も再生し始めている。
自動人形の姿は影も形もなかった。
「「「攻撃魔法だ!あらゆる攻撃魔法を打ち込め!!」」」
複数の声をきっかけに、再び攻撃魔法が乱れ飛ぶ。
俺も『サンダーレイン』を全員に落として、凍るのを遅らせ、続いて『スーパー・ノヴァ』を発動させた。
ここで魔力が切れ、急ぎ魔力回復ポーションを飲む。
魔族は下半身の再構成に魔力を使っているせいか、周囲が絶対零度になるのが遅れていた。
「一か八かだ、前衛、魔力を纏わせた武器で突っ込むぞ!!」
「「「おう」」」
セルゲイの掛け声と共に、前衛が各々の武器に魔力を纏わせ、魔族へと切りかかって行った。
セルゲイ、ダミアン、サラサ、アイオロス、エルザ、ヘンドリク、クラウスと連続して切りかかり、すぐにステップバックで離脱した・・・ところで皆再び動きが止まった。
絶対零度が再び発動したのだ。
「よく頑張りましたぁ~でもここまでですぅ~」
魔族は完全復活していた。
人が魔族と戦うという事は本来こういうことだと思います。




