共闘
ヒデキが自分の魔法の種明かしをしました。
さてどうなりますか?
俺はスマホをテーブルの上に置き、エバートンを見た。
「この中に大量の魔方陣が入っているのですな?」
エバートンは自分の予想が当たって満足そうに尋ねる。
「そうです。このように呼び出すことが出来ます」
俺はウォーターボールの魔方陣を呼び出し、魔力を込めた。
テニスボール大の水球が出現し、宙に浮く。
周りを見回すと、部屋の角に花瓶が置いてあったので、その中に水球を放り込んだ。
「と、こんな感じです」
「なるほど、これは便利ですな。この中の魔方陣全て見せていただくことは出来ませんか?」
「全部ですか?・・・」
全部見せるとなると、かなり時間がかかるな。
見方を教えても、メモとか取りながらだと・・・
へたすると、夜までかかるか?
などと考えていたら、
「もちろん、ただで見せろとは言いません!出来る限りの報酬とマジックアイテムやスクロールの提供をさせて頂きます」
一方的な取引で得にならない。と、勘違いされてしまった。
「いえ、今度のダンジョン攻略に情報交換は最重要だと思っていますので・・・ただ、全部の魔方陣をお見せするのに、時間がかかります。恐らく夜になると思いまして、エバートン参謀のご予定に差し障るかな?と」
「ああ、そう言う事でしたか!今日はヒデキ殿の魔方陣の研究のため、丸一日予定は空けてあります。いえ、それよりもヒデキ殿のご都合が悪ければ、また後日でも時間を取っていただくいても構いませんが・・・」
「いいえ、自分も魔方陣の検証を詳しくやりたかったのと、実はエバートン参謀にご相談したいこともありましたので、願ったり叶ったりです」
「そうでしたか、それでは夕食もこちらで用意いたしましょう。もしお嫌でなければ、宿泊されませんか?客室を用意させますよ」
エバートンは上機嫌で言った。
俺はかまわないが・・・エリーはどうだろう?
(エリー、お前だけでも宿屋に帰るか?)
(いいえ、帰りません。私も知りたい事がありますので)
(そうか?無理なら言えよ)
(はい!!)
よし、恐らくこのブルネル、いや、国では一番の頭脳と共闘できるかもしれないのだ。
乗らない手はない。
エリーの事だけは隠さなければならないが。
「分りました、それではお言葉に甘えさせて頂きます。エリーに宿に着替えと、私のバッグを取りに帰ってもらいます」
「ああ、私のメイドに行かせましょうか?信用していただけるのなら?ですが」
「いいえ、信用しないわけではないのですが、せっかくですので、魔方陣の実験をしましょう」
「ほう?」
俺はスマホに『ドッペルゲンガー』のアイコンを出した。
「エリー、これに魔力を・・・魔力はまだ大丈夫だな?」
「はい、大丈夫です」
エリーが魔力を込めるとエリーの隣に複製が出現し、椅子に座っているエリーの横に立った。
横に立つ・・・これぞスタ◎ド・・・いや、何でもない。
「ドッペルゲンガーですか?」
「そのように呼んでも良いですが、正確には違います。エリー」
「はい、ヒデキ様!!」
複製のエリーが返事をした。
オリジナルのエリーは魂が抜けたようになっている。
「意識が?」
「はい、そうです、意識が移るのです、エバートン様」
今度はオリジナルエリーが答えた。
隣のエリーは人形のように無表情になった。
エバートンは立ち上がり、二人のエリーに近付き、まじまじと見比べた。
「これは面白い。この魔方陣1つだけでも、研究に値する!!」
「エリー!宿屋に行って、肌着の着替えと、俺の荷物をバッグに入れて持って来てくれ、アラームは解除できるな?」
「はい、問題ありません。宿屋には、戻らない旨伝えておきましょうか?」
「そうだな、誰かが訪ねて来たら、エバートン参謀の所にいると伝言を頼んでおいてくれ」
「畏まりました、それでは行ってまいります。その間私の身体、よろしくお願いいたします」
複製のエリーが答え、部屋から出て行った。
「複製の方でも魔法は使えるのですか?」
「使えますが、魔力自身はオリジナルのものを使います」
「ふむ、しかし、これを使えば、戦いで犠牲者が出なくなるのでは・・・いや、オリジナルにダメージが返る可能性も・・・」
エバートンはオリジナルエリーを見ながら、色々と思考をしていた。
知能指数の高さが、よく分る。
「この魔方陣も含め、大半をムカイから譲り受けました」
「!?ムカイに会ったのですか?一体どこで?」
「昨夜、近くの飲食店で、偶然に・・・俺とエリーの髪の色を見て、同郷だと確信したらしく、話しかけて来ました」
「ムカイがこの街に・・・そうですか・・・」
エバートンにも思うところがあるのだろう。
「譲り受けたとは?ムカイは魔法が使えなくなり、引退したと聞きましたが?」
「ムカイのスマホは戦闘で破損して、魔方陣を呼び出せなくなりました。しかし、魔方陣が消えてしまったわけではないのです」
俺は、スマホからマイクロSDカードを取り出し、エバートンに見せた。
「この中に魔方陣の情報が全て入っているのです」
「そのような技術が、ヒデキ殿やムカイの世界では可能と?」
『世界』と、エバートンは言った。
俺やムカイが異世界から来たのを理解しているのだ。
・・・この男・・・天才だ。
「俺の世界には、魔法がありません。その代わりに科学・・・こちらでは錬金術が一番近いかも知れません。科学が発達しているのです」
「科学ですか、ある意味魔法と同義ですな」
高度に進化した科学は魔法と区別がつかない・・・エバートンはそう言っているのだ。
「これが俺とムカイを魔術師にしている秘密です。ご理解いただけたと思います。今から俺が集めた魔方陣と、ムカイから譲り受けた魔方陣を全てお見せします。そのかわり、お願いがあります」
「私に出来ることでしたら、何でも言って下さい」
「エバートン参謀がお持ちの魔方陣、このスマホに記録させて下さい」
「記録・・・が・・・可能なのですか?」
エバートンがごくりと唾を飲み込んだ。
「そうです、この魔方陣をよく見て下さい」
「これは・・・石碑?」
「ムカイが王国騎士団で大魔術師になったのは、遺跡調査の後でした・・・」
「遺跡の石碑を記録して・・・」
「これを俺達の世界では『写真』と言います」
「写真」
「そう、ですからエバートン参謀がお持ちのオリジナル魔方陣の写真に取る許可を下さい!!」
俺はエバートンを真直ぐ見つめて言った・
エバートンは自分の席に戻り、少し考え、
「分りました、私が持っている魔方陣、全て提供しましょう!!」
「ありがとうございます。思い切って秘密を打ち明けて、正解でした」
「では、私の魔方陣、今出しますので写真に取って見て下さい」
そう言って、エバートンは3枚のスクロールを取り出し、魔方陣をテーブルに広げた。
「この3つの複合魔方陣が、ヒデキ殿がベリアルの僕3体を倒した、魔方陣です」
そう言えば、こんな感じの魔方陣だった気がする。
早速写真に取って、エバートンに見せる。
「このように正確に・・・そうか・・・絵ではありませんね。なんらかの信号を記録して、書き出している?感じでしょうか?」
「その通りです、凄い洞察力ですね。感服しました」
これなら、俺が考えている事が可能かも知れない。
「エバートン参謀、これを見ていただけますか?」
「これは?」
俺はムカイから貰ったデータで『欠如』のフォルダを開いた。
エバートンが見て、眉根を寄せた。
「この石碑の魔方陣は一部欠けているのですな」
「この不完全な魔方陣が50個あるのです。エバートン参謀は、これらが何の魔方陣か分り、復元することが出来ますか?」
「ふうむ・・・その50個全て見せていただけますか?」
「分りました、今から順番にお見せします」
俺はエバートンの隣へ行き、『欠如』フォルダになる魔方陣を順番に、スマホの液晶画面に出して行った。
「次に、はい次に、ここは暫く止めて下さい、はい次」
エバートンは時折長めに魔方陣を見て、50個の魔方陣を見終わった。
丁度その時、
「「エリー様が戻られました」」
壁に微動だにせず立っていた二人のメイドが、二人同時にエリーが帰って来たことをつげた。
ここでエバートンの行動の方向性が決まりました。
前科同様、プロット段階で、悩みに悩みました。




