エバートン邸にて
戦闘はありませんが、重要な話です。
ガウラン辺境伯邸を出ようとしたら、エバートンから声を掛けられた。
エリーは無表情を装ったが、身体が小刻みに震えている。
染み付いた恐怖は拭い去れないようだ。
「何でしょうか?エバートン参謀?」
「少し込み入った相談をしたい、宜しければ私の屋敷で昼食を取りながら、いかがですかな?」
いずれエバートンの屋敷には行きたいと思っていたが、まさかエバートンの方から招いてくれるとは思わなかった。
どうするか?
(ヒデキ様、危険です!断りましょう!)
(いや、今回の事件が終わるまではエバートンもへたなことは出来ないさ。それよりもエバートンに聞きたい事もある。エリーは宿に戻って昼食を取って、待っていろ)
(いえ、私も行きます!!)
(それこそ危険だ。お前の正体がばれたら、お前と引き離されるかも知れない!それだけは避けなければ!だから、ダメだ!!)
(では、断りましょう!!)
(いや、今度のダンジョン攻略の成否はエバートンと俺に掛かっている。避けては通れない)
(でもでも・・・)
(いざとなれば、魔方陣を使って逃げてくるさ。心配しないで、待っていなさい)
(・・・やっぱり私も行きます!!)
「どうされました?ヒデキ殿?ご都合が悪ければ、後日でもよろしいが」
エリーとの念話で時間を食って、不信に思われてしまった。
「いえ!それでは、冒険者ギルドに寄ってお金を預けてから、お伺いいたします。丁度私もお話したい事がありまして」
「そうですか。私の屋敷は、冒険者ギルドの途中あります。ご案内もかねて、ご一緒しましょう」
エバートンはわが意を得たりと、先に歩き出した。
俺とエリーが後に続く。
エリーも俺も緊張していた。
ガウラン辺境伯邸を出て、正門を背に真直ぐ進む。
2つ目の交差点を過ぎ、三軒目の大きな屋敷の前で、エバートンは振り向いた。
「ここが私の屋敷です。昼食を用意しておきますので、冒険者ギルドで用事が済み次第、お越し下さい」
「わかりました、すぐに用事を済ませますので・・・」
「お待ちしております。お二人はそのまま入れるように扉を調整しておきます」
エバートンと別れ、冒険者ギルドに向う。
ギルドに入って、俺は金貨50枚をそのまま預け、エリーは45枚を預け、5枚は内ポケットにしまった。
「私は使う事はほとんどありませんので、ヒデキ様の別の貯蓄だと思って下さい」
「エリー、お前が稼いだ金だ。遠慮せずに自分のために使え」
「でも、欲しいものはありませんし・・・」
「そのうち欲しいものが出来るかもしれない。その時のためにとっておけ」
「ヒデキ様がそうおっしゃるなら・・・分かりました」
冒険者ギルドを出て、宿屋の前に来て、
「エリー、お前は宿屋で「嫌です!!私も行きます!!」
エリーが俺の言う事にここまで逆らったのは初めてだ。
こうなれば、俺も腹をくくるしかない。
「分った、一緒に行くぞ。万が一エリーの正体がばれて、捉えられそうになったら、最大魔法をぶっぱなして、この国から逃げる!それでいいな!」
「えっ!?何もそこまで・・・」
「それぐらいの覚悟が出来ていなければ、宿屋で留守番だ!」
「・・・」
「なあに、この国ばかりが、国じゃない、分ったな!!」
「・・・はい・・・ありがとうございます」
エリーは涙ぐみながら、頷いた。
「さあ行こう!」
エバートンの屋敷に着いて、扉を開けようとすると、音も無く扉が勝手に開いた。
自動ドア?さすがエバートン参謀の屋敷だ。
中を覗くと廊下の手前に、メイドが一人立っていた。
「ヒデキ様とエリー様ですね、お待ちしておりました。」
真白な髪に真白な肌、瞳は白い部分がなく、真黒だった。
黒いメイド服が、喪服を思わせた。
人なのだろうか?
「どうぞ、こちらへ。お食事の用意ができております」
案内された部屋は大きな縦長のテーブルがあり、奥にエバートンが座っていた。
すでに食事が用意され、エバートンの前とテーブルの手前に二人分の料理が並んで、湯気を立てている。
「ようこそ、我屋敷に!ヒデキ殿!エリー殿!冷めないように、魔法で保温しておきました。まずは食事をしましょう」
「エバートン参謀、お招きありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺とエリーは席についた。
「さあ、どうぞ!!」
「ご相伴に預かります」
でかい皿に載せてある、うまそうな肉にナイフを入れ、フォークで口に運ぶ。
ジューシーな肉汁と共に、辛味のある香辛料の香りが口に広がった。
「旨い!!」
思わず口に出てしまった。
「お気に召しましたか?ブルネル山岳地方の山羊のステーキです」
山羊?それにしては、でかい気がするが・・・深く考えるのは止めておこう。
エリーも黙々と食べている。
その後スープを飲み、パンを食べ、果物を食べて食事は、粛々と終わった。
「素晴らしい料理でした。ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「それは良かった。お茶を用意させます。何かご希望はありますか?」
「いえ、これと言ってありません」
「私もありません」
「では、こちらで選んでお出ししましょう」
エバートンは右手人差し指にはまっている指輪に話しかけた。
「お二人にお茶を、魔力回復の効果があるハーブティを頼む」
「それはホットラインですか?」
「ああ、これですか?そうですね。それの簡易バージョンですね。声だけで映像はお互いに出ません」
TV電話ではなく、普通の携帯電話ってことか。
やはりエバートンの魔法技術は凄い。
「では、そろそろ本題に入りましょう。よろしいでしょうか?」
「ええ、かまいませんよ」
ごくりと、エリーが息を呑んだ。
「単刀直入に聞きます!ヒデキ殿!あなたは、王国騎士団で大魔術師と言われたムカイと同郷の異邦人ですね!」
「!!??どうしてそう思われるのです?」
「腹の探りあいはなしにしましょう。ヒデキ殿の闘い方が、ムカイとそっくりだからです。なによりもその髪の色。この大陸にはおりません」
大陸と言う概念を知っている!!
「もしやエバートン殿も異邦人なのですか?」
こう質問した時に、お茶が運ばれて来た。
驚いたことに、まったく同じ顔と格好のメイドだった。
双子なのだろうか?
手際よくエバートンと俺達の前にお茶が配られる。
お茶を一口飲み、エバートンは首を横に振り、俺の問いに答えた。
「いいえ、私の師がこの大地は丸く、空に数多く輝く星の1つだと唱えたのです」
「その方は弾圧されたのでは?」
「よく分りますね。教会から弾劾裁判を受け、追放されました。今はこの国の東海岸で隠遁生活をされています」
どの世界も異端は弾かれるのだな。
「そうですか、正直に言いますと、エバートン参謀の言うとおりです。俺は魔術師ムカイと同じ世界から来ました。エリーも同様で、こちらに来てから一緒になりました。ムカイとは知り合いだったのですか?」
「王都で何度か会って話をしました。我が師の説を、それが真実だと言ってくれました。自分はそういうことが、教育として子供の頃から教わる世界から来たのだと・・・」
ムカイはそこまで話したのか?
エバートンなら理解できると思ったのだろう。
「そして私は、ムカイが王国騎士団を止めざるを得なかった事情を知っています」
俺はエバートンを驚いたように見た。
「今回のダンジョン攻略はヒデキ殿の全面的な協力がなければ不可能です。どうか・・・どうか・・・私に見せていただけませんか?ヒデキ殿の世界のマジックアイテム・・・『すまほ』を!!」
「!!」
エバートンが俺を懇願するような目で見ていた。
なるほど、そこまで分っていて、俺を自宅へ招いたのか・・・
ならば丁度良い。
俺も協力してもらいたいことがある。
「わかりました。お見せしましょう。その代わり、協力願いたい事があるのです」
「ヒデキ様!!よろしいのですか?」
エリーが懸念の声を上げる。
「大丈夫だ。エバートン参謀は、この世界では誰よりも進んだ知識を持っている。ここで協力し、協力してもらえれば、俺達はより強力な力を得ることができるはぞだ」
「その通りです。やはり異邦人の方は、私と同じ思考の持ち主だ。話が早い!!」
俺はゆっくりと。内ポケットからスマホを取り出して、テーブルに置いた。
プロット段階でかなり悩みました。
10回以上書き直したと思います。




