検証の続きと報告
地味な話ですが、重要です。
魔力回復ポーションを飲んで、魔方陣の検証を続ける。
9個目の魔方陣に魔力を込めた。
巻き藁の立っている場所にぽっかりと穴が開き、すとんと落ちた。
すぐに駆け寄って穴を覗いて見たが、底が全く見えない。
「エリー!底が探知できるか?」
「いいえ、全く分りません!それに巻き藁はまだ落ち続けています」
「何?・・・」
暫くすると、穴は勝手に閉じた。
『奈落』と名付ける。
エリーが10個目の魔方陣に魔力を込める。
ぞっとするような風が巻き藁に吹いた。
まだ青さが残っていた藁が黒く変色し、崩れ落ちた。
明らかに闇魔法だ。
ベタだが『デス・ウインド』とした。
11個目・・・
俺が魔力を込めたのだが、驚愕する事が起きた。
巻き藁が生き返ったのだ!
例えではない。
藁を巻いていた木は、根を下ろし枝は伸び葉が茂った。
藁も青々としている。
このヒールは普通ではない・・・
『エクセレントヒール』と名付けた。
12個目、生き返った巻き藁には悪いが、そのまま的になってもらった。
エリーが魔力を込める。
巻き藁の足元に魔方陣が浮かび上がった。
そのまま巻き藁を包み込み、消えた・・・
そこには、この世界の質の悪い紙に描かれた魔方陣が落ちていた。
「なんじゃ?こりゃ?」
「何でしょう?」
「・・・もしかして・・・」
落ちていた魔方陣に魔力を込めてみた。
一瞬で魔方陣が消え、巻き藁が立っていた。
『封印』・・・と。
13個目の魔方陣に魔力を込める。
四足の獣の影が浮かび上がり、実体化した。
豹柄の獣が佇んでいた。
身体に電光をまとっている。
雷獣だ・・・
俺の意図を汲んで、巻き藁に雷撃を叩き込んで燃やした。
さて、こいつどうしよう?
召還獣だから、消えろとは言えないし、言っても消えない。
「ヒデキ様、この子、魔方陣に戻れるのはないでしょうか?」
「!!そうか、いけるかも」
雷獣を呼び出した魔方陣を雷獣に向け、叫んだ。
「戻れ!!」
雷獣は光の塊になり、魔方陣へと戻った。
『雷獣』・・・と。
先ほどの毛玉も魔方陣に戻るかと思ったのだが、毛玉はエリーの肩に乗ったままだった。
14個目・・・エリーの番だ。
巨大な翼竜が出現した。
翼竜はエリーを乗せて、上空に舞い上がり、口から振動派のようなものを放射して、巻き藁を塵にしてしまった。
地上に降りた翼竜を魔方陣に戻し・・・
『翼竜』と名付けた。
15個目・・・俺だ。
ここまで来たら、予想通りなのだが・・・
最初に出現した炎の巨人の3倍はある大きな岩の巨人が出現した。
巻き藁はワンパンでぺっちゃんこ!!
早々に魔方陣にお戻りいただいた。
『ロックゴーレム』・・・と。
未発動最後16個目の魔方陣。
エリーが気合を入れて、魔力を込める。
上空に黒雲が渦巻き、凄まじい落雷が俺とエリーがいるコロシアム全体に落ちた。
予備に置いてある巻き藁まで全て燃えて灰になってしまった。
『サンダーレイン』と名付けた。
俺とエリーの魔力は倒れない程度にしか残っていなかったが、未発動魔方陣は、全て発動することは分った。
今日はここまでにしておこう。
さすがに16個も大魔法を発動させたので、時間も結構かかってしまった。
俺達は修練場を後にして、予定の時間よりは少し早いが、ガウラン辺境伯邸に向かった。
□ □ □
ガウラン辺境伯邸での報告と対策会議で倒れてしまってはまずいので、俺とエリーは魔力回復ポーションを半分ずつ飲んだ。
辺境伯邸へ着き、門番に扉を開けてもらい、広い中庭を通って玄関へ。
昨日一緒に闘ったメイドさんに案内してもらい、会議室に入る。
「お早う!早いな、ヒデキ殿、エリー殿」
デトレフさんが先に来ていた。
「お早うございます。デトレフ様」
「お早うございます。デトレフさんこそ早いですね」
この前と同じ様にデトレフさんの横に座った。
暫くすると冒険者チームがシルバーファング、ゴールド・エクリプス、パワーボムの順で入って来た。
「ヒデキ!無事でなによりだ!!」
「セルゲイさん動いて大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫、歩くくらいなら全く問題ねえよ」
セルゲイは豪快に笑っていた。
「エリーさん、そのアクセサリー素敵ですね」
「ありがとうございます」
リーナがエリーの肩に乗っている毛玉を褒めていた。
毛玉はエリーの肩が気に入ったのか、リーナがアクセサリーと違いするほど、動かなかった。
暫くすると、エバートン、アイオロス、サラサ、執事のおっさん、メイドさん、そしてガウラン辺境伯が入って来て、席についた。
「挨拶は抜きだ!!昨日の報告を!!まずはデトレフ、次にアイオロス、その後エバートンが総括せよ!」
「では、私から報告致します!!」
デトレフさんが立ち、口火を切った。
「昨日早朝よりレイト村へモンスターの異常発生の調査に赴きました。私が率いる冒険者3パーティが先行索敵した結果、ダンジョンが発生いることが確認されました。アイオロス隊長と私設騎士団を待って、ダンジョンに突入。10階層・・・恐らく最下層までを目標に置き攻略を開始しました。が、このダンジョン通常のダンジョンではありませんでした。」
ここでデトレフさんは一息ついた。
「第一階層のボスが真祖だったのです。それに従うガーディアンがサイクロプスとグリフォン。パワーボムのセルゲイがバーサクして、撃破しました。これによってパワーボムはリタイア。ここからはアイオロス殿、どうぞ」
デトレフが座りアイオロスが立つ。
「第2階層は我々私設騎士団右翼中隊が領域ボス手前まで攻略しました。領域ボスはキマイラ。ここからエバートン殿が合流、キマイラを倒し、第2階層ボス、グレーターデーモンと対峙いたしました」
エバートンが立ち上がり、
「ここからは私が・・・グレーターデーモンは私の魔方陣の術式を使い、撃退できました。が、第3階層は転移ダンジョン、どの道を選んでも魔物溜まりに転移することになっておりました。全員で同時突入、レッサーデーモン、グレーターデーモンの大群を撃破」
ここでエバーンは悔しそうな顔をして一息ついた。
「第3階層のボスはベリアルと名乗る上位魔族でした。僕に水龍、イフリート、バジリスクを従え、悠然としておりました。僕は私の魔方陣の術式を完全に理解したヒデキ殿の連続攻撃と、他との連携で撃破するも、ベリアルには、私の術式は全く通用せず、親衛隊4名、騎士団5名の死者を出しました」
ここでエバートンは握り締めた拳を震わせ無念そうに言った。
「さらに、アイオロス、サラサ、クラウス、エルザが戦闘不能に陥り、戦力は大幅に下降。デトレフ殿、ヒデキ殿の進言もあり、撤退を決断いたしました」
「ふむ、今後の攻略方針を述べよ!!」
ガウラン辺境伯が無表情にエバートンを促した。
「その前に、ベリアルに対する認識を共有したいと思います。よろしいでしょうか?」
「許す!!」
「はっ!それではデトレフ殿から意見を!」
「実力の半分も見せて貰えませんでした。物理的な攻撃は全く効果ありあせん。隙だらけに見えるのに、近寄ることができませんでした」
「ヒデキ殿!」
「ベリアルは我々との戦いを娯楽と考えていました。今のままでは戦力差がありすぎてつまらないと・・・」
「アイオロス!」
「私とサラサは一瞬で肩を切り落とされました。軽く腕を振るっただけなのに・・・何をされたのか、全く分りませんでした。実力差はいかんともし難いと・・・」
「私も同意見です」
サラサが指名される前に答えた。
美貌が悔しさに歪んでいた。
クラウス、エルザも同意見だった。
「ヘンドリク!!」
「ハッ!!」
執事のおっさんの名前がようやく分った。
ヘンドリクだったのか。
「親衛隊、騎士団併せて9名が倒された時、一瞬だけ殺気を感じました。勘で伏せて事なきを得ましたが、次に避けろと言われても、避けられないでしょう」
「リタ!!」
「はい!!」
メイドさんの名前はリタだった。
「私は後衛だったので、助かっただけです」
「以上のようにベリアルは、実力の片鱗しか見せずに、我々を撤退に追い込みました。ヒデキ殿が言うように、奴に取っては暇つぶしの娯楽なのです」
「業腹な事だ!!今後の方針を述べよ!!」
「先ほども申しましたように、ベリアルはこちらを甘く見ております。これから30日はダンジョンが成長しないとも宣言しました。その間に私はベリアルに攻撃可能な魔方陣を書き上げます。もちろんベリアル以上の魔族にも通用するものをです!!」
エバートンは高らかに宣言した。
「王国騎士団はどうする?」
「私が準備を整えるまでは、ダンジョンに行っても無駄死にするだけです!!」
「プライドの高い王国騎士団が、素直にこちらの言うことを聞くとは思えないがな。で、何日で準備が整う?」
「20日!20日で全ての準備を整えます!!準備が整った翌日に出立します」
「よし、では20日の間に、騎士団、親衛隊、冒険者各パーティも準備をしておくように!!必要な物があれば、全てこちらで用意するので、進言しろ!!後で思いついたなら、ヘンドリクに言えば、用意させる!!」
俺は真っ先に手を上げて進言した。
「本日修練所で、新しい大規模魔法を10個ほど習得しました。ただし、どの魔法も魔力を大量に消費するので、4発で魔力が空になってしまいます。つきましては、出立の日までに大量の魔力回復ポーションが欲しいのです!!」
「10個も・・・」
正確には16個だが、黙っていた。
周りがざわつく。
エバートンも一瞬驚いた目をして、俺を見た。
「ほう10個も習得するとは・・・やはり並みの魔術師ではなかったか・・・いずれ高名な大魔術師になるであろう!!」
「そんな大層なものではありませんが、かなりお役に立てる自信があります!!」
「よかろう!出立の日には大量のポーションを準備しておこう!他には?」
セルゲイが手を上げた。
「前衛の武器を強化してもらいたい!!できれば、マジックウエポンを人数分!」
「うむ、上位魔族には魔力を乗せて攻撃しなければ効果がないからの、承知した!!」
「ありがてえ!!感謝しますぜ、辺境伯様!!」
「よい!!他には?・・・・・ないようであれば、今日はこれで解散とする!!」
各々立ち上がり帰り支度を始める。
「冒険者パーティは、今回の依頼料と次回のダンジョン攻略の前金を受け取り帰るように!」
玄関で受け取ったら、金貨50枚だった。
俺とエリーで金貨100枚!
屋敷を出ようとしたら、声を掛けられた。
「ヒデキ殿、少しよろしいかな?」
エバートンだった。
検証で出てきた、召還魔方陣・・・3つも僕はロマンですね。
明日も当然投稿します。
プットの書き溜めがいまいち進みませんが、頑張ります。




