技術交換
なんとか間に合いました
「腹の探りあいはなしとは言いましたが、秘匿事項はありますので、ご承知下さい」
「それはこちらも同じだから、気にしなくて良いさ。まずブルネルとイーゼルト帝国は、軍事同盟を結ぶ。これに異論はないな?」
「もちろんです。ガウラン辺境伯の許可も得ております」
エバートンの前置きに皇帝の口火を切り、エバートンが返答する。
テーブルの上の食器は片付けられ、メイドがお茶を運んで来ていた。
そのお茶を一口すすり、皇帝が続ける。
「同盟の内容は、相互不可侵、危機に陥った時の相互救援、軍事物資の供給、許される限りの技術の情報交換。こんなところかな?」
「概要はそれでよろしいかと・・・ですが、相互不可侵については、王国と休戦協定を結ばなければ、意味がありません。相互救援も王国を除く事になってしまいます」
「そこは余がなんとかしよう、先にブルネルとだけでも同盟を結んでおきたい。技術の情報交換だが、これはミタと話してくれ」
ここでエバートンが少し考え込んだ。
皇帝がしたようにお茶を一口すすり、話し始めた。
「まずは王国が帝国に攻め込まない限りにおいて、相互不可侵、相互援助の条約を結んでおきましょう。王国との同盟は皇帝陛下の外交手腕に期待いたします。さて、ここからが本題です。お互いの技術・・・どこまで開示するかですね。まずはお互いに欲しい技術を口頭にて希望することにしましょう。そこで開示できるか出来ないかの判断を述べて、互いの利益になるように調整してゆく。いかがでしょう?」
「王国との外交は任せて貰おう。ミタ、まずはお前の希望を言って見ろ!」
皇帝がミタのほうをチラっと見て、促した。
「僭越ながら、私から希望を述べさせて頂きます・・・1つ・・・エバートン殿の魔法陣術式の開示。二つ・・・ヒデキ殿のスマホの魔法陣の開示。三つ・・・特殊な攻撃魔法陣をいくつか譲っていただきたい。」
ミタが指をひとつずつ折りながら提案をしてきた。
エバートンは眉1つ動かさず、淡々と答える。
「いいでしょう。今後、魔族との戦いに備えて、お互いの戦力強化は必須です。可能な限り提供いたしましょう。それではこちらの要望です。1つ・・・魔石を使った監視システム。二つ・・・その応用でしょうが顔認証しての結界の解除。三つ・・・アイアンゴーレムの製造方法と量産の仕方・・・これでいかがでしょうか?」
「俺からも2つあるのですが・・・いいですか?」
ここで俺が始めて発言した。
「ヒデキ殿から?はて?何でしょう?」
「これを直せますか?それとこれをアイアンゴーレムのシステムを利用して製造できますか?」
俺は、ムカイの壊れたスマホと手回し式充電器をテーブルの上に置いた。
ミタは、まず壊れたスマホを手に取った。
「これは・・・液晶画面が壊れただけですね。簡単に直せますよ。こちらは蓄充電器ですか・・・よくこちらの世界に持って来ることが出来ましたね・・・これの複製は簡単ですよ」
「ミタさんはスマホを持って来ることが?」
「私はラボ内を歩いていて、こちらに飛ばされましたので、何も・・・」
「そうですか、それで俺の頼みを聞いていただけるとして、条件は?」
ミタは皇帝を見て、
「陛下どうしますか?わたしにとってはたいした作業ではないのですが?」
「そうだな・・・ヒデキ殿とエバートン殿は同盟の要だ。侵略を仕掛けたのは我国だし、それくらいは、サービスで良いだろう」
「というわけですヒデキ殿。スマホを二台お持ちとは、うらやましいですな。この会談が終りましたら、すぐに修理してしまいましょう」
「有難う御座います」
「では、細かい打ち合わせに入るとしよう。こちらに提示された条件は具体的なので、このままで良いとしよう。王国側が開示してくれる情報を、より具体的に詰めて行こうと思う。まずはエバートン殿から情報開示していただける魔法陣術式はどのようなものか?教えていただけるかな?」
いよいよ具体的な条件の詰めに入って来た。
ここからはエバートンの仕事で、俺はほぼ聞いているだけになるはず。
居眠りしないように気をつけよう。
「グレーターデーモンを簡単に倒せる魔法陣、真祖を倒せる魔法陣、どうような魔法攻撃も、負荷を超えなければ防げる防御結界はいかがですか?他に希望がありましたら、なるべく希望に沿いますが」
エバートンの提示はまずはジャブのようだ。
それに対して、ミタは答える。
「そうですね、後は臨機応変に提供していただけるのであれば、構いませんよ。次にヒデキ殿のスマホに記録してある、魔法陣の中で特に有益なものを開示していただけますか?」
「その辺の選択は、エバートン参謀に任せていますので、指示通りに表示しますよ。でもミタ殿に記憶する術がなければ無意味な気がするのですが・・・」
それを聞いたミタは、にやりと笑った。
「ヒデキ殿は、私がこちらで開発した技術は全てどのようなものか理解していますよね?」
「原理は分かりませんが、どのような技術かは理解できます。ロボット、監視カメラ、顔認証システム、それにともなう防犯設備、自動ドア、インターホンと言うところですか?」
「その通りです。ならば、コピーやプリンターもあると思いませんか?」
「あっ!?」
そうか!!思わずポンと手を叩いてしまった。
「納得していただけましたか?コピーとプリンターさえあれば、例え数個の魔法陣でも強力な武器になるのです」
「確かに、それなら納得です。エバートン参謀、俺が開示する魔法陣を指定して下さい」
「分かりました。その前にコピーとプリンターとは何でしょうか?それによって、選ぶ魔法陣も違って来ます」
「コピーとは、スマホの写メと同じような機能と思って下さい。プリンターはその魔法陣を何枚も紙に複製する機能です」
「なるほど・・・それは強力な武器になりますね。ではヒデキ殿の魔法陣の開示は『デス・ウインド』『硫酸雨』『チェインサンダー』を!!」
「了解です。次々に表示するだけで、大丈夫ですね?」
俺は、この部屋の壁や天井に埋め込まれている、魔石を見ながらミタに聞いた。
「もちろんです。エバートン殿も先ほどの魔法陣スクロールを出していただくだけで大丈夫ですよ」
「そうですか・・・色々と便利なものをお持ちですな」
エバートンはスクロールを取り出し、テーブルに並べ出した。
3枚の魔法陣でひとつの魔法が発動するらしく、9つの魔法陣が並べられた。
俺は、3つの魔法陣を10秒ほどのスパンで呼び出して、表示を終わらせた。
これで、すべて記録されて、後はプリントアウトで増産できるのだろうか?
ある意味俺のスマホより、恐ろしい。
「ヒデキ殿の魔法陣は、ある程度魔力がないと発動しませんので、発動できる者を選抜したほうが良いでしょう。私の魔法陣は、魔力さえあれば、誰でも発動できます」
「分かりました。次は私の技術の開示ですね。魔石を使っての監視システムですが、まず魔石にこの魔法陣を刻み込んで下さい」
言いながらミタは小さな魔法陣を出した。
「それと王都の玉座の間で提供したものにも刻み込んで下さい。後は好きな所に魔石をおけば、順番にその場所を映し出します」
「この魔法陣はミタ殿が?」
「簡単な魔法陣です。我国の魔術師に描かせました。そして顔認証システムはこの魔法陣を!」
次にミタは同じように小さな魔法陣を出す。
「同じように魔石に刻み込むのです。次にアイアンゴーレムですが、回収されたとおりの造りで、内部にある魔石には、この魔法陣を使って下さい。とまあ、ここまでは簡単なのですが、アイアンゴーレムを増産する魔法陣・・・これが大変でした。ヒデキ殿は私のどの知識を応用したのか分かりますか?」
俺はこの問いかけの答えを予想していた。
「3Dプリンターでしょう?」
明日も頑張ります




