王都へ
ぎりぎり間に合いました
翌日、日の出を待って王都奪還へ向う。
出立前の簡単な会議でエバートンの本音が聞けた。
参加者はガウラン辺境伯勢と王国騎士団代表としてダミアンのみ。
いわゆるダンジョン攻略組だけである。
「このメンバーならば、ヒデキ殿の力を隠さずに話せます。王都への到着は騎馬で10日後です・・・王国騎士団を率いるダミアン殿はそのまま向って下さい。我々はヒデキ殿の翼竜で先に向います。さすがに王都はかなりの数の帝国軍が占領していて、密偵からの報告だけでは、全容がわかりません。前回同様ベッツ殿に偵察をお願いし、帝国軍の防衛配備の全容を確認し、それから作戦を練ります。場合によってはヒデキ殿の6大魔法の使用、エリー殿の切り札を使用する事もあります」
「私が到着する頃には、王都奪還が終了しているのでは?それだけの実力がありますよね?エリー殿まで実力を出せばその可能性が高いのでは?」
ダミアンの意見はさすがに的を射ている。
「それが理想ですが、密偵からの報告では、そう簡単にいかないようです。必ずダミアン殿の力が必要になりますので、予定通り10日後に到着するよう願います」
「は!!必ずや!!ですが、先に王都奪還されても一向にかまいませんよ!!」
「努力しましょう!!・・・では、出立!!」
ダミアン率いる王国騎士団が先行し、俺達は続いて翼竜で上空を行った。
「結界を最強レベルに引き上げますので、翼竜に最高速度で飛ばして下さい」
「了解です」
俺は翼竜に最高速度で飛ぶように命じる。
凄い衝撃が襲っているのだろうが、結界のおかげで全く影響はない。
ただ、流れる景色が尋常じゃない速度を表していた。
「う、眩暈がしてきました・・・」
「景色を見ないほうがいいですよ」
リーナが軽い乗り物酔いの症状になったので、アドバイスをしておいた。
翼竜が最高速度で飛んだのは、これが始めてだろう。
国王陛下救出の時もここまでの速度ではなかった。
それが証拠に日が沈む頃には、王都が遠くに見えて来たと思ったら、あっと言う間に城が近付いて来た。
さすがに王都だ。
城壁は3重に張り巡らされ、その外周は堀で囲まれ、出入りは大きな跳ね橋のみ。
場内は最初の城壁の中が一般の住人の生活区。
次の城壁の中が軍事区。
最内に王城が再び堀に囲まれて聳え立つ。
どうやったら、この王都が落とされるのだろう?
俺にはさっぱり想像がつかない。
王都の上空に翼竜が到達した頃、日は沈みきっていた。
もちろん複数の月が昇っているので、暗闇にはならない。
用心のため、翼竜はかなり上空でホバリングさせた。
「ええと・・・もう王都についた訳ですな?で、どうしますか?」
デトレフさんが翼竜の驚異的なスピードに度肝を抜かれながらも、質問をした。
「まずは偵察をしてもらいます。今回はベッツ殿、ローラ殿の2人にお願いしたい。王城と軍事区の二箇所をそれぞれ偵察し、報告を願います」
「二箇所の偵察なので、2人ですか・・・なるほどです」
「2人にはホットラインと姿を消すスクロールを渡します。前回と同じですが、攻撃さえしなければ、一切探知はされません。偵察はどれくらいで可能でしょうか?」
「3日あれば・・・」
「そうですね3日いただけますか?」
「それでは不測の事態も考慮して、5日間で完全な偵察を願います。携帯食は足りていますか?」
「大丈夫ですよ。携帯食は常に10日分持っていますから。冒険者の嗜みです」
「俺もそうだ」
そう言えば最初の頃に携帯食とか買ったな。
エバートンと行動を供にして、食うのに困らなかったから、忘れていた。
「早速潜入しましょう。私は軍事区を・・・丁度真下ですし」
「必然的に、俺は王城か・・・難易度高いが頑張るとするか」
ローラとベッツはすぐに支度を整える。
「では・・・行ってまいります」
まずはローラが降下して行く。
途中で姿が消える。
次にベッツは最初から姿を消し、王城へと降下して行った。
「エバートン参謀!この後はどうしますか?」
「我々は我々で偵察をする事になりますが、今日は休みましょう。郊外に森がありました。その森へ向って下さい」
「森ですね・・・分かりました」
エバートンは高速で飛ぶ翼竜から見ていたのだろうか?
それとも王都の地図を把握しているのだろうか?
まあどちらでも良いか。
すぐに森に着いて、着陸した。
野営地に結界を張り、食事を取る。
この辺りに結界を破れるような魔物や魔族はいないと、エリーが探査をした結果だ。
まず大丈夫だろう。
安心して床に着いた。
翌朝になり、食事を済ませた後、エバートンが久しぶりに新しい魔法陣を描き始めた。
簡単な魔法陣だったらしく、エバートンはすぐに描きあげた。
「さあ偵察を始めましょうか」
エバートンは描きあげた魔法陣に魔力を込める。
魔法陣が白く発光して、すぐに小さな鳥が出現する。
「小鳥?ですか?」
「ええ、簡単な召還魔法陣ですが、この小鳥は私の命令でどこへでも行きます。その小鳥に『観察眼』をつければ・・・」
「ああ、なるほど!!」
「王都最外の一般住居区を偵察します」
エバートンが命じると小鳥は空高く舞い上がる。
小鳥が城へ向うと、エバートンは俺達の目の前にスクリーンを出現させた。
今回は小鳥の視界がスクリーンに写っている。
「あい変わらず、見事な魔法ですな」
デトレフさんの言う通りだ。
俺がいた世界なら、カメラ付きドローンを飛ばしているのと同じだ。
やはりこの世界の魔法は凄い。
改めて魔法の凄さを再認識していると、小鳥は王城の外壁まで辿りつき、堀を超え跳ね橋の上を越えて、居住区へと入って行った。
スクリーンに居住区を見下ろした景色が映し出される。
上げられた跳ね橋の内側、城門は硬く閉ざされ、内側には帝国警備兵が2人、その両側横にストーンゴーレムが2体ずつ、計4体が立っていた。
そこから画面は居住区を周回し始める。
一般の住民が暮らしているはずの居住区だが、往来には人っ子一人いなかった。
居住区の広さは大きな都市と変わらない広さがあった。
10万人は暮らしているのではなかろうか?
往来にいるのは帝国警備兵が2名とストーンゴーレムが2体の小隊が巡回をしていた。
小隊は10小隊、居住区を巡回しているようだ。
「居住区でこの厳重さ・・・軍事区と王城内の警備はそれ以上だろうな・・・」
「ダミアン殿、なにか気付いたことはありますか?」
ダミアンの呟きに、エバートンが尋ねた。
ダミアンは周回している居住区の画面を食い入るように見つめた。
「・・・!!・・・軍事区に入る扉が・・・4つある扉のうち3つが潰されていますね。東西南北に4つあった扉のうち、東の扉以外、全て潰されてレンガで塗り込まれています」
「ふむ・・・居住区が占拠されるか、住民が反乱を起こした場合に、軍事区が4箇所から攻め込まれるのを防ぐためでしょう。つまり住民は無事です」
「おお!!皆殺しされていてもおかしくなかったのに。無事なのでしょうか?」
「国王陛下や王族を捕らえて処刑してしまえば、この国は完全に帝国の属国になる。そうなれば、住民は重要な財産です。今は反乱分子ですが、完全に帝国の支配下になってしまえば、住民は生活をするために従わざるを得ません」
「住民は財産ですか・・・」
ダミアンが複雑な表情をしていた。
「次は軍事区に移動します」
居住区が遠ざかり、画面が軍事区へと入ってゆく。
軍事区は居住区の半分ほどの広さだった。
東西南北の扉の左右に兵舎が並び、それが街道に沿って立っていた。
王城側には兵舎はなく堀が廻らされ、入り口は再び大きな跳ね橋だけだった。
「これだけ厳重な警備体制があって、何故王都は陥落したのでしょうか?」
エバートンは自問した。
「何か裏がありそうですね・・・」
そして自答した。
明日も頑張ります




