2都市奪還作戦 ③
なんとか間に合いました。
ベッツが姿を消して、ディリへ降下してから、10分ほど過ぎた。
火矢が真上に飛んで来るのが見えた。
魔術師の排除に成功した合図だ。
「これでゴーレムの増援はなくなりました、残った帝国兵を排除するだけです。今から翼竜を急降下させて、城門を破壊します。スハイツ殿率いる王国騎士団が突入して、帝国軍と交戦を始めたら冒険者パーティは翼竜より降下して、帝国兵の排除に加わって下さい。同時にツーロンへ向う陸橋に罠を仕掛けますので、1パーティは私の護衛をお願いします」
「では、我々が護衛しましょう」
シルバーファングのクラウスが挙手した。
「お願いします、それとフロストジャイアントの召還は必要ありません.。ここまで旨くいけば、押し切れます」
「分かりました!!」
「それでは作戦決行です!!皆振り落とされないように!!ヒデキ殿お願いします!!」
「皆!!捕まっていて下さいよ!!」
翼竜に急降下を命じ、スハイツが待機している方面の城門を攻撃させた。
警備に残っていた帝国兵が急降下する翼竜に気付いて、魔術師が攻撃魔法を放ってきたが、急降下する翼竜のスピードについて来られる訳もない。
仮に攻撃魔法が当たっても、防御結界が発動したことだろう。
翼竜は狙いたがわず、城門に振動波をぶつけて見事に粉砕し、急上昇した。
城門が壊れた直後、スハイツ率いる王国騎士団が突入を開始する。
魔術師のゴーレムを当てにしていたのだろう、帝国軍の守備は500人ほどで、完全に王国騎士団の優勢となった。
そこへ冒険者3パーティが降下して参戦。
パワーボム、ゴールド・エクリプス獣人2パーティの実力はやはり頭2つは抜けていた。
凄まじい勢いで帝国へは為す術もなく倒されてゆく。
エバートンはツーロンへの陸橋にツーロン側からやって来る帝国兵に対して発動する罠を仕掛けに向かった。
シルバーファングの面々が護衛で従う。
ベッツもいつの間にか合流していた。
帝国兵は残存兵が50人を切ったところで、指揮官が投降した。
敵の指揮官から有効な指示が出ることは一度も無く、投降の命令だけが、残りの帝国兵の命を救った。
ずっとダンジョンで魔族やヒュドラと戦っていたせいなのか、やけにあっけいと感じてしまった。
良くない傾向だ。
「さて、次はツーロンです。ヒデキ殿、ロックゴーレムと雷獣はどうなっていますか?」
「危機に陥ったら、帰還するように命じてありますが、帰還はしていません。どのような状況かはわかりませんが、無事だと思います」
「ならば翼竜で一気に攻めましょう。先ほどと同じように上空から一気に攻めます」
エバートンの指示に、冒険者3パーティと俺、エリー、親衛隊二人は翼竜の背に乗った。
「スハイツ殿はこちらで待機して、ツーロンから対比してくる帝国兵が陸橋の罠に掛かりましたら、叩いて下さい」
何か言いたそうなスハイツに先んじて、エバートンは指示を出す。
「承った・・・が・・・その数で大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。上空から翼竜で帝国兵を蹂躙して決着です。帝国軍は元々ムカイの不在を知って、侵略に踏切りました。こちらにはムカイ以上の魔術師がいりことを知らしめる必要があります。少人数で蹂躙する。これが一番効果的なのです」
「そ、そうですか・・・」
エバートンがスハイツを黙らせたところで、俺は翼竜を飛翔させた。
かなりの高さまで上昇させ、それからツーロンへ飛ぶ。
すぐに眼下にツーロンが見えて来た。
ロックゴーレムへ多数の帝国魔術師が攻撃をしていたが、有効な攻撃は皆無らしく、辛うじてロックゴーレムの足元にフリージングを集中させて、歩みを遅くさせるのが精一杯だった。
雷獣は・・・さすがに上空過ぎて、詳細は分からなかったが、時折帝国兵の間に放電が見えたので、雷獣も暴れまわっているのだろう。
「先ほどの戦法を繰り返しお願いします。ある程度帝国兵を減らしてしまいましょう」
「了解です!!」
翼竜は急降下して帝国兵の密集しているところへ、振動波を叩き込む。
攻撃した後、敵魔術師の攻撃が来る前に急上昇して、こちらに帝国兵が気を取られている間にロックゴーレムと雷獣が帝国兵を蹴散らす。
そちらに気が行くと、翼竜を急降下させて、振動波を叩き込む。
二度目からは、攻撃魔法が使えるものは、それぞれ攻撃魔法を帝国兵へ放っていた。
これを繰返すこと、30回以上・・・
どんどん帝国兵の数が減ってゆき、ついに遁走を始めた。
ディリへの陸橋の城門をくぐり、帝国兵は逃げてゆく。
その数は1000人もいない。
概算で500人強というところだろうか?
なにもかもエバートンの思惑通りだ。
敵の魔術師を最初に潰したのが正解だったようだ。
この世界、魔法の力で全てが決まるとは言わないが、俺やムカイのような魔術師がいれば、かなりの確率で戦に勝てるらしい。
上空からディリへの陸橋を逃げて行く帝国兵を見ていると、ディリの入り口付近に仕掛けられたエバートンの罠が見事に発動しているのが見えた。
罠はサンダーレインの小型バージョンのような感じだった。
ディリへ逃げ込もうとした帝国兵全員を落雷が襲ったのだ。
帝国兵は見事に感電して、動けなくなってしまっていた。
そこへスハイツが王国騎士団に捕縛を命じ、簡単に帝国兵は捕縛されてしまった。
中には落雷をレジストした魔術師もいたが、ほんの数名で、多勢に無勢、簡単に投降した。
こうしてツーロンとディリの奪還作戦は終了した。
王国軍には数名の死傷者しか出ない・・・終わってみれば、圧勝だ。
投降、または捕縛された帝国兵は合計で500名ほど、全員投獄されたが監獄は過密状態で管理が大変だ。
王都を奪還し、帝国の侵略が終結した後に捕虜として帝国に補償金が要求され、引き渡される事になるそうだ。
それまで捕虜の管理は、王国が負担する事になる。
もちろん補償金の中に含まれるが、なるべくこの戦争を終わらせるにこしたことはない。
では、どうすればこの戦争を早く終結させる事ができるのか?
・・・俺の頭脳では回答は出ない。
人任せで申し訳ないが、エバートンに任せる。
これが俺の正解である。
そのエバートンであるが、いかに俺の力(正確にはスマホの魔法陣のヴァリエーション)を隠して勝利するかを考えている。
王都奪還するのは確定なのである。
「さて、これで奪還する都市は王都のみになりました。交戦中の都市はいくつかありますが、重要拠点ではありませんので、王都が奪還されたと周知されれば、終結するでしょう。その王都奪還ですが、出来るだけ早急に遂行しなければなりません。ツーロン、ディリの2都市の防衛に各300人、合計600人をここに置きます。従って400人の王国騎士団と冒険者3パーティで王都奪還に向います。明日、日の出を待って出立します。王国騎士団はダミアン殿に率いてもらいます。スハイツ殿はここで防衛を願います。よろしいかですね!!」
エバートンの立て板に水のごとき弁達に王国軍の2人から、正反対の返答があった。
「承知しました。この命に代えましても、王都奪還を!!」
「な、何故私が防衛を?私は何か失態をしましたか?」
当然ダミアンは熱くなり、スハイツから疑問の声が上がった。
「スハイツ殿、貴殿の指揮能力の高さは素晴らしいです。だからこそ、ツーロン、ディリの防衛をおまかせしたいのです。既にスハイツ殿も理解されたと思いますが、ヒデキ殿がいれば、王都奪還は確定事項です。だからこそ、この2都市の防衛のほうが重要だと考察し、スハイツ殿に防衛をお願いするのです」
さすがに誘導っぽいが・・・
「なるほど!!理解しました!!ツーロン、ディリの防衛はおまかせ下さい!!」
ああ・・・スハイツが単純脳で良かった・・・
明日も頑張ります




