迷って
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「うわぁ、暗いね」
天気が悪いこともあって、辺りはすっかり暗くなっていた。
足元を気にしながら歩いているので、自然と歩みも遅くなる。土が、時折ヌルヌルと滑る。
「……ほんとだねぇ……」
愛はじぃっと空を仰ぐ。
その顔は、どこか不安げだ。
「……こ、これ以上暗くなったら、進めないもんね……!」
懐中電灯は電池が切れてしまっていてつかない。
家から持ち出すときに、電池を確認し忘れたのだ。痛いミスである。
そういえば、紗季達はもう頂上に着いたのだろうか。滴が思うに、滴達より紗季達が早く着く確率は、高いだろう。下手すると、既に頂上に着いており、滴達を待っているかもしれなかった。しかも、あちらには光がいる。紗季もそこそこ運動が出来るようだし、光の歩く速さに合わせて歩いているかもしれなかった。
待たせているなら悪いなぁ、とおもう。
まだ頂上までは遠いように思われる。
「ねぇ、ちょっと待って! この山ってこんなに高かったっけ!?」
プリちゃんが突然真っ青な顔をして、滴達を振り返る。
考えてみれば、もう夕方だ。
けれど、愛は山に登ったことがないのか、そんなプリちゃんにのほほんと返す。
普通、山は登るのにそんなに時間はかからないのだが。よっぽど大きい山でない限り。
「え? なんでぇ? 普通でしょ?」
「普通じゃないよ!」
「えぇ? でもぉ、テレビとかだとぉ、何日も登ってるじゃあん?」
はぁ。
愛を除いた3人は、ため息をつく。
愛は山を登ったことがないのだろうか。
「……と、取り合えず、確かに時間かかりすぎだよね……!」
波が話を戻す。
おかしいのだ。あまり、歩いても進んでいない気がする。
四人がすっかり黙り込んでしまうと、茂みがガサガサと動いた。
とっさに、滴達は茂みの方を向き、構える。
熊とかでなければいいが……。
ガサリ。
茂みから出てきたのは、真っ黒なウサギだった。
何だかこのパターン、キャンプ初日でもあったような……。
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