ハイボール
僕はファッションに疎いが、ユーゴさんの服装も特別オシャレであるようには見えなかった。髪型も坊主に近い短髪で特にセットもしていなそうだった。
それでもユーゴさんは、これでもかというほどニヤニヤしながら
「童貞専門の服屋があるんか。教えてくれやww」
としつこかった。
二人で歌舞伎町を歩いていると
「どこか遊ぶ店をお探しで?」
後ろから男に声をかけられた。僕よりは年上で、ユーゴさんよりは若く見えた。
「おう。腹ペコや」
「居酒屋とかですか」
「おう。美味いところ頼むわ」
キャッチの男について3分ほど歩くと、ビルの地下の居酒屋に着いた。客は僕たちを含めて4団体しかおらず、店内は薄暗かった
「ここ、なんか怪しくないですか?」
「ま、こんなもんやろ」
前日の予習で、新宿ではぼったくられることがあると学んでいた僕は警戒していた。ユーゴさんは何も気にすることなく、案内されたテーブルに座った。
テーブルにメニュー表が置いてある。ビールが500円と書いてあった。僕が食べ物のメニューを見ていると
「注文頼みまーす」
ユーゴさんが厨房の方へ手を振った。この時来た店員も僕よりは年上に見えたが、ユーゴさんよりは若そうだった。
「ハイボールと、こいつにコカコーラ。あとこの店は何が美味いん?」
「うちは焼き鳥が自慢でして、まずはこの盛り合わせとか、いかがですか?」
彼は僕が開いていたメニュー表のページをめくった。
「おう。それで。あと米はないんか?」
「米ですと、この鶏チャーハンですね」
「じゃ、それ頼むわ」
「キムは新宿、よく来るんか?」
「いえ。今日が初めてかもしれません」
「うっそ。シティボーイちゃうんかったんかい」
話しているうちにグラスが二つ届いた。僕は喉が渇いていたので、コーラをすぐに飲んだ。
「ドアホ、まずは乾杯するんやで」
「あっ」
「ほれ、乾杯」
ユーゴさんの乾杯が力強かったのでグラスが割れるのではないかと心配だった。
「大学で飲み会とかないの?」
「それが、あんまりなくて、、、」
僕は10秒ほど黙り込んだ。
「どうかしたん?」
ユーゴさんはハイボールをすでに1杯飲み終わっていた。
「実は僕、まだ大学生じゃなくて、浪人中なんです」
「ほーん」
「店員さーん!ハイボールおかわりお願いしまーす」
先ほどの店員がやってきた。
「濃い目で頼むわ」
「そんなには濃くできないですけど」
「ニーチャンの気持ちでええから、頼むわ」
店員はまた厨房に戻って行った。
「腹減ったな!」
ユーゴさんが無邪気な笑顔で話しかける。この笑顔に救われたのを覚えている。
焼き鳥と炒飯と、ハイボールが届いた。この時のハイボールはドギツい茶色をしていた。
「あいつ、エグいの持ってきよるな」




