出会い
教卓には、不真面目そうな男性が立った。
「はいじゃあね、これから担任となります、冴木です。よろしく〜」
ボサボサの髪に、剃ってないひげ。
見るからに寝起きで焦って来ただろうなって感じに、じんわり汗が滲んでいる。
(冴えないのに冴木か…)
「なんか、すごいね笑」
心を読み取ったかのようなタイミングで、若干の蔑視感を込めて紗知が言う。
「ま、なるようになるよ笑」
節はあまり気にしていないようだ。
「んじゃあ、とりあえず自己紹介タイムといきましょっか」
新学期あるあるの自己紹介が始まる。
「…です、よろしくお願いします」
「…だよー、よろしくね」
パチパチパチパチパチ…
「ねーせっちゃん、こういうのって何言えばいいの?」
「っぱインパクトが大事っしょ!」
「インパクトかぁ…」
「紗知はそのままでいいと思うよ笑」
「じゃあ次は、と…亀沢さん」
「あ、はい。亀沢紗知です。実家がパン屋さんで、パンが大好きです。特にあんぱんが好きです。よろしくお願いします。」
パチパチパチパチパチ…
「さっちんは落ち着いててすげえなー」
「麻衣は落ち着いてないの?笑」
「アタシはねぇ…あがり症なんだよね」
「えー!見えね!マジで?」
「せっちゃんはあがり症じゃなさそう笑」
「んじゃ次ー、鶴見さん」
心構えをしていなかった麻衣は、焦って立ち上がり机に足をぶつけた。
「いって!」
周りがクスクスと静かな笑いに包まれる。
「す、すいません!鶴見麻衣です!食べるのが好きです!動くのも!寝るのも好きです!おなしゃす!」
赤面している麻衣の後ろで、節はケラケラと笑っている。
「麻衣…いって!って笑」
「せっちゃんー、笑わないでよぉ」
お腹を抑えて笑う節は、わりわりと言って手をヒラヒラさせた。
「ほいじゃあ、麦原さん」
「あい!待ってましたァ!」
節は勢いよく、元気よく、机は静かに立ち上がる。
「アタシは麦原節!みんなと仲良くなりたいんで、よろしく!以上!」
なんとも簡潔にまとめた節を、麻衣と紗知は不思議そうに見つめた。
「意外〜、もうちょっとはっちゃけるかと思った」
「意外と節って真面目なんだね」
「意外ってなんだよ、長くしたらHR長くなるだろ」
気遣う節を、さらに2人はほぇーと見つめる
「じゃあこれからこの皆で1年過ごすからね、問題起こすなよー」
担任のノリに釣られたのか、クラス全体でうい〜といった返事が返される。
「なんかゆるいな、楽しくなればいいな」
期待を込めて、麻衣はそう思うのであった。




