朝ごはん
「姉ちゃん起きてー……姉ちゃーーん」
「起きないと遅刻するよ!麻衣!」
「んー…うるさいな…まだそんな時間じゃないだろ…」
朝日の照らされる部屋では、麗しきJKともあろうお方が
半ケツ腹丸出しでぐーすか寝ていた。
「はぁぁぁぁあ!!?なんで起こしてくんなかったの!!」
狂乱の寝坊娘は、栗色の髪を結びながら母親に問う。
「起こしたっつってんだろ!バカ娘!!」
フライパンで叩かれるのをなんとか回避し、玄関にダッシュしていく。
「麻衣!ごはんは!?」
「間に合わないからどっかで買う!!いってきま!!」
「ねーちゃん行ってらっしゃーい」
春。なんとも穏やかな春である。
先日入学式を終え、鶴見麻衣は女子高生となった。
「ぬおおおおお!!バス間に合えええええ!!」
なんともJKらしからぬ顔面で、彼女は走り続けている。
桜は満開、ポカポカな快晴、素晴らしい初登校びよりではないか。
『ドアが閉まりまー』
「ふんすっっ!!間に合ったーー!」
バスのドアを壊しそうな勢いで乗車し、なんと座れるではないか。この日の幸運を全て持っていったのかこの子は。
『駆け込み乗車は大変危険なのでおやめ下さーい、ね!!』
「ご、ごめんなさい……」
運転手さんに絞られ、きゅーっとなっていると
お腹の方も疲れたようで、爆音でぐううううという腹の虫が響く。
名も知らぬ先輩と同級生にクスクスと笑われ、赤面して麻衣は縮こまっていた。
「あんぱん、すき?食べる?」
そう言われ麻衣が顔を上げると、大人しそうなふんわりとした顔の美少女が、天からの恵を引っさげているではないか。
『こいつぁ…同い年か?年下か…?』
なんにせよパンが貰えるのである。そんな邪推は置いといて
「えーありがとう!くれるの?」
と手を差し伸べると、美少女は微笑みながら
「私は【高校1年生】の亀沢紗知。あなたは?」
若干強めの肩書き紹介にすこしビビりながら、麻衣も自己紹介をすると
「同い年なんだね、パン食べる?」
となんとも美味そうなあんぱんを渡してくれる。天使か。
「ほんっとにありがとう、あとでお返ししますので…」
「そんなんいいって、美味しいでしょそのパン」
まだ温かい、焼きたてだろうか。半分にしてみると、中から小麦の穏やかな匂いと大量の餡子の波が麻衣に襲いかかった。
麻衣は目を輝かせ、パンを口いっぱいに頬張りながら
「めっひゃふまいっふ!いくらへもふえまふ!」
と言うと、紗知は嬉しそうにふふっと微笑んだ。
「それね、ウチのパンなの。よかったら買いに来てね」
と言われ、麻衣の目はさらに輝く。
「パン屋さんなの!?!?マジうらやま!!」
「えー、そんなことないよぉ笑 …あ、もう学校着くね。
じゃあこれからよろしくなのです、麻衣ちゃん」
「こちらこそだよ!さっちん!」
呼ばれなれない言葉にキョトンとして、また紗知はほほえみ、先にバスを降りていった。
「さーて!アタシの高校生活、いっちょやってきますかね!」
麻衣はわりと大きかったあんぱんを頬張り尽くし、校門へと走っていった。




