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双子との取引

加藤 優美 (カトウ ユミ)

     +高校2年生。

     +好きな物:現実的な事象、グレープ

      嫌いな物:非現実的な物、パン

     +34番目のオプファー。

「私達と、取引をしませんか?」


「取引...........?」


「えぇ。」


双子は優美の前に座り込む。


状況を理解できていない優美に対して、ピアスの男が不機嫌そうに口を開く。


「ジュース、無いの?」








「どうぞ。」


双子の前に置かれた、炭酸ジュースとホットコーヒー。


(この人達、さっきまで私を殺そうとしていたのよね)


(何で私がお茶を出してもてなさなきゃいけないのよ)


(それにこの人達………)


”柳香帆は私達の33人目のオプファーでした。”


(あの口ぶり、香帆が死んだのは、この2人が原因なのよね…?)


(そんな相手と呑気に取引なんてしていいの…. ?)


大事な友人を殺されているというのに、不思議と怒りが湧いてこなかった。


「それではまず私達の自己紹介から始めましょうか。」


長髪の男は立ち上がりお辞儀をした後、また同じ場所に腰かけた。


「私は雪 瀬奈と申します。


 此方は私の弟の雪 弥士です。




 私達は執行人です。」


「執行人……?」


優美にとって全く親しみのない言葉であった。


「日本における執行人は全部で12人。その内の2人が私達です。


 私達はボスが定めた140人のオプファー、つまり生贄を神に捧げる必要があるのです。


 貴方の友人である柳香帆はボスが定めた33番目のオプファー、


 そして加藤優美さん、貴方は34番目のオプファーです。」



「ちょっと待って。」


淡々と説明を続ける瀬奈を遮る優美。


(違う。あまりにも違い過ぎる。)


”ねえ優美、あの噂知ってる?


 夢に銀色の髪の双子が出てきたら、しあわせになるって噂!”


香帆が楽しそうに話していた、非現実的すぎる内容の噂。


香帆の夢にこの双子が現れた次の日に優美の夢にもこの双子が現れた。


そして殺された香帆。殺されかけた優美。


(何がしあわせになる……よ、)


この双子が話す非現実的な話を実直に信じる事は優美には出来なかった。


「幾つか、質問をさせてちょうだい。」


「えぇ。お幾つでも。」


まだ湯気の立っているコーヒーを一口啜り、瀬奈は優美の言葉を待つ。


弥士は興味無さそうに瀬奈の隣で優美が今朝読んでいた小説を手に取った。


「貴方達は、自分達の行いが間違った形で噂されている事は知っているの?」


「噂……ですか。


 私達は噂の内容が間違っていると感じた事はありませんよ。」


「どういう意味かしら。」


「双子が夢に出てくると殺される。これは紛れもない事実です。


 ですが、私達が手を下す事がオプファー達にとっては最大の”しあわせ”であるのです。



 先程も申し上げましたが、日本には12人の執行人が存在します。


 どの執行人がいつ、どのオプファーを神に捧げるのか、


 それ自体は明確には決まっていません。

 


 私達以外は、惨く残虐な方法で神に貢ぐ執行人が殆どです。


 意識のある状態で四肢を切り落としたり、拘束した状態で火にかけたり。


 神に捧げるオプファーの肉を食べてしまう執行人もいるんですよ。」



想像するだけで吐き気が催される。


気分が悪くなった優美を心配しつつ、言葉を続ける瀬奈。


「私達はそのやり方をあまり良く思っていません。


 神に捧げる大切なオプファーを酷いやり方で殺めてしまう事は


 オプファーにとっても神にとっても適切でないと考えているのです。



 ですがボスは


 ”好きにさせている。今更言ってもあいつらは聞く耳を持たない”と


 この状況を変える気が無いのです。



 ですから私達は出来るだけ苦痛を与えず執行しているのです。


 他の執行人が手を下すよりも楽に死ぬ事が出来る、という点では


 噂となっている”しあわせ”と同義だと考えています。



 手を下す前に夢の中に私達が現れる事も、出来るだけ負の感情を持たないままでいてほしいという


 私の細やかなエゴなのです。



 私達が現れる事でしあわせになれるんだ、と陽の感情に触れることで


 直接手を下す私達の負担も軽く感じられるのです。」


(出来るだけ苦痛を与えずって...........)


優美は数分前の事を思い出す。


(思い切り私の首絞めてたくせに…. )


「次の質問よ。


 どうして、貴方達執行人とやらは140人の生贄を神に捧げる必要があるの?


 何をもって生贄とされるの?


 何故私は選ばれたの?


 どうして貴方達は私の元にやってきたの?





 ボスって...........何者なの。」


この双子の話を聞けば聞く程疑問が次々に湧いてくる。


「1個ずつ聞いてよー、欲張りさんだなぁ」


静かに小説を読み進めていた弥士が本から目を離すことなく呟く。


「...........悪かったわね。」


「いいえ、構いません。


 私達執行人が神の為に140人の生贄を捧げる理由ですが、現状お話しする事が出来ません。」


申し訳ありません、と眉を下げて俯く瀬奈。


「それは何故?」


「貴方との取引がまだ終了していない為です。


 情報だけ聞き出して逃走でもされれば、私達はすぐに貴方を殺す必要があります。


 此方は、私達と取引していただければ、お教えいたします。」


優美がこの双子の事を完全に信用しきっていないように、


この双子もまだ、優美に対して疑いの念を抱いていた。


「次に、何をもって生贄、オプファーと定義されるのか、ですね。


 オプファーの選定はボスによる占星術、星占いで行われます。」


「占い?」


「はい。占星術でオプファーにふさわしい本質を持つ方を選定するのです。


 貴方も、ボスに直接選ばれた名誉ある方なのですよ。




 ちなみに、私達執行人も、ボスが占星術により選出されました。」


ニコッと笑顔を向ける瀬奈。


「殺される運命を決められる事の、どこが名誉なのよ。」


「あんたはボスがどれだけ凄いか知らないからそんな間抜けな考えになるの!


 ボスは、ボク達のカリスマなんだ!」


いちいち優美に突っかかるような言葉を選ぶ弥士。


「ボスの凄さは、追々理解されると思いますよ。


 あとは、私達が貴方の元に来た理由ですね。












 それは、私が貴方に一目惚れしたからです。」





「………は?」


(一目惚れ?何言ってるの、こいつ)


今まで非現実的な話をさんざん聞かされたが、


一目惚れしたから来たという瀬奈が優美にとって一番非現実的だと感じた。


きょとんとした顔のまま動かない優美。


「あんたもおかしいと思うよなー、何で殺す相手に惚れるんだよ」


「何もおかしくないさ。この子は絶対に他の執行人に殺させない。


 さっきは首を絞めてしまってごめんね。」


「いえ……」


「現実的な事象を好む君に、私達が置かれている非現実的な状況を体験させたい。


 認めざるを得なくなった時、君はどんな表情を見せるのか。

 


 つい数分前、私が君の首から手を離した時、君が見せた焦燥の顔に魅せられてしまった。


 私は君の知らない”非現実”を全て味わわせてあげたい。


 だからこそ、この取引を持ち掛けたのです。」


口に出そうとするだけで恥ずかしくなりそうな言葉を絶え間なく並べる瀬奈。


現実的な物に拘る優美にとって最も忌むべき存在であろう瀬奈だったが、


優美には忌みよりも、自分と全く違う存在である瀬奈に少しの興味を持ってしまったのだ。


(取引...........)


「取引って、どんな取引かしら?」


優美が取引に対して前向きである事に瀬奈は大きな喜びを示した。


「何度もお伝えしている通り、私達執行人は140人のオプファーを神に捧げる必要があります。


 今この瞬間にも、他の執行人がオプファーを神に捧げています。


 貴方も、本当なら今頃は生贄となっているのですが。


 どうしても、私は貴方と限りある時間を出来るだけ共にしたいのです。


 ですから、他の執行人が貴方を狙わないよう私達が貴方の存在を押し隠します。


 その代わり、執行のお手伝いをお願いしたいのです。」


「手伝い…?私に、人殺しの手伝いをしろっていうの……!?


 嫌よ、なんで私がそんな事…そんな事するくらいなら死んだ方がマシよ!!


 そんな事するくらいなら香帆の所に行くわ!!!」


優美は涙を浮かべながら声を荒げる。


(一瞬でも興味を持った私がバカだったわ。)


(こんな人達、絶対信用しちゃダメ...........)


これ以上非現実的な事に付き合わされるのはごめんだ、と告げようとする優美。


「...........チッ」


それまで小説を読み続けていた弥士が本を勢いよく置き、舌打ちをして


どこからか取り出したナイフで優美の頬を切りつける。


「痛っ...........」


「あんたさ、今頃死んでる存在のくせに何様のつもりなの?


 ボクや兄さんの執行を侮辱するなんて許さないよ。


 そんなに死にたきゃ今すぐ殺してやるよ!!!」


弥士は手に持ったナイフを振り上げる。


「ミコト。」


弥士がナイフを振り下ろそうとした瞬間、瀬奈の低い声が響く。


弥士が持っていたナイフはいつの間には床へと落ち、


優美の目の前にいたはずの弥士は瀬奈にしがみついていた。


「ごめん…ボク、かっとなって...........ごめん兄さん...........」


瀬奈は弥士に目もくれず、優美に付けられた頬の傷に触れる。


「すまない。」


申し訳なさをこれでもかと感じる瀬奈の表情に、優美はまた気持ちを揺らがせていた。


(何で...........こんなに気持ちが揺れるの……)


「取引を、受けてはくれないだろうか?」


優美が頭で考えるより先に口が動いていた。


「...........はい。」


















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