銀色の髪の双子
Opfer(独)
(神への)いけにえ、供え物、犠牲、犠牲的行為
「ねえ優美、あの噂知ってる?
夢に銀色の髪の双子が出てきたら、しあわせになるって噂!」
香帆が500mlの紙パックのミルクティーを飲み干して、オリーブがかったカラーコンタクトを付けた目をキラキラさせている。
「なにそれ。」
腰かけていたブランコから立ち上がって、
香帆が手に持っていた紙パックを受け取りごみ箱に投げ入れる。
「私、そういうの興味ないわ。」
「えぇー、何でよぉ。
優美はしあわせになりたくないの?」
「形を持たない物は信じられないの。」
夢、希望、感情、恋。
この世には形のないものに振り回される人が多すぎる。
そんなもの….
「そんなもの、信じたって裏切られるだけよ」
「えっ、なんて?」
「....なんでもない。そろそろ帰りましょう」
香帆とお揃いのウサギのキーホルダーを沢山付けたカバンを持ち、
夕日を背に笑顔で手を振る香帆を見送った。
ーおめでとう!
ー初めまして、今宵のオプファーのお嬢さん。
ーねぇ兄さん、どうして今日はこの子を選んだの?
ーあぁ、本当はこのお嬢さんの友人を選ぶつもりだったんだ。
ただ彼女の元へ行くのは少し早いと感じてね。
だからこれはちょっとした、前座ってとこかな。
ーなるほど!兄さんは色々考えているんだね!さすがボクの兄さん!
ーほら、まだ仕事が残っているだろう?
ーそうだった!
ねぇ、君はどんな”しあわせ”を望むの?
ボクたちに教えてよ!
「優美!!!」
翌日。窓際の一番後ろの席に座りながら本を読む優美の元に、息を切らしながら香帆が走ってくる。
「おはよう。朝から元気なのね」
「見たの!!!」
まだ冴えきっていない頭に、香帆の大きな声が響く。
「何を見たの?またお化け?」
「銀色の髪の双子よ!!
昨日、あたしの夢に出てきたの!
その子達、色々話してたんだけどよく覚えてなくて。
でも絶対銀色の髪の双子だったの!」
香帆の声は教室中に広がり、クラスメイト達が一斉に集まってくる。
「うそ、香帆ちゃん見たの!?」
「あの噂、本当だったのね!」
「私の夢にも出てきてほしいなぁ~」
「ねぇ、その双子イケメンだった?」
「何叶えてもらうの~?」
途端に質問攻めに遭う香帆を後目に優美は読書を再開する。
(銀色の髪の双子なんて…全く現実的じゃないわ。
どうして皆そんなもの信じるのかしら。)
優美は柄にもなく、一日中香帆の夢に出てきたという銀色の髪の双子の事について考えていた。
ー兄さん!終わったよ!
ーでは、そろそろ行こうか。
ーうん!
バイバイ、オプファーちゃん!
ーさようなら、ありがとう。
オプファーのお嬢さん。
「………はっ!」
異常な寒気を感じ飛び起きる。
7時に設定したアラームはまだ鳴っておらず、時計の針は5時を指していた。
優美は先程まで自身が見ていた夢を思い出す。
(銀色の髪の….双子……)
香帆の夢にも出てきたという、例の双子。
「何よ…もう。」
もう一度眠りにつこうと試みるが、何かもやもやした気分が抜けず
太陽が顔を出すまで昨日読んでいた小説の続きを読むことにした。
第4章まで読み終えた時、電話のベルが鳴った。
それは学校からの臨時休校の知らせだった。
普通の高校生なら突然訪れた休日に大喜びするだろう。
ただ、優美にはこれがまた現実的に思えないのだ。
台風が来ている訳でも、大災害が起こった訳でもない。
それなのにどうして学校が休みになるのか。
どうしても落ち着くことが出来ず、携帯電話を手に取り香帆へと電話を掛ける。
「もしもし、香帆?」
「あっ……優美ちゃん……?」
聞こえてきた声は聞きなじみのある香帆のものではなかった。
「香帆のお母様ですか?」
「優美ちゃん……香帆が……香帆が……. 」
「香帆、どうかしたんですか?」
「香帆が、学校の屋上で……首を吊って………」
一瞬で頭が真っ白になった。
学校の屋上で、頭に麻袋を被ってホースで首を吊った香帆が見つかったという。
見つかった時にはもう既に香帆は事切れていた。
「どうしよう……優美ちゃん……」
電話の向こうから、香帆の母親の泣き声が聞こえてくる。
(どうして香帆が…)
(香帆が死ぬ訳ない……信じたくない……)
香帆の母親に何か言葉をかけようとするが、上手く声を出すことが出来なかった。
プツッ
繋がっていた電話が突然切れた。と同時に、目の前に2人の男性が現れた。
「えっ……」
その二人はよく見覚えのある姿をしていた。
「やっほー!」
「初めまして。加藤優美さん。」
(どうして私の名前を…それにこの人達………)
”銀色の髪の双子”
「ひっ…………」
それを認識したと同時に、腰を抜かして床へと座り込む優美。
「次は君の番だよ!」
双子のうち、前髪を分けていて、耳に多数のピアスを付けている男性が手を差し出す。
「何が…. 」
「何って、知らないの?ボク達の事」
「ミコト、急に話を進めても混乱してしまうよ。
ちゃんと説明してあげないと。」
もう1人の、綺麗に結われた長い髪の、首に蛇のタトゥーが入った男性が優美の前にしゃがみ込む。
「柳香帆。」
「はっ………」
香帆の名前をそっと耳元で呟く長髪の男。
「何で…香帆の名前……」
長髪の男は両手で優美の顔を包み込み、柔らかい表情で言葉を続ける。
「柳香帆は私たちの33人目のオプファーでした。
そして貴方は、34人目のオプファーとして選ばれたのです。」
「オプ、ファー……?」
その男が放った言葉を処理しようとした瞬間、
優美の頬を包み込んでいた大きな手が首に回され、強い力で絞められる。
「くっ……イヤっ…、嫌、!」
優美は必死に抵抗するが、体に酸素が行き渡らず力が入らない。
助けを求めようと後ろで傍観していたピアスの男に目線を送ると
ゆっくりと近づいてきて優美の前髪を掴んで長髪の男に話しかける。
「兄さん、なんで今回のオプファーはハングにしたの?
超時間かかるじゃん、ボクもう飽きた。」
「気に入ったんだよ、この子。
だから直接殺してあげたいって思ったんだ。」
「何それ。知らないよそんなの。さっさと殺してボクと遊んでよ!」
ピアスの男は優美の前髪を離し、長髪の男に抱きつく。
その反動で男の手が優美の首を離した瞬間、距離を取るように後退りした。
「はぁっ……はぁ、何、何なのよ貴方達!!」
ゆっくりと息をし、呼吸を整える。
銀色の髪の双子は突然優美の前に現れて、明らかに殺意を向けてきた。
この出来事は、あまりにも非現実的である。
優美にとって信じたくない、認めたくない事象が起きている。
(震えが、止まらない。)
(逃げないと、でも、どうやって逃げる……?)
目を泳がせて思考を巡らせる優美を静かに見下ろす2人の男。
沈黙を破ったのは、長髪の男だった。
「益々気に入った。」
そう呟いた男の隣で目を見開いて驚いているピアスの男。
「はぁ?!兄さん、冗談は辞めてよ。
早く殺してよこの女!!」
「...........ミコト。」
「っ……!」
全身に刺さるような、冷たく低い声。
先程までどこか温かみを帯びていた目は鋭い視線を向けていた。
「この子は、一番最後に取っておこう。
一番最後に、一番素敵な方法で、私が最高のオプファーにする。」
ピアスの男にそう伝えた刹那、長髪の男の鋭い表情は柔らかく温かいものに変わり
優美にこう問いかける。
「私達と、取引をしませんか?」
初めまして。ロロと申します。
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宜しくお願い致します。




