48話:愛する事
なんとなく、なんとなくそうなんだとは思ってた。妖狐って種族はあまりに内包魔力が高いせいで成長が遅い種族。更にはその希少性から隠れながら住むことを余儀なくされたと聞いている。そんな私、妖狐を数日間で九尾まで導いてそれでも彼には届かないと思わされた。
「強いとは思ってた。普通じゃないとは思ってた。でも異世界か・・・」
私は行きたいとは思わない。何故なら、妖狐が転移したら勇者じゃなくて実験材料にされるだろうから。
あれから蒼矢は真綾を安全な場所にって事でどっか行っちゃったし、日和ちゃんも帰った。一応襲撃が無い事も無いと思って防御結界は張ってる。これだって結界術が一番苦手なグロニスさんに比べればまだまだ粗いらしい。そんな私は自室にいる。
あの5人は正直に言って異質だ。多分、大国って呼ばれる国全部相手にして無傷だと思う。
「もっと知りたいな、蒼矢の事。どんな環境にいたらあんな風になってしまうんだろう」
私の半分も生きてない。そんな男の子が社会を、人間を知ってるかのような口ぶりで喋るのに最初は驚いた。今なら納得できる。ハダルさんなんかは頭は切れるしルックスは良いし強いし、社長をやったら成功するような人。そんな人が彼に嬉々として従う。彼のカリスマ性って凄いんだ。
だからこそ、気になる。どうして彼は安定していないのだろう。なんだか不安になるのだ。強いんだよ。でも、その強さを持つには残ってはいけない弱さがあるんだ。悔しいけど私にはどうする事も出来ない。
またいつか聞いてみよう。どんな旅をしたのか。どんな戦いをしたのか。誰と出会い、誰と分かれて旅を終えたのか。
そしてその旅は世界を超えている。この世界での旅の仲間に私がいられたら嬉しく思う。だから私は誓う。もっと強く、もっと頼られる存在になろうと。
そう思って私は魔力量を増やすための修行を始める。
「はじめまして、リッタと申します。マスターよりお話は伺っていますのでまずは座ってください。相楽 真綾さん」
「あ、これからよろしくお願いします。相楽です」
促されるままに私は座る。
「さて、これからここにいるまでの間、私が身の回りの世話をさせていただきますが、その前に一つ聞きたいことがあります」
「はい」
「あなたは、ここを出た後どうなさるおつもりですか?帰る場所がないのではないですか?」
「そうですね。これ以上桐生君に甘える事は出来ないのでどうにか自力で生きていきたいですが、このなまま能力者として生きていくのは無理ですし」
「ですので、あなたには料理を教えます」
「・・・料理?」
「はい。質の高い料理の腕前ともなれば高校生と言えど引く手あまたです。アルバイトをしながら生きていくにしてもあって困る技術ではありませんので提案させていただきましたが」
「本当に・・・教えていただけるんですか?」
「正しい言い方をするなら、私の手元、手際を見て学びつつ練習してもらうしかありませんが」
「よろしくお願いします!」
「はい、良いでしょう。きちんと付いてきてくださいね」
なんだか優しそうな感じのリッタではあるが心の中では・・・
(こんな子もライバル?マスターは節操無しに女の子を助けすぎです。ここで恩を売る感じで料理を教えて、仕事に明け暮れてくれれば少しでもマスターからこの女を遠ざけられます。マスターが一夫多妻を認める世界の住人で無い以上、こうでもして蹴落とすしかありません。小娘、我が策謀で打ち砕いてあげますわ)
と、どす黒い考えの元に教育をしようと思ったのである。
最後に聞いておきたい事を聞いておく。
「貴女はマスターに好意を寄せていますね?どこを好きになったのです?」
「えぇ!?そんなに分かりやすかったですか?」
「はい」
「うぅ・・・恥ずかしい・・・何事にも全力なんです。私を助けてくれた時も、戦う時も、ふざける時も。私には出来ないんです。そこに憧れていたのがいつの間にか恋になってたんです」
「そうなんですか」
(あ、あれ?なんか純粋に好きっぽい?しかも私と同じように一途?潰すのに凄く罪悪感が!いや、でもここで排除するのは必要な事です。そう、まさしく必要な犠牲でしたという感じです。これはこの国が悪い!一夫多妻は云々とか言って認めない国が悪いのよ!そうだわ!この子を政治家にしましょう!それで制度を変えさせれば・・・)
冷静そうな顔の裏で十面相をしていたリッタだった。
「ただいま」
「日和、おかえりなさい。ちょっと遅かったわね」
「うん。ちょっと勉強教えてもらってて」
「そう。まあ良いわ。早くお風呂入ってらっしゃい。お父さん今日は早く帰ってくるらしいから鉢合わせるのは嫌でしょ?」
「そうだね。見られたくないし、そうするよ」
そのまま部屋に着替えを取りに行ってふと思う。
(先輩ってやっぱり強いんだ・・・こんな当たり前の日々から離れちゃったのに世界を救って帰ってくるんだもん。先輩のお姉さんがどんな人かは知らないけど、先輩にとっては疲れる人だって事は分かった。異世界の女性達も会ってみたいな。先輩が必要だから優しくしたのかそれとも好きだからなのか。私だって優しく出来るはずよ。負けはしないわ)
今の私にはそんな強さはこれっぽちも無い。でもまだ中学生これからどうとだってなる。だから今は
「同じ高校に入るんだ。そうしたら・・・ってもう、恥ずかしくなってきた」
夢が膨らむ。でもその夢は遠い。彼には詩歌さんがいる。彼女は今回の件でも戦っていた。あんな場所に立ちたいなんて思わない。先輩だってそういう事とは無縁な私を戦力にはしない。あれだけ優しいんだもん。きっと守ってくれる。でもそれは与えられるだけ。それは嫌だ。何かは頼ってほしい。そうなると器用さとかじゃないんだと思う。その為には女として成長していかなきゃいけないんだ。
先輩は恐らく、誰の事も女とは見ていない。友達、仲の良い人、ただの知り合い。友達以上はいても恋人未満なんだ。
先輩の事を聞けて良かった。私はリード出来たと思う。相楽先輩と詩歌さんも同じ秘密を知る者ではあるけど私は唯一の年下。そこを活かす!
そうと決まれば、行動を起こすしかない。
「剣道習いに行こうかな。何か変われるかもしれないし、先輩に近づけるかもしれない」
先輩の隣に立つのが自分では難しい事をあの時知ったはず。でも、それでは甘かった。今回やっとスタートラインに立てたんだ。だかr走り続けるって決めた。
先輩が私の事を見てくれるその日まで




