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FC武田  作者: 松度 幸枝
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きっかけ

自分が新興宗教の教祖になったら、世界をどんな風に説明するか。そんなことをテーマにエッセイを書こうとしてたんですが…。

それが、そのうち『これをマンガにしたらどうだろう』という思いに変化し、最終的に、こんな会話劇になっちゃいました。

居酒屋の一角、一同が集まっているところに、しげが手を上げて寄っていく

キンが気付いて、声をかける

キン 「おせーぞー。」

続いて

武田 「オー来た、来た。」

アツシ「あ、お疲れ様でーす。」


しげ、軽く頭を下げながら

しげ 「いやー、すまん、すまん。」


しげ、謝りながら、ポケットをまさぐる

それから、2万円を取り出し、武田に差し出す

しげ 「武田さん、この前はありがと。これ、返しとくわ。」


武田、ちょっと驚いた感じで

武田 「あれ?しげ、大丈夫なん?」


しげ、得意げに

しげ 「いやー、今日は当たりが止まらなくってさー。」


キン、多少呆れて

キン 「遅れたのも、そのせいかよ。」


しげ、悪びれることもなく

しげ 「いや、ちょっと早く来すぎてさ。」

   「んで、軽くって思って入ったんだよね。」

   「もう行かなきゃってときに当たってさー…。」


アツシ、うんうんと頷きながら

アツシ「そうなんですよね、時間が無いときに限って当って。」

   「しかも、それが続くんですよね。」


キン、にやっと笑いながら

キン 「そんなに勝ったなら、今日は、お前の奢りね。」


しげ、手を振りながら

しげ 「ムリムリ、残りは全部、返済に充てないと。」


キン、武田、アツシ、眉間に皺をよせて

キン 「あんた、まだ借金あんの?」


しげ、ピースサインを出しながら、得意げに

しげ 「いや、もう金融機関からの借金はないよ!」


キン、武田、アツシ、無表情になる


キン、諭すように

キン 「もう、ギャンブルは止めたがいいぞ。」


しげ、困ったような顔をして

しげ 「いやー…金が余るほどあるなら、ギャンブルなんてしないんだけどねー。」


キン、武田、アツシ、怪訝げに

代表して、武田が聞く

武田 「金があったらしない?」


しげ、当然といった感じで

しげ 「月にさ、いくら使うか、計算するじゃん。」

武田 「はあ。」

しげ 「そしたら、どうしても2、3万たりないのね。」

   「だから、足りない分をどうしようって考えたら」

   「もう、スロットで勝つしかないじゃん。」


キン、ツッコミを入れながら

キン 「なぜ、そうなる。」

   「結局、負けて、よけい苦しくなるんだろうが。」


しげ、『わかってるね』といった感じで

しげ 「なぜか、そうなるんだよねー。」


キン、呆れ顔で

キン 「誰でもわかるわい。」

   「んで、結局、今月はいくら負けてるんだよ?」


しげ、普通に

しげ 「8万。」


キン、武田、アツシ、大声で

3人 「止めろ!」



キン、手を頭の上で組んで、椅子にもたれながら

キン 「あー…金儲けしたいなー。」


一同、頷く


キン、ふっと気づいた感じで、武田の方を見る

キン 「そういや、あんたの実家、寺だったよね?」


武田、何の気なしに

武田 「うん? まあ、そうだね。」


キン、前のめりになって

キン 「そうしたら、あんたの家を改造して…。」

   「新興宗教を作るってのは、どうだろう。」


武田、汗をかきながら

武田 「いやいや、それは無理だろ。」


一同、盛り上がる

アツシ、立ち上がって

アツシ「新興宗教を作ったら、私たちは教団幹部になれますよね。」


キン、頷きながら

キン 「んで、みんなにホーリーネームを作って、それで呼び合うの。」


しげ、腕を組んで

しげ 「大学かどっかに、ヨガか哲学の勉強会のサークルを作って」

   「そこに入ったやつを、いつの間にか信者にすればいいし。」

   「結構、簡単に集まるかもよ。」


アツシ、考え込む

アツシ「ヨガですか…。」

「やはり武田さんのとこ、仏教ですし…。」

「我々のやつも、仏教系にします?」


キン、軽く手を振り

キン 「いやいや、それに囚われることはないさね。」

   「いろんなやつから適当に、いいとこ取りすりゃいいのよ。」

   「んで、『制服の科学』とか『成長ホルモンの家』とか、適当な名前つけときゃいいんだよ。」


武田、いい加減にしろというような顔で

武田 「成長ホルモン~?制服の科学~?」


アツシ、何かに気付いたように顔を上げて

アツシ「その場合、ちょっと困ること、ありませんか。」


一同、アツシに注目する


キン 「ん?」


アツシ、一同を見回しながら

アツシ「キリスト教だったらアーメンとか、仏教だったらナンマイダーとか、それぞれ決め言葉ってあるじゃないですか。」

   「ごちゃまぜだと、それが使えませんよ。」


武田以外は、腕を組んで

武田以外の一同 

「うーん…」


しげ、右手の拳を左手の掌に、ポンと当てて

しげ 「あ、いいのがある。」

   「こんなんは、どうだろう。」

   「リーテ ラトバリタ ウルス アリアロス バル ネトリール」


一同、目を泳がして

武田 「リーテア…?」


しげ、人差し指を立てて、陶々と

しげ 「我を助けよ。光よ甦れという意味なの。」


キン、ツッコミを入れたいのを我慢しながら

キン 「それは…。滅びの言葉は?」


しげ、被せ気味に

しげ 「バルス!」


一同引く


キン、おいおいと言う感じで、手を振って

キン 「それは…、光る青い石がないと発動しないだろ。」


アツシ、サッと鋭い視線を、しげに向けて

アツシ「あ、ガラスか何かで青いやつを作って」

   「信者に買わせるってのは、どうでしょう。」


しげ、アツシを指差して

しげ 「あ、いいね。」

「んで、魂のステージが上がったら、これが光ります、とか言っとけばいいんじゃね?」


武田、額の汗をぬぐって

武田 「そ…それは、詐欺じゃないか…。」


しげ、ガッツポーズしながら

しげ 「大丈夫だって。1万人くらいに配れば、一人か二人は『光った』って言い出すキチ○イが出てくるから。」

「あ、こうなったら、教団名も『フライング キャッスル 武田教』とかにしようか。」

キン、眉間に皺を寄せ

キン 「あれの英訳は、確か…『キャッスル イン ザ スカイ』だったような…。」


しげ、こともなげに笑い

しげ 「いいんだよ、それは。」

   「ビームサーベルとライトセーバーの違いみたいなもんだから。」


キン、小さく突っ込む

キン 「いや、それは違うだろ…。」


アツシ、ポツリと呟く

アツシ「…略して、FC武田。」


キン、小首をかしげて

キン 「いや、PLじゃないんだから…。」


武田、無表情で、空を見つめながら

武田 「何か、J2かJ3に居そうな名前だな。」


しげ、武田の方に身体を向けて

しげ 「あ、それなら」

   「いっそのこと、信者のことを、サポーターって呼ぶのはどうだろう。」


一同、顔を見合わせる。それから下を向いて

キン 「助けを求めて来た人間から、サポートされてどうする。」


しげ、それは気付かなかったという顔で

しげ 「あっ、そっか」


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