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34.サリーナルド・クルエイダー①

あたしは昨晩割り振った部屋の一つの、ふかふかのベッドで横たわっていた。窓から日が差し込み始め、1日の始まりを告げていた。割とよく寝たかと思っていたが、まだ早朝も早朝といったところだった。

しかし、そんな時間にもかかわらず、外に人の気配がしていた。

あたしはベッドを降り、窓の方に歩いた。そして外を見ると自然と息をのんだ。

「ひ、広い……、これが練習スペースなの?」

それは、もちろん先日見た闘技場ほどとは言わないが、実戦練習も十分出来る広さがあった。

「あ、アレって……」

練習スペースの中央では、少女が流れるように舞っていた。その動きは昨日見た魔法少女達と比べてもしなやかで、力強く、それでいて繊細だった。素人であるあたしから見ても、そのレベルの高さは歴然だった。

「本当に凄かったんだ、クルエイダー家って」

彼女はサリーナルド・クルエイダー。昨晩会ったばかりだが、彼女のお姉さんはあたし達も知っていた。

リューゼフォン・クルエイダー。

マリーネとあたしがアルビィナで偶然再会したとき、大通りを練り歩く超上級魔法少女ジェニー・エフォールの取り巻きの1人だった。

彼女があたしとマリーネの関係性を暴き、マリーネを魔法少女廃業寸前までに追い込んだ張本人だ。

それも、ただの嫉妬からである。もしかしたらギルドからなにか指示があったかもしれないが、あたしもトルベもリュゼの暴走だと考えていた。

まあ、どちらにしても、リュゼがシャイニーズに所属していることが、マリーネを追い詰めたのは事実だが。

そんなことがあって、リュゼの妹であるサリーが昨晩、謝罪のためにあたし達を訪れ、先んじて事務局に来ていたのだ。

あたしは慌てて着替えを済まし、下に降りた。体から疲労はすっかり抜け、やる気がみなぎっている。あたしのからだが、徐々にこの現状を受け入れ始めた証拠だ。大分吹っ切れてきた。

「おーい、サリー!朝早くから熱心ね!」

あたしは中庭に出ると、中央で汗を拭うサリーに声をかけた。

「……⁉︎ ルナ?思っていたより早起きなのね。か、身体をほぐしていただけよ、たまたま早く目が覚めたから」

そういうと、照れ隠しなのかサリーはそそくさと、事務局内に姿を消した。

あらら、少し話がしたかったんだが……。

しかし、性格は思った通り分かりやすそうだ。あとはどうコントロールするかが、あたしの腕の見せ所というわけだ。

あたしは一度深く深呼吸すると、サリーの姿を追って事務局に戻った。


「あ、おはようございます、ルナ。もう起きていたんですね」

「うん、でもサリーももう起きてたよ。見なかった?」

「そうなんですか?わたくしは見ていませんが、どこにいたのですか?」

「中庭の練習スペースで踊ってたよ。あの子、やっぱり相当なもんよ。本人は身体をほぐしてただけって言ってたけどさ」

「ほー、それは見てみたかったですね、残念です。それでルナ、とりあえず仕事に入る前に朝食にしますか?」

そうか、食事か。そういえば何も考えてなかった。

「そうね、繁華街に出てみる?」

「あ、食材なら心配ありませんよ。厨房にある程度の備蓄がありましたから。わたくしが調理しますので、ルナはマリーネとサリーを呼んできて頂けますか?」

「さすがトルベ。あんた何でもできるのね」

そう言ってあたしは二人を探しに行った。


どうやらマリーネはまだ寝ているようだ。ノックをしたが反応がなかった。続けてとなりの部屋をノックする。

「どうぞ」

返事があり中に入ると、サリーはすでに汗を流しドレッサーで髪をとかしていた。

「朝ごはんなんだけどさ、トルベが作ってくれるっていうんだけど食べるでしょ?ついでにミーティングもしたいし」

「そう、なら頂くわ」

サリーはあたしに目を向けることもせず、そう答えると再び髪をとかし始めた。

「ちょっといいかな、サリー?」

「どうぞ」

「これからあたし達は仲間として、このギルドを運営していくのよね?」

「そうね」

「そしたらもう少し、なんていうかさ、そういう言い方じゃなくて……」

サリーはくるりとこちらを向いた。下から見上げるその目が鋭くあたしを捕らえる。

「わたしは仕事であなた達に姉が犯した愚行の借りを返す。ただそれだけよ。だからあなたは局長でわたしは魔法少女、その契約上の関係というだけで十分でなくって?」

「な、なるほどね。あなたがそういうならそれでいいんだけど」

あたしは心の中で、今はまだね、と付け加えてサリーの部屋を出た。すると隣の部屋からちょうどマリーネが出てくるのが見えた。

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