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25.無血戦争⑤

「何してるって随分な言い方するじゃない、マリーネ。私がどういう立場にいるか、あの人から聞いてないわけじゃないんでしょう?」

くー、耳に付くなあ。この人ほんとにマリーネのママなのかな?

「これは、これは、伝説の魔法少女レイア・グレヴィール殿ではありませんか?お会いできて光栄です」

そう言って前に出たのは、ハーヴィン局長だった。その顔には不敵な笑みが浮かんでいる。

「あら、ハーヴィンじゃない、久しぶり。チョットやめてくれない?その言い方。私は今はレイア・ホワイトアイズだし…、昔のことよ」

うーん、いやな空気だなあ。マリーネは下向いたまま黙っちゃうし。

「そうでしたね、今はホワイトアイズ。シャイニーズのギルド長の後妻になられたのでしたな」

「や、やめなよ、局長。シャイニーズを敵に回したくはないんでしょう?マリーネもかわいそうだよ」

「む、ああ。すまんな。たしかにちょっと出過ぎたようだ」

気持ちは分かる、分かるがマリーネの態度を見ればここはそっとやり過ごす方が良さそうだ。

そうこうしている内に、闘技場の反対側が騒がしくなり始めた。

「あ、チョットどいて頂戴。あんたたちの相手なんかしていられないのよ」

そっちから話しかけてきたくせに、レイアはあたしたちを掻き分け来賓席の最前列まで飛ぶように走り去った。

まあいい、あとは関わらなければいいだけだ。あたしはトルベに促しマリーネを連れてその場を離れた。

「えーと、あたしたちの指定席はっと…」

あたしは何事もなかったかのように、自分たちの座席を探し始めた。

「ああ、お前たちの席ならこっちだよ。俺の隣だからな」

ハーヴィンが少しバツの悪そうな顔であたしたちを席まで案内した。

「そんなに気にしないで下さい、局長。わたしは大丈夫ですから」

そんなハーヴィンの態度を気に留めてか、ようやくマリーネが口を開いた。

「す、すまんな、マリーネ。つい頭に血が上っちまって、挑発するような真似しちまった」

「いいんです、あんな人。ママだと思ってないですし」

「さ、もう忘れて席に向かいましょう。ルナもマリーネもそんなことより聞きたいことがあったはずですよ」

お、トルベ、ナイスフォロー。

「ん?なんだ、聞きたいことってのは?」

あたしたちはようやく席にたどり着き、マリーネも大分落ち着きを取り戻した所でハーヴィン局長に話を促した。

「ああ、そのことか。あれはジェニーの反則負けってやつだな」

「え?ジェニーが?なんか不正があったの?」

「いや、そういうわけじゃねえ。ほとんどジェニーが勝っていたんだがな、勝負が付く直前にジェニーの魔力が暴走しちまったのさ」

「ま、魔力の暴走ですか?け、怪我人が出たんじゃないですか?」

「ああ、相手の魔法少女が二人危なかった。結果、魔法少女を傷つけてはいけないというルールを故意にではないが、破ってしまったジェニーの反則負けになったってわけだ」

「そうだったの…、やっぱり一人で戦うのは無理があったんだ」

「そうですね、マリーネの言うとおり負担が大きかったのでしょう。ですからルナ、私たちも早く魔法少女を探さなければなりませんね」

本当だ。マリーネ一人で戦わせるわけにはいかないし、あたしは魔力がないんだから。

「お、始まるみたいだぞ!とりあえず今日はそれよりもルナが無血戦争ってもんがどういうものかを見に来たんだろう?見逃すなよ」

そうだった。あたしは慌ててバッグから双眼鏡を取り出した。

「あ、いいですね。流石は科学者だけはあります。かなりの高技術品じゃないですか」

へへ、実はこれはあたしが家を出る日、おじいちゃんがくれたとっておきなんだ。始原の科学者アルバート・シュタインが遺した遺失の科学なんだよね。だから今はこの精度の物は絶対に手に入らないんだ。

「へへー、いいでしょ?ちょっと覗いてみる?」

どれどれ、とトルベは双眼鏡を覗き込んだ。

「うわ!なんですか?これ?これほど鮮明に見える双眼鏡は初めてです。あ、もしかして遺失の科学、ですか?」


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