21.無血戦争①
「じゃ、じゃああたし達の事務所も用意されてるってこと?」
あたしはアイリーンの言葉に驚き、思わず叫んでしまった。
トルベが書類上だけと呟いた事に対して、アイリーンはこう言ったのだ。
「あら、そんなことはないわ。学会が協力するのよ、その証を見せなくちゃならないでしょ?」
そう言ってギルド開設の為の申請書類とは別の書類を棚から取り出した。
「これはこれからあなた達が使用するギルドの事務所の使用許可書よ。それとしばらくの運営資金として、10万オーロを融資するわ。返済期間は10年、無利子無担保よ」
どうやら事務所には使用料が発生するようだし、お金も借金になるわけだが、それでも破格の待遇だ。なにせ基本的には手ぶらでギルドを始めることが出来るのだから。
「す、すごいですね」
さすがのトルベもそれしか言えなかった。まあ魔法界にとっては10万オーロなどたいした金額ではないかもしれない。それでも16の小娘にポンと出すには高いはずで、上層部を説得するのは苦労したに違いない。
とにかくこれでマリーネに魔法少女を続けさせることが出来そうだ。
「よかったね、マリーネ。ひとまず魔法少女を続けることは出来そうだよ」
「うん、ありがとう、ルナ。大変なのはこれからだけど頑張ろうね」
マリーネはようやく笑顔になった。まあこれまでは不安しかなかっただろうから仕方が無いが。
「それともう一つ…」
あたしはアイリーンの言葉に振り返った。
「まだあるの?サービスしすぎじゃない?」
「そうね、でも科学者でしかも家からほとんど出ないで実験ばかりだったのでしょう?シュタイン家は科学界ではエリートですもんね」
マリーネはアイリーンのその言葉にハッとして、あたしの脇を肘で小突いた。
その表情はほら来たと言わんばかりで、たしかに来る間際に一通り予習しておいてよかった。
「まあ、ね」
しかしあたしはそれとは別に、彼女の言葉に少し違和感を感じた。だがそれが何なのかまでは分からなかった。
「でも大丈夫、そう思ってここに来るまでの間にトルベと勉強したから」
だからとりあえずそう答えておいた。
「あら、流石ね。でも実際にその目で見ておいた方がもっと理解が深まると思うんだけど…」
アイリーンは意味ありげにそう言った。
「あ、あ、も、もしかして、無血戦争?見られるの?」
あたしは思わず身を乗り出した。もちろんこれからは数限りなく見ていく事になるんだろうが、今見られるのなら絶対に見ておきたい。
「あなたはすでにギルドのオーナーよ。申し込めば来賓席に入ることができるわ」




