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17.ギルド新設への道のり〜魔法解析学会編〜①

「ふーん、関係あるんだ?なに、召喚獣に憑依されちゃうとか?」

確か無血戦争ホワイトウォーでは召喚獣を呼び出すのが彼女の役割だと聞いた。

「まあ、簡単にいえばそんな感じかしら。精神的な繋がりは強いと思うの」

だから召喚獣の精神力に何かしらの影響は受けているはずだとマリーネは言った。

とにかく周りが静かになったこの機に、あたしたちは運ばれて来た料理を平らげ早々に与えられた自室に引き返した。




「はー、疲れた。あんなに可愛い女の子達がたくさんいるとなんだかそれだけで疲れるわ」

あたしは体を預けるようにソファに沈み込んで、大きくため息をついた。

「なにいってるの、ルナ。あなただってその中の一人だと思われてたじゃないの?」

あたしには信じられなかったが、確かにそうだった。

「でも、魔法が使えないという事実は変わらないし、あたしは科学者だもん」

「そうじゃないの。魔法がどうこうじゃなくて、見た目だけの話だから、もっと自信を持って欲しいんだ。確かに魔法界は科学界を見下してる悪い風潮がある。でも科学界も自分たちを卑下する傾向にあるのよ、それは良くないわ」

それが魔法界のせいなのに、とはあたしは言わなかった。確かに科学界は魔法界を気にしすぎるきらいがあるのは事実だからだ。

「と、とにかくもう寝よう。明日は早いしこれからが大変なんだから」

「そうだね、でも事務局のオーナーになるんだから、ホントに自信を持ってね」

マリーネは笑顔で言った。

「分かった、努力する。それは約束するよ。マリーネに魔法少女をやめさせるわけにはいかないから」

そこまで言うとあたしたちはようやく床についた。しかし本当にあたしなんかが魔法少女事務局を作れるんだろうか?

でもやるしかないのだ。

そう、マリーネのためにも、そしてあたし自身のためにもだ。だから彼女の言うとおり自信をつけなきゃいけないのかもしれない。




翌朝、起きるととなりにマリーネの姿は既に無かった。

「うーん、よく寝た。こんなときでも意外とよく寝られるものね。さて、マリーネはどこかな?」

「起きましたか、ルナ?」

ドア越しに聞こえてきたのはトルベの声だ。本当に彼はよく働く。ここに住み込みなんだろうか?

「あ、起きてるよ。今着替えて出るから」

「では準備が出来たら局長室までお願いします」

「分かった」

いよいよか。あたしは意を決して準備を始めた。そして準備が終えると部屋を後にし、局長室へ向かった。




「来たか。紹介状は持ったか?」

「あ、はい。あの、マリーネは?」

「ああ、こうなったからには他の魔法少女に隠しても無駄だから、別れの挨拶に回ってるよ。といってもまだお前さんの事は伏せているがな」

でないとマリーネと仲のいい魔法少女たちに何を言われるか分からんからな、と局長は笑った。

すると、ちょうどマリーネが局長室に入ってきた。

「挨拶は終わったのか?」

「はい。ではハーヴィン局長、これまでお世話になりました。ここでデビュー出来なかったのは残念ですが、今後はルナと頑張りますので」

「ああ、本当に残念だ。お前はうちの看板になれる器だった。だから大事にしてた。それでデビューが遅れたのが逆に仇になるとはな。やっぱりデビュー戦はうちで飾って欲しかったよ」

局長は恨めしそうにあたしを見たが、すぐにいつものように豪快に笑い飛ばした。

「まあ仕方が無い。もう行け、グズグズしていると、他の魔法少女が騒ぎ出すかもしれんからな。馬車は用意しておいた、街道を走るから速馬車じゃないがな」

「ありがとうございます。そしてごめんなさい。あたしのせいでマリーネを手放すことになって」

さすがのあたしも言葉を選んだ。ここは素直に謝るしかない。

「ふ、らしくないな。これからは敵どおしって事になる。いずれは無血戦争でぶつかることになるんだ。あまり感傷的にならないほうがいいぞ」

そうでしたね、とあたしは笑顔を見せた。大事なマリーネを預かるのだ。彼を不安にさせるのだけは嫌だった。

「じゃあ、行きましょ」

「ああ、最後になんだが。お前らに餞別を用意しておいた、受け取ってくれ」

餞別…?なんだろうか?紹介状を書いてくれただけでも十分なのに。

「馬車に行けばわかる。きっと役に立つぞ」

「わかりました」

あたしたちは不思議に思いながらも、局長室を出てギルドの出口に向かった。




「餞別ってなんだろうね?」

「何かしら?わたしも心当たりがないから見当もつかないけど、局長が役に立つって言うからにはきっと凄いものよ」

「だといいね」

しばらく歩くとギルドの出口が見えてきた。扉を開けるとすぐ目の前に確かに馬車が止まっていた。あたしとマリーネは御者に挨拶しようと馬車に駆け寄った。

「あれ?あなたは…。確か、リヤン…だったわよね?」

あたしは御者の顔を見て驚いた。彼はアルビィナとファイアーフロートの中継地からマリーネと乗り合わせた時の速馬車の御者だ。

「おお、あんたらはあの時の!やっぱり魔法少女だったのか。ここに呼ばれた時、もしかしたらまた会うんじゃないかって気がしていたんだが、ビンゴだったな」

「へえ、勘がいいのね。でも今日は速馬車じゃないんだ?」

「街道を走るからな。元々馬車自体は俺たちの所有物じゃないからな。用途に合わせて乗り替えるのさ」

そうなんだ。まあ当たり前だけど機構や学会みたいな元締めがあるってことか。

「もう準備はいいのかい?なら乗りなよ、先客はとっくに乗り込んでるぜ」

先客?あたしとマリーネはお互い顔を見合わせた。

「なんだ、聞いてないのか?こっちは3人と聞いてるぞ」

誰なんだろう?まあ見たほうが早いか。あたしは馬車の横に回って扉を開けた。

そこにいたのはーーー

「ト、トルベ⁈あなた、どうして?」

マリーネが驚きの声を上げた。

「わたくし昨日付けでメルキュールを解雇されまして、行くところが無いのであなた方について行くことにしたのですよ」

「ク、クビ?あなたが?そんな…」

「冗談ですよ、マリーネ。局長から聞いていないのですか?」

あ、あんたが言うと冗談に聞こえないって。

「あ、餞別って。トルベの事だったの?」

そういうことか。確かにこれからの事を考えると彼の存在はかなり貴重だ。

「でもあなた、わたし以外にもたくさん魔法少女を担当していたのに」

「メルキュールは大手ですからね、心配ないでしょう。彼女たちの担当なら代わりはいくらでも用意出来ます。しかしマリーネ、あなたの担当はやはりわたくしをおいて他に務まりません」

この男、マリーネを評価しているようで、しれっと自分を評価したな。まあ有能なのは間違いないのだろうが、少しやりづらいタイプなんだよね。

「これからはルナ、あなたがわたくしの雇い主ということになりますね。よろしくお願いしますよ」

「分かった、じゃあ早速行こうか」

あたしたちは馬車に乗り込み、いよいよ魔法解析学会に向かった。とにかくトルベの存在は心強い。局長、本当に凄い餞別だったよ。彼もマリーネに付きたいということだから「納得して」が折り込み済みなのも良かった。

「良し、それじゃ出発するぜ」

リヤンが前方で威勢のいい声を上げた。

「お願いします」

「よろしく」

「安全運転で頼みます」

3人は窓から顔を出し、それぞれにリヤンに声をかけた。

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