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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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決戦!第1魔法艦隊~サンビンセンテ空戦(壱)

ついに始まりました。魔法王国メイフィアの代表を決めるパンティオン・ジャッジファイナル。監視委員会が設定した戦場は、お互いの戦術が対等にぶつかる場所となりました。完璧のマリーが勝つか、それとも寡黙なフィンが勝つか?フィンが勝つには主人公の力がいるのですが・・・。

 平八は久しぶりに第5魔法艦隊旗艦レーヴァテインの艦長席に座っていた。現在、設定された戦場であるサンビンセンテ島沖を目指して航行している。率いる艦船は第3魔法艦隊より拿捕した船を中心に、集めた寄付金や報奨金によって買い足した中古の巡洋艦、駆逐艦を合わせて、23隻という大艦隊になっていた。


こんな感じである。

戦列艦 4隻

オーバーブレイン クロスファイア  ハースニール カシナート

巡洋艦 6隻

レーヴァテイン(旗艦)ブルーピクシー アトラス ブラウニーズ  ドライアド 

ユグドラシル 

駆逐艦 13隻

ウルド スクルド ベルダンディ 以下10隻


 ちなみに、人員も集まったので、ウルド、スクルド、ベルダンディ以外の艦船は有人艦となっている。フィンの命令で各艦の艦長が全力で戦うはずだ。艦隊運用も演習を重ねてきたので十分とは言えないまでも、なんと艦隊として動かせるようになっていた。

 

 23隻もの艦隊を指揮する以上、提督であるフィンが座乗する旗艦を戦列艦にしてはどうかという意見も根強くあったが、フィンはかたくなにレーヴァテインにこだわり、今回もこの使い慣れた高速巡洋艦で指揮をとることになっていた。


 対する第1公女マリーが指揮する第1魔法艦隊は、戦列艦6隻を中心とした総数27隻と第5魔法艦隊を若干上回る数であった。内訳は、


戦列艦 6隻

コーデリアⅢ世(旗艦) オーフェリア ガートルード クローディアス

デスデモーナ オーベロン


巡洋艦 9隻

ナイトメア ヘブンズゲイト グリモア パンドラ メイズ  ブルックシールズ バルボア マルセーズ コーンウォール


駆逐艦 11隻


レイス ファントム F 以下11隻


 旗艦を守備する巡洋艦オーフェリアとレイス、ファントム、Fの4隻が無人艦であった。


 全体の数、特に戦列艦が多いマリーの艦隊が有利とみる者もいたが、激戦を制した上にデストリガーが使用できるフィン艦隊を有利とする意見もあり、どちらが勝つかは神のみぞ知るという状況であった。


 戦場となるサンビンセンテ空域は、マリーの申し出によって、パンティオン・ジャッジ監視委員会が設定した戦場で、どちらにも有利とはいえない正々堂々と戦える場所であった。中央に周囲がおよそ600キロにも及ぶ浮遊島であるサンビンセンテがある。


 ここは、岩ばかりの無人島であり、中央の広大な山脈地帯が危険空域である腐食雲に広く覆われており、浮遊島の上空を飛ぶことは不可能であった。さらにサンビンセンテの下にも分厚い腐食雲が覆っていた。


 フィンを中心とする第5魔法艦隊の幹部は、旗艦レーヴァテインに集まって軍議をしていた。提督のフィンに副官のミート、艦長の平八に攻撃担当のナセル、平八の従者のトラ吉、友軍で参加しているリメルダとその副官のナアムである。


「つまり、この戦いは3Dではなくて2D的な戦いになるってわけですか、平八の旦那」


 平八の作戦マップを見ながら、トラ吉が感想を述べた。上と下があまり使えない限られた空間なので、立体的な戦いがやりにくいという意味だろう。


 マリーの艦隊とフィンの艦隊は、島をはさんでもう2日間にらみ合っていたのだ。平八としても、どうやって戦うか、実はまだ決断できないでいた。


「普通に考えるならば、全艦隊で右回りか、左回りをして戦いに突入という流れだろうが、こちらは若干、数が少ないからこちらから仕掛けるとなると不利だね」


 そう平八は一般的なことを話した。かといって、艦隊を二手に分けるのは戦力の分断という意味で下策であった。


「一番いい形が、敵艦隊の進行する方向を逆回りして、背後を襲う形で戦えればかなり有利になるな」


 そうナセルが指で艦隊を動かし、シミュレーションする。だが、そのためには、敵の動きを早めに察知し、気づかれないうちに行動することが求められる。


「では、索敵をしっかり行い、敵の動きをいち早く知ることですね。平八くん、そのための案はあるの?」


 フィンがめずらしく口を開いた。あのマグナ・カルタの実家で別れて以来、二人でじっくり話したことはない。なんだか気まずいのだ。フィンちゃんの父親の言葉が、まだ心に突き刺さっている。それでも、艦長として提督であるフィンを支える仕事をしなければならない。


「リメルダのブルーピクシーは探知能力に優れているから、できるだけ、島の中央に移動して、敵艦隊の動きを広い範囲で調べて欲しい。護衛に駆逐艦を2隻付けるので、サンビンセンテのこのポイントに移動」


 そう平八は位置を示した。そこだと強力な魔法探知システムを搭載しているブルーピクシーの索敵範囲が妨害されないで、最大に活かすことができた。敵が時計回りだろうが、左周りだろうが、動けば情報が分かるのである。


 もちろん、それだけでは、十分ではないと思うので、武器屋のクリオが見つけてくれた小型のガンシップ(一人用)しかも、ケットシー専用の機体を確保していた。それにトラ吉が乗り、敵艦隊の動きを直に探るのだ。


 いわゆる偵察用の飛行機である。大きさは全長4m、幅1.5m、高さ1.2mと超小型でアンチ魔法バリアまで搭載しているので、偵察にはもってこいであった。


「了解、平八。いい情報をもってくるわ」

「旦那、行ってきますぜ」

「頼む」


 リメルダとナアム、トラ吉が艦橋を出発した。


「平八くん…この間は父が失礼なことを言ってごめんなさい。平八くんのことを傷つけてごめんなさい」


 突然、フィンが涙をこぼして泣き出した。平八と合流してから、言おう、言おうと思ってもなかなか言えなかったのだろう。


「いいよ。君のお父さんの言うことは最もだよ」

「でも、ヒドイ…」

「娘を思う気持ちから出たんだと思う」


「ヴィンセント伯爵がああいうことになったでしょう?父はヴィンセント伯爵との婚約は破棄すると言ってくれたけれど、平八くんとのことは未だに反対なの。母は賛成してくれているのに、頑として受付けないの」


「・・・・・・・・・・」

「でも、このパンティオン・ジャッジで勝てば、許してくれると思うの。だから、がんばろうね」


「そうだね。フィンちゃん…」


 平八がフィンの手を握った。ラブラブモードに突入か?と思ったら、急にカップに入ったお茶が差し出された。


「提督閣下、艦長閣下、お茶でございます」


 平八はてっきり、アマンダメイド長だと思ったが、声に違和感があるでそのメイドの顔を見てぎょっとした。


「ロ、ローザさん?」


 フィンも驚いて、手にとったカップを少し傾けてお茶がツツツ…と一筋溢れている。


 前回の戦いのお仕置きで、レーヴァテインのメイドを命じたローザ・ベルモントである。大財閥たる令嬢が地味なメイド服に身を包み、丁寧な口調で給仕をしているのだ。


 平八の問いにローザは答えず、フィンがこぼしたお茶を跪いてふいている。この2ヶ月間、アマンダさんにメイドの教育を受けていたと聞くが、あの傲慢で高飛車なローザが完全なご奉仕する側に変身している。


 アマンダさんと使いゼパルとベパルも他の乗組員にお茶を出している。アマンダさんは、給仕しつつ、ちらりとローザの仕事ぶりを見ている。

 

 昨日までアマンダさんの厳しい教育があり、今日から実地練習ということらしい。どうやったら、あのローザをここまで躾けられるのだ?


(ある意味、こわ~っ。アマンダさん)


 アマンダさんはニッコリと微笑んだ。無論、空気を読まず、フィンと平八の会話に割って入った形のローザは、アマンダさんに厳しい教育を受けることになるのだが。


 パンティオン・ジャッジ2日目。第1魔法艦隊、第5魔法艦隊、いずれも相手の出方を伺いつつ、サンビンセンテの島の両端で動けないでいた。

あのローザさんを躾けるとは・・・アマンダさん、「最強」

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