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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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じーちゃん、艦長に転職したら美少女が付いてきました!(弐)

魔法艦隊?って何ですか?そのうち分かります。とりあえず、現状打破するためにいろいろ目をつむって…いや、初恋の女子に目がくらんで…異世界へと旅立つのですが???

 話は小学校の修学旅行まで遡る。京都に向かうバスが休憩で寄ったドライブインでその娘に会った。といっても、出会いはバスの窓越し。


トイレに行かずバスのシートに座っていた平八は、ふと大きなバスの窓越しに隣のバスを見た。きっちり隣に泊まった別の学校のバスがそこにあり。そして同じくシートに座ってこっちを見ている女の子と目が会った。


漆黒の髪がよく似合う娘だった。切れ長でまつ毛が長い、小学生ながら色っぽさを醸し出すそんな娘が、自分を見ている。

 

 二人共、吸い寄せられるように見つめ合った。


彼女のバスが出発して行き、目線が合わなくなるまで見つめ合った。


 修学旅行中、平八は魂が抜かれたようにその娘の顔を思い浮かべていた。そして、その女の子とは運命のように清水寺の舞台でまた出会ったのだった。


 また、見つめあったまま、ピクリともせず、二人は動かない。バスでは分からなかったが、その子はスラリとした体型で背が高く、腰まであるストレートの黒髪が印象に残る姿であった。頭にちょこんと乗せたチェックのベレー帽がめちゃくちゃ似合う。


小学生ながら、気品があるお嬢様って感じだ。学校がどこかの金持ち私立学校だったのだろう。ブランドものだと思われるタータンチェック柄の制服が何故か古い寺によく合っていた。


平八はこの時、勇気を出してこの子に名前を聞いた。


「フィン…」


とその娘は名乗った。外人のような名前だな…と小学生の平八は思った。


「あ、あなたは?」


恥ずかしそうにその子も聞いてきた。


「へいはち」

「平八?平八くんか…。素敵な名前だね」


 その娘はポツリとそう言った。言ってから顔が真っ赤になった。平八は思わず、持っていたカメラで写真を撮っていいか?と尋ねた。今思えば、小学校のガキのセリフじゃない。その子は恥ずかしそうにコクッと頷いた。平八と一緒に映した女の子の写真。家のどこかにあるはずだった。確か、あの子も写真を撮ったと思う。


 それだけの関係であった。でも、平八には忘れられない記憶であった。脳の底からその記憶が蘇り、今、画面に映っている写真と重なっていく。さすがに月日が経っているから、昔のままではないが、十分、あの時の面影が残っている。だから、間違いない。


 平八はその求人にエントリーした。職よりも彼女に会ってみたいと思ったのだ。エントリーを申し込むとナンバー13の部屋に行くよう表示がされる。平八は部屋の前に移動したが、何やら違和感が全身を支配していた。


(このハローワーク…13番なんて部屋あったけ?)


 1ヶ月も通ったのだ。部屋は12だったはずだ。開けると担当官がいて、説明と面接の後、先方と話して面接の約束をする流れになっている。


だが、不審に思って開けた13番目の部屋は想像を絶するところだった。


 白い…一面、白の世界。そして、ぽつんと置かれたイスと机。ハローワークにこんな空間がある筈がない。椅子には赤いスーツを来た金髪美女が足を組んで座っている。


「東郷さん。こちらへ」

 

 赤いルージュがスローモーションのように動く。平八はフラフラと前へ進み、そして椅子に座った。


わたくし、魔法王国メイフィア所属の異世界管理官メグリアと申します。この度は、私たちの求人に応募してくださり、ありがとうございますわ」


「は、はあ…」


 メグリアと名乗るその女性は金髪巻き髪、胸とお尻がバインバイン…のナイスバディ。容姿から言って明らかに日本人ではないが、日本語は流暢である。年はどうだろう?色気ムンムンだがどう高く見積もっても20代後半だろう。少なくても自分より年下ということはないと感じた。


(メイフィアって、どこかの外国か?そんな国あったか?魔王王国って何?)


 疑問が次々に湧き出てきたが、目は胸元を大きく開けたスーツから見えるメグリアさんの谷間にクギ付けになる。


「いくつかあなたに聞きますわ。まずは、年齢はおいくつ?」

「に、23です」

「わ、わかーい。いいわ~お姉さん、若い男の子好きよ~」

「へ?」


 こんなナイスバディな女性に「好きよ」と言われてドギマギしてしまう平八。彼女いない歴23年の経歴は伊達ではない。


「でも、若いだけじゃいけないの。適性検査をしなくては…」


 そう言うとメグリアさんは、急に平八の膝に前向きで座ってきた。メグリアさんの情熱的な青い瞳が俺を見つめる。大きな胸が体にあたり、さらに柔らかいお尻が平八の股間を刺激する。


「こ、これは…どういうこと…で、ですか?」


 心臓がバクバクするのを何とか耐えて平八が尋ねる。だが、このシュチュエーションは童貞君には超キツイ。硬いものが当たったメグリアさんは微笑んだ。


「あら?第一検査は合格よ。ちょっと、待ってね!今度は数値を測るから」

「す、数値?」


 素っ頓狂な声を上げた平八は、メグリアさんのダイナマイトな胸に顔を押し付けられてそれ以上声が出せなくなった。


「100…110…120…うそ!どんどん上がっていく!300、400、700、うそ、うそ、ありえない…カウンターが壊れちゃう…うそよ、こんなのって…ああ、すごいわ!私、こんなの初めて~!」


 メグリアさんが、普通に聞くと誤解されかねない言葉をはく。その言葉にまた興奮してしまう平八であった。


「9999…すごい!あなたのリビドー値、計測不能だわ!ありえない。まさに逸材!お嬢様の賭けは成功だったようね!」

「うっぷ…し、死ぬう~」


 平八は豊かな双璧の前に息ができない。慌てて、メグリアさんは抱えた平八の顔を離す。


「ご、ごめんなさい。あまりにもすごい数値で驚いてしまって…」

「い、一体、何の検査なんです?」


「ふふふ…あなたの魔力よ。リビドーと言ってこちらの世界じゃあ、欲望っていうのかしら。こちらの人間はだれでも思っているけど、あなたみたいに欲望が叶えられず、すさまじいパワーで蓄えられている人間はめずらしいわ。しかも純粋ときている。これはすばらしいわ」


「いや、何を言っているか分からないんですけど?それと純粋ってなんですか?」

「純粋とはイコール女性経験なしってこと。欲望のはけ口の機会に恵まれなかったレアな男ってことよ。」


 そう言ってメグリアさんは、俺から体を離し、目の前の机に座って片足を抱えた。短いスーツだからストッキング越しにパンツが…。


(ど…童貞にはこの状況、厳しいんですけど…れ、冷静に、冷静になれ!)


平八は慌てて両手でズキンズキンと燃えたぎるモノを押さえ込む。


「う~ん。向こうの世界の状況は今、説明しても理解はすぐにはできないと思うわ。詳しくは後で。とにかく、あなたの魔力は素晴らしいわ。十分、艦長が務まる。面接はあるけれど、あなたは合格だわ。即採用よ。どう、この仕事やってみる?」


「あの、質問していいですか?艦長って、船のあの艦長ですよね?そんなの素人ができるんですか?それに戦争に行くのですか?」


「まあ、率直に答えると魔法国家メイフィア所属、第5魔法艦隊旗艦レーヴァティンの艦長職よ。旗艦艦長なんて簡単にはなれないわ。あなたが異世界の男で才能のある人間だからできるのよ。戦争といえば、戦争だけど、これは魔法王国メイフィア…いや、トリニスタン全体の運命がかかっているの。私たちにその力を貸してくれませんか?」


 メグリアさんは、そう言って平八に契約書を差し出した。何語か分からないその契約書を見て、平八は急に怖くなる。


(外人部隊の契約書か?サインしたら死ぬまで軍隊とか?いやだ、戦争なんて!)


 平八は冷静になって考えた。いくらなんでも異常だ。夢を見ているに違いない。契約書にサインをするという行為がどうにも勇気がいる。


(こ、断ろう…。自分にとっておいしい話とは思えないよ)


そう思った時、あの写真の女の子が脳裏に浮かんだ。


「あ、あ…の…。メグリアさん…。あの求人欄に載っていた女の子…髪の長い方の…」

「フィン・アクエリアス第5公女。今回のあなたの雇い主。第5魔法艦隊提督よ。あなたは、彼女の乗る船の責任者なのよ」


「彼女の…」


平八は恐怖が吹き飛んでいくのを感じた。


(彼女に会える…。)


 そう思っただけで、不安も疑問も消えていく。気がつくと自然と契約書にサインをしていた。そうだ!どうせこのままでは、何も変わらない。そりゃあ、頑張れば、いつか車が売れるかもしれない。


だが、キツイノルマに縛られ、女の子とも付き合えず、楽しいことは何もない。そんなモノクロの世界が続くだけだ。今、自分の世界はカラーの世界に生まれ変わろうとしているのだ。


「変えたい…」


 そう平八は思った。そう思えば、何も知らない世界に飛び込むことに躊躇はなかった。



 で…現在、平八は前面に広がる青い空を見ている。巨大な船が空に浮かんで航行しているのだ。この艦を自分が動かしているというのも驚きだが、ブリッジにいる5人の人間だけで操縦しているというのも不思議な話だ。艦には他にも生活を維持するために必要な人材やメンテナンスを行う人材もいるが、合わせても10人もいない。


こんな少ない人数でこの大きな空飛ぶ船(高速巡洋艦ということだが…)が航行できるのは「魔法」のおかげだという。平八は「魔法」なんてファンタジーは信じない性格と思っていたのだが、現実に見てしまうと納得するしかない。


空に浮かんでいるのは艦の中心にある「浮遊マテリアル」という物質のおかげらしいが、艦の推進力は自分とこの艦隊の指揮官の魔力のおかげだという。


 自分にそんな力はないと思うのだが、艦長席に座ると前面のパネルのメーター表示が上がり、レッドからオレンジ、黄色、グリーンと上がる。このメモリ一つ一つが船を前へ進める魔力らしい。平八が艦長席に座ることでこの船は動くのである。バッテリーみたいな物があるみたいで、2、3時間は座っていなくても航行できるということだが。


(これじゃあ、まるで人間乾電池じゃないか!?)


 平八はブリッジの中央に設けられた艦長席からそっと後ろを見た。この艦隊を指揮する美少女が座っている。もう一つの「乾電池」である。最も彼女に場合は、このレーヴァティンの他に護衛駆逐艦2隻を動かしている。


(この2隻は驚いたことに無人で動いているらしい)


そんなありえない不思議な芸当をしている黒髪の主。


フィン・アクエリアスという名前のこの美少女…。


平八にとって、運命の女性であった。

平八は天国のじーちゃんに向かって、こう心の中で報告した。


(ジーちゃん…艦長に転職したら、美少女が付いてきました…)


平八は艦長を務める第5魔法艦隊旗艦、高速巡洋艦レーヴァテイン。スピードはあるが火力で劣る種類の船ではあります。異世界トリスタンはとある事情で空中でみなさん暮らしているのです。魔法艦隊も空を飛んでいます。

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