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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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じーちゃん、艦長に転職したら美少女が付いてきました!(壱)

関ヶ原でなってるわ~完結から3ヶ月。五郎八が送るファンタジー戦記ものの作品です。さえない主人公が魔法艦隊艦長への転職を期に一目惚れした女の子のために成長していく物語です。

2日に1回のペースで更新しますが、多数の読者様の温かい応援を受けて、現在、毎日、更新のペースです。

どうぞ、暇つぶしに読んでくださいませ!

(いつからだろう?)

 

 平八は目に映る光景がモノクロに見えるようになったのは。色のない世界に彼はずっと身を置いてきた。朝起きて食べるために働いてまた寝る。その繰り返し。自分には明るい未来など永遠に来ないだろう。


ただ、時が過ぎていくだけの日々。それを変えるためにこの場所に来てみたものの、それは意味のない行為であったかもしれない。そこは職を求め、老若男女が必死にあがく所。


ハローワーク…であった。


 東郷平八は、発行されたジョブカードに記載された自分の名前を見た。平八はこの名前が嫌いだった。小学生の頃はさほどは気にしていなかったのだが、中学生になり、急に異性を意識するようになってから嫌いになった。


友人は「しょう」「彰人あきと」「斗真とうま」など、タレントや外国人を意識した今風の名前に対して、自分は「へいはち」なのだ。自分が常に消極的な行動をするようになった原因のン十%は名前のせいだと平八は思っていた。


(一体、いつの時代の名前だ!?)


 名前を付けたのは、父親でも母親でもない。祖父だ。「ジーちゃん」と親しみを込めて呼ぶ祖父のことを平八は嫌いではなかったが、この名前を付けたことだけは恨んでいる。名前の由来は、知っての通り、明治時代に活躍した連合艦隊司令長官東郷平八郎から取った名前だ。


元教師のジーちゃんは、酒を飲むとこの歴史に名を残した名提督を褒め称え、戦史に残る日本海海戦を幼い平八に語って聞かせた。あまりに同じことを話すので、東郷平八郎についての知識は小さい頃から、かなりのものであった。

 

 平八は思う。確かにそういう英雄の名前を初孫につけたがる気持ちは理解できる。ただ、自分の東郷家が少しでも血が繋がっているとか、この英雄の親戚だとかだったらまだ分かるのだが、


東郷平八郎の一族とは、「一切関係ない」のだ。


 ご先祖様は、江戸近郊の百姓だったそうで、明治になっても農業で生計を立てていた。そして、このジーちゃん。自分は昭和生まれで、東郷平八郎を直に見たことも日本海海戦に参加したこともない。


ただ単に戦史オタクなのだ。

 

 そして、どうせなら「平八郎」とフルネームで名をいただけばよいのに、ジーちゃんは、中途半端に「郎」を取って名付けたからややこしい。東郷平八と初めて聞く人には微妙な空気が流れる。


「へいはち?変わった名前?」・・・歴史に疎い人

「平八郎じゃないの?」・・・ちょっと歴史知ってる人


大体こんな反応だ。


 そんな名前を付けられた平八のこれまでの人生は、実にさえないという言葉がふさわしいものであった。中学、高校と普通に何となく終え、高校卒業後は教師に勧められた3流大学を何となく受験。ここまではごく普通の目標がない、故に自分を磨くことなく、努力することなく毎日を過ごす多くの若者と同じであった。


 転機は大学2年生の時。両親が車で移動中に大型トラックと衝突して亡くなってしまったのだ。ジーちゃんもショックでその1年後に亡くなり、天涯孤独の身となった。父親は事業をしていたこともあり、その借金返済やらなんやらで、両親の保険金や財産は吹き飛び、さらに平八の若さにつけ込んで、相談に乗ると言って近づいてきた詐欺師に家もわずかばかり残った財産も全て取られてしまったのだ。


それから、現在に至るまで一文無しで頼る人もいない状況になったのだ。


 それでもバイトを掛け持ちながら、大学だけは卒業した。しかし、この就職難の時代。3流大の学歴で身寄りもいない、天涯孤独な若者によい職などなかった。ようやく採用された車の販売ディーラーはブラック企業の噂のあるところであった。


「おい、東郷。お前、入社して3ヶ月も経ったのに、未だに1台も売れないとは本当に努力しているのか!」


 ここのところ。毎日、出社した途端にマネージャーからどやされる。


(またか…)と平八は思った。


「昨日の軽を買いに来たオバはん、ちゃんとフォローしているのか?」


「は、はあ。あの方は他社のクルマも見てからと言っていましたし…」


「だから、電話して他社の見積はどうだったか聞くんだよ!どう見たって、値引きで勝負する感じだったじゃないか!」


「でも、マネージャー。あの方、べらぼうな値引き金額提示でまともに交渉なんてできませんよ。それとも店長、大幅に条件緩和してくれるのですか?」


「馬鹿言うな。あの車はまだ出て間がない。値引きは一声5万だ。これにサービス品でうまく丸め込め。他社のクルマよりもこちらの優位性をアピールするんだ!いいか、客の言う通り売ってちゃ、こちらが儲からない。如何に客に高く買ってもらうかだ!」


「はあ…」


 平八はため息をつく。この後の展開は予想できる。指導と称するマネージャーのセールス自慢をわんさかと聞かされ、平八のダメさ加減を散々なじられるのだ。それはたまらないので、平八は電話がかかってきたフリをして店を出た。


(もうこんな仕事したくない…)


 そもそも口下手で暗い性格の平八が、車のセールスなんて向いてないにもほどがあった。しかもセールスの仕事は夜討ち朝駆けの世界。勤務時間などはあってないようなもの。入社以来、休みもない。


ディーラーが休みでも平八のように成績が振るわない人間は、顧客への対応や飛び込みの売り込みをサービスで行うのが慣例であった。

それならまだしも、社長の屋敷の草むしりや掃除まで駆り出されることすらあった。

 

 それでも、車が定期的に売れれば、それなりに給料への報奨があったし、月1回程度の休みは取れる。だが、同じく入社した2名の新入社員でも、この3ヶ月に間に1台、2台と売ってるにも関わらず、平八は全く売れなかった。


 一応、昨日、来店したご婦人に電話をしたが、もう他店で契約するという返事。


 これで、店長になんと言われるか…。いや、正直、クビだろう。3ヶ月で1台も売っていないのだ。今月末でクビ決定だ。


(その前にこちらから辞めてやる!)


と平八は決意したが、それを言い出せず、飛び込みセールスに行くフリをしてこのハローワークに来ていたのだ。会社もブラックのダメダメ会社だが、平八個人もダメダメ人間であった。


(こんな人間では、雇ってくれる会社もないのは分かる気もするが)


 辞めると言っても仕事以外で乗りもしないクルマを1台、かなりのオプション付きで買っている。


(いや、買わされた。新入社員はまず、自分の車を購入するのだ)


そのローンをどうするかという現実的な問題もあった。次の職を見つけてからでないとたちまち破産決定だ。


「ふう・・・」


 平八はため息をついた。彼に見えるのは全てモノクロに覆われた世界。忙しく人々がうごめく世界。


(自分なんて生きていても何の価値もない…。親もいない、友達もいない。ましてや、彼女もいない。死んで悲しむ人間などいない。いっそ、死ぬか?)


そう思った時、


「死んではダメ!」

と声がした。若い女の子の声だ。


 平八は思わず辺りを見回した。だが、その声の主は探し出せない。いや、そもそも、自分の心の声など聞こえるはずがない。


 だが、平八はコンピュータの検索画面に現れた求人欄を見たときに、突然、目の前に広がる光景がモノクロからカラーに変わっていくのを感じた。


職種 艦長

場所 トリニスタン 魔法国メイフィア

待遇 月給制 月額は相談 ボーナス有り 休みは不定期

※学歴・年齢不問 適正検査あり

※第5魔法艦隊旗艦レーヴァテインで私たちと働きませんか?


「はあ?」

 

 一瞬目を疑った。この1ヶ月通っているが、こんな求人見たことがない。アニメ喫茶かその類の店のものだろうか?ちなみに求人欄のコメントに可愛い女の子が二人映っている。


2人とも明らかにコスプレだろ…


というよくあるアニメの女の子軍人の服を着ている。スカートが短くてちょっとドキドキしてしまう。平八はアニメ嫌いではなかったが、転職を決意してこの場にいる自分としては、興味を持つような職種ではない。


 だが、写真の女の子を見て、平八は思わず画面にクギ付けになった。そう遠い記憶の中に出会った女の子の成長した姿がそこにあったのだ。


(間違いない…。あのだ!)


 生まれてこの方、平八にはまったく異性と関わる機会がほとんどなかった。彼自身、本音とは別に女の子を避けてきたということもあったが、彼自身、顔は悪くなかったが、いつも自信のない表情、そしてひょろりとした体格が女の子受けしなかった。


だから、アプローチをしてくる女の子も、彼が心に止めた女の子もいない。23年間、記憶に残る女の子はほとんどいないと言ってよかった。


ただ一人を除いて…。


さあ、主人公よ。どうする?

決まってるでしょう! 「はい」でしょう!

「はい」を押すなら「今」でしょう!(笑)

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