決戦!第4魔法艦隊~エアズロック空戦(五)
決戦といいつつ、全然、戦闘が行われない~っつ!サギだ~と言われそう。戦記ファンの皆様、ごめんなさい。サブタイトル改変の方がいいでしょうか?それにしてもフィンちゃん。プロポーズだけで熱が出てしまうなんて・・・。もう三話も寝込みっぱなし。これで初夜なんて迎えたら・・・。
やばい??
8時間後、第5魔法艦隊は本拠地であるマグナカルタに到着した。当面の敵である4魔法艦隊も首都クロービスを出港し、第2都市、芸術と音楽の都アーセナルに到着している。決戦は2日後からであり、その間、艦艇のメンテナンスチェックと乗組員のリフレッシュ休暇に当てられるのだ。
「艦長、レーヴァテイン入港終了。艦を固定。エンジンを止めます」
カレラさんが冷静にそう報告する。
「艦長、マグナカルタ港施設長より入電。(我、第5魔法艦隊の入港を歓迎する)」
プリムちゃんが通信を伝える。フィンは熱が下がらず、相変わらずベッドで寝ているらしく、入港後、ミートちゃんが彼女を実家に連れて帰るらしい。この小都市マグナカルタはフィンやミートちゃんたちの故郷でもあるのだ。こんな小都市からパンティオン・ジャッジに出場する公女が出たというので、町上げての歓迎ムードが漂っている。港の小さな建物を出ると向かいのこじんまりした塔に、
「第5魔法艦隊の健闘を祈る!」
「祝、パンティオン・ジャッジ出場おめでとう!フィン・アクエリアスさん」
などという垂れ幕が掲げてある。
「あらまあ、こんな小都市じゃ英雄扱いですね」
そう皮肉ともとれるラピス嬢の言葉。よそ者同士、今晩の宿泊は街のホテルである。無論、大新聞社の記者であるラピスは、会社の経費で落とせるから相応のホテルへ泊まるのであるが、平八の場合、できるだけ安い宿ということでなんと銀貨3枚(価値的に1200円)で泊まれる宿屋であった。ナセルは自分の家に泊まりに来いと言ってくれたが、丁寧に断った。コイツのところに泊まったら、
「おい、平八、今晩、俺がイチオシのところへ連れて行ってやる」
といかがわしい店のはしごをさせられそうだったからだ。フィンにもらったお金は金貨8枚しかなかったし、彼女が汗水たらし、恥ずかしい思い(いや、べつにいかがわしい仕事じゃないですが)をして稼いだお金をそんなエロエロなことに使うわけにはいかなかった。
(ナセルの野郎、絶対おごるとかいわないからな)
そんなわけで、平八はナセルに書いてもらった地図を片手に街の繁華街を歩いていた。
(マグナカルタって、初めて来たがチンケな町だな。メイン道路が一本で店はこれだけか?)
トラ吉の奴がそう話しかけてくる。みんなとは別れてもコイツとは一緒だから、あまり寂しくはないのだが、いつも一心同体というのもちょっと困る。
ふと見ると、馬車が一台、道路脇の側溝に片輪を落としたらしく、立ち往生していた。空中戦艦のように魔力で空に浮かぶ乗り物が造れるメイフィアの住人がどうして地上の乗り物は馬車(といっても引いているのは一角獣)なのか、平八はとても疑問であるが、この際、それはどうでもいい。その馬車は周りと比べてもごく平均的な仕様であったが、降りて御者の作業を眺めている乗員だったと思われる婦人に目がクギ付けになった。
年は30代かな?と思えるが、その容姿はとても美しく気品があり、長い髪がゆるくウェーブがかけられ、白い手袋に白い日傘、白いスーツ姿がいっそう彼女を引き立てっていた。いいところの奥様って感じの女性だ。
その女性は片足を軽く上げて立っていた。どうやら、事故のせいで履いていた左足のヒールのかかとが壊れてしまったらしい。
「奥様、お困りのようですが、靴を直しに行って来ましょうか?」
平八は思わず声をかけてしまった。向かい側に靴屋があって、(靴の修理承ります)という張り紙を出していたことも声をかけた理由である。
「あらあら…親切な男の方」
そう言ってその女性は笑顔を向けた。おっとりとした口調で輝くような笑顔がまた美しい。なにより、バイン、バインという双丘が迫力あるのだがそれをエロく感じさせない雰囲気。まさに淑女とはこの人のためにある言葉だ。
「靴を修理に出す間、お茶でも飲みませんか?」
そうこのマダムは平八を誘った。でも、片方の靴なしでは歩けない。平八はどうしたものかと思ったら、このマダム、慣れた感じで平八に抱きついてきた。
(え?)
(お姫様だっこということか?)
ふあっ…と持ち上げるとロングスカートをなびかせて、思ったよりも軽く抱き上げることができる。いい匂いがして平八は頭がポーッとなってしまう。顔が近いがこのマダム、全然気にしてないというか、まったくの無防備である。
要するに能天気なお姉さん…という感じだ。
近くにあったカフェの椅子に彼女を座らせると、平八は急いで靴屋に行って修理をお願いし、カフェに戻って来た。あのマダムは優雅にお茶を飲んでいる。平八が戻ってくると、にっこり微笑んで、店員を呼び、
「お茶でよいかしら?それともエール?」
「は、はい、お茶で良いです」
この国にも紅茶らしき飲み物がある。味も変わらないが残念ながらコーヒーはないようだ。
「あなた、第5魔法艦隊の関係者ですか?」
そうマダムは訪ねてきた。平八の服は魔法艦隊の制服であるし、こんな小さな町だから、当然、第5魔法艦隊が入港したことは誰でも分かる。
「はい、そうです。旗艦レーヴァテインの艦長を務める東郷平八と言います」
「あらあら…まあまあ…。なんということでしょう」
驚いているのか、驚いていないのか分からないおっとりとした口調でマダムは続ける。
「あなたがフィンのパートナーですか」
「フィンって、提督のフィンちゃんを知っているのですか?」
「フフフ…。知っているも何も…。申し遅れました。私、フォーリナ・アクエリアスと申します」
「ア、アクエリアス?て、ことは、フィンちゃんのお姉さんですか?」
「あら、お上手だこと。そんなに私が若く見えまして?」
平八はこのマダムの顔をじっと見る。どう見ても若い。だが、フィンの面影がどこかしこにある。(ま、まさか…)
「娘は夫の方に似てまして、一緒に歩いていても母娘には見えないことがありましてよ。ホホホ…」
そう手袋をはめた右手を口にあてて、マダムは笑った。
「フィンちゃんの、いや、フィン提督のカーチャン…じゃなかった、お母様ですか!?」
「はい。そうです。平八くん。娘のことよろしくお願いしますわね」
「は、はい。お母様!」
平八は緊張でカチンコチンに固まる。何しろ、彼女の母親である。ここは嫌われないようにしないとと思うと、手が震えてカップが揺れてうまくお茶が飲めない。
(旦那、これはチャンスだぜ。将を討ち取らんと欲せば、まず馬を射よだね)
トラ吉が変なことを言う。そんな言葉、この世界にもあるのか?
「平八くん、でもね。母親としては娘が選ばれてこの世界を救う英雄になるよりも、あの子の安全の方が大事なの。あの子の戦力では代表になんてなれないとは思うけど、戦って怪我をしたらと思うと…」
「お母様…フィンちゃんは僕が守ります。それにパンティオン・ジャッジも勝つつもりです。僕も彼女も…。この世界の運命がかかっているのです。フィンちゃんが選ばれたのは偶然ではありません。きっと、意味があるのだと思います」
フォーリナ・アクエリアスは異世界から来たという青年をじっと見つめ、そして悟ったようにコクリと頷いた。
「分かりました。あなたのような男性がフィンのそばにいてくれて、母親として礼を言います。そして、娘の片腕として力を貸してください」
「は、はい。お母様!」
靴屋の店員が修理に出したヒールを持って来るのと同じくして、馬車の車輪も直ったようで、フォーリナはカフェを出て馬車に乗り込んだ。窓を開けると、
「平八くん、一度、家へ遊びにいらっしゃいな。フィンに誘わせますから」
(フ、フィンの家へ?おおおおおおおっ!家族公認の彼氏に昇格か?)
平八はこの母親にお辞儀をする。彼女の母親の心は掴んだ!
「あとはオヤジだな」
いいところでトラ吉の奴が水を差す。彼女の家へ行くなら、父親にも合うかもしれない。
(ちょっと、それには心の準備が…)
と思いつつ、平八は首を振った。今はそんなことをしている暇はない。カフェの店員にメイフィアの細かい地図を売っているところはないかと訪ね、地図を売っている店を紹介してもらうと、金貨1枚をはたいて、地図を買った。
この浮遊大陸とその周辺、特にマグナ・カルタと第4魔法艦隊の本拠地であるアーセナルの近郊の様子を調べるためである。
宿で地図を丹念に調べた平八は、港に出向いて商船の船長や軍の駐屯部隊の隊長に面会を求めて、情報を集めることで、リフレッシュ休暇を過ごしたのだった。
残念ながら、フィンからのお誘いはなく(たぶん、母親に言われても恥ずかしがり屋のフィンが承知するはずがない)、彼女の父親に会うことはなかったが、ナセルが休暇最後の日に飲みに行こうと誘ってきて、綺麗なお姉さんがいっぱいいる店でハメを外して酒を飲むことになったのはちょっと誤算であった。
(フィン、ごめん。金貨全部吐き出してしまった)トラ吉の奴の能力で、そのお姉さんたちのパンツはじっくり拝見できたのは出陣前のちょっとしたご褒美ではあったが。
フィンちゃんのママ、可愛すぎる。彼女が汗水たらして稼いだお金が・・・
エロエロに・・。男はどうしてもそういう方面に散財したがる・・。フィンちゃん、ごめんなさい。そして、トラ吉!ナイス!




