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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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公女様はアルバイト中です(四)

今回はヒロイン、フィンちゃんの秘密(?)のアルバイトが明らかになります。

うおーっ…恥ずかしがり屋の寡黙キャラなのに…そんなサービスを…。

なんて、いかがわしい想像には期待にお応えでいませんです。はい。

「で?なんで僕がナセル、きみと酒を飲んでなきゃならんのだ?」

「まあまあ。そんなこと言わないで、このエール、きゅっと体にしみこむ。どう、艦長、この国に来ての感想は?」


 平八はジョッキ入ったエールをググッと飲み干すと、もう一杯注文する。夕方に宿屋にこのナセルがやってきて、一緒に飲もうと言って、乗り気でない平八をこの酒場へと連れてきたのだ。


(畜生、今日はこいつにおごらせてやる!)


と平八は思って、酒のつまみに頼んだ野生ブタのモモ焼きにかぶりついた。ジューシーな肉汁が口いっぱいに広がる。昼にフィンと食べたラーメンみたいなものもうまかったが、この世界の食べ物は平八が元住んでいた世界のものと変わりなかった。


「で、ナセル、なんで僕をこの店に誘ったの?」

「そりゃ、わかるでしょ?」


 平八は酒場にしてはかなり広いスペースにあふれんばかりの客がほぼ男で、給仕をしている従業員が全てうら若き女性でしかも、かなり短いスカートと胸の谷間がよくわかるコスチュームで大体察しがついていた。ここは女性のピチピチの体を眺めながら、美味しい料理と酒を楽しむ男の憩いの場だ。まあ、客はいやらしい目で女の子を見るものの、体にタッチしたり、下品な言葉をはいたりはしていないので、そういうことは禁止されているのだろう。まあ、そこそこ健全さが残る店らしい。


(旦那、これくらいで驚いていちゃいけませんぜ。その気があるなら、もっとすごいところに案内しますぜ?)


 指輪に変わったトラ吉が心の中で話しかけてくる。トラ吉の指輪は今は革紐に吊るして平八の首にかけてある。


「そんなところには興味ないよ」

(またまた、そんなこと言っちゃって。女は昼間の公女様だけじゃありませんぜ。例えば、ほら!)


 トラ吉がそう言うと、急に目の前に来たウエイトレスさんの短いスカートが跳ね上がった。ローライズのセクシーパンツが平八の目の前に現れる。


「きゃ!なに?風?」


 ものすごい目の保養をさせてもらった平八とナセルは、その場で氷ついたように固まった。


「か、艦長~っ!異世界の人間はあんな魔法が使えるのか?今度、俺にも教えてよ~」

「馬鹿言うな。そんな魔法使えないわ!」


 多分、トラ吉の奴がやったに違いない。コイツ、妖精のパワーだとかなんて言って、きわどいスカートをめくらせるくらいの風を容易に起こせるようだ。


 ナセルの奴、エールを3杯飲んで少々、酔っ払っているのか、目の前で起きた出来事が不自然なのに気づいてない。だが、酔ってはいても今晩の目的を忘れてはいなかった。


「まあ、目の保養はこれからですけどね。このデロンの酒場に艦長を連れてきたわけ」


 音楽が変わり、速いテンポのダンスミュージック風になった。すると店の中の電気が消えて、中央に設けられたのステージにスポットライトが当たる。そこに見慣れた女性3人が体にぴったり密着した白いワンピース(かなり丈が短い…パンツきわどい!)にハイカットのサンダルを履いてポーズを取っている。


「今晩のメインイベント!第5公女フィン・アクエリアス様とそのご学友です!」

「よっ!待てました!」

「フィンちゃーん!愛してるよ~」


 飲んでいた客が一瞬で、歌とダンスの観客になった。大歓声の中で音楽に合わせて歌とダンスが始まった。


「あなたの~そばに~今、羽ばたいていく~」


 平八は思わずガクッとなった。可愛いフィンの姿の割に歌が微妙…。だが、こういう場のパフォーマンスは可愛ければ許される。観客は大いに盛り上がり、フィンの歌のまずさも気にならなくなる。そして、フィンのソロパートから2人の歌声が重なっていく。この2つの声は美しいハーモニーで、フィンの声を支えていく。ミートちゃんとアマンダさんである。それぞれ、ファンがいるらしく、観客の男たちは彼女らの名前が入ったタオルを取り出して、声援を送っている。どうりでウエイトレスさんに目移りしないわけだ。


「これってどういうこと?前から気になっていたけど、フィンは、公女様なのに庶民の世界でバイトしてるよな」

「フィン・アクエリアス第5公女。指名される前は、この首都クロービスから北に行った地方都市マグナカルタのアクエリアス子爵家の一人娘。アクエリアス子爵家ってのは、形ばかりは貴族だけど、父親は地方大学の教授でね。普通のサラリーマン家庭のまあちょっとだけいいところのお嬢さんなんだよ彼女は…」


 ナセルの奴、酒に酔ったのかフィンの身の上話を始めた。平八はフィンたちのダンスパフォーマンスを見ながら、動くたびにチラチラ見えそうなパンツ(もちろん見せパン)に気が散りそうになるが、それでもナセルの話を聞く。


 公女に選ばれたフィンの生活は一転する。旗艦レーヴァテインは与えられたものの、2隻の高速駆逐艦とその維持費、運用にかかる費用が簡単に捻出できない。一応、支度金と毎月の手当は支給されるが、どんなに切り詰めても赤字になるお金が毎月300ダカット(平八の概算による日本円で、60万円!?)


 しかも、お金がかかるので乗組員はプロは雇えず、友人(ミートちゃん、ナセル)や後輩プリムちゃんにパリムちゃん、家の使用人アマンダさん。船の免許を取ったばかりの新米航海士のカレラさんだけ一応プロに分類される。あとは使い魔(ベパル、ゼパル)やら学生バイト(プリムちゃん、パリムちゃん)やらで回している。


 一番お金がかかる艦長は異世界から連れてきたから、給料はいらないのが幸いしたが、通常、この規模の艦隊の人件費で毎月の持ち出しが1000ダカットというのが相場であった。だからフィンの第5艦隊は相当に節約をしているのだ。それでも毎月日本円にして60万円の赤字を補填するために公女自らがアルバイトをしているというわけだ。普通、小娘がアルバイトしてもまともな仕事なら月に60万円も稼げないが、ここは世界を救うかもしれない選ばれた公女の知名度を使ってバイトしている。だから、チップやフィン見たさに来る客の宣伝費込みで、なんとかかせいでいるというのが実情であった。


 平八は恥ずかしさを我慢して、踊っているフィンを見て心が締め付けられるようであった。あのフィンからもらった12枚の金貨は、彼女が朝早くからホテルでウエイトレスをしたり、夜に酒場でこんなパフォーマンス(いいえ、けっしていかがわしいものではありません)

をして稼いでいるとは夢にも思わなかった。自分が止まっているホテルの宿泊費も、食べている食事も彼女が出しているのだ。


「フィン…」


 歌が終わり、決めポーズを恥ずかしそうに決めたフィンは、その視線の先に平八を見つけて、思わず顔が真っ赤になってしまった。慌てて両手で顔を覆ってしまう。


「どうしたの?フィンちゃん!」


観客から声がかかる。


(へ、平八くんに見られた~恥ずかしいよ~。こんなはしたない格好、見られちゃったよ)


それを見ていたミートちゃんは、


(ナセルの奴ね!あれほど、ここには来るな!って言ったのに。しかも艦長まで連れてくるなんて。あとでシバく!)


と目をらんらん輝かせている。それを誤解したのか、ナセルの奴、


「平八、見たか?ミート奴、俺に熱い視線を送っているぞ。よし!決めた。俺はミートを彼女にする。フィンは平八に譲るから頑張ってや」


「大きなお世話だぞ」


 平八は舞台で固まってしまったフィンのことが心配で、フィンの方を見る。その場でうずくまって泣いている感じである。


(いかん…空気が重くなるぞ)


だが、この姿が観客にまた受けた。世界を救う運命を背負った公女様が、弱虫キャラとはある意味(萌え~)である。


(いや、それじゃ、世界を救えないだろう!)


「頑張って!フィンちゃん!応援しているからね」

「世界を救うのは君だ!」


 観客が金貨や銀貨をステージに置かれたツボめがけて一斉に投げる。今晩のチップである。ステージに明かりに反射し、キラキラ光る金銀を見ながら平八は酔っ払ったナセルを引っ張って店の外に出て宿舎へと向かった。


(フィンちゃんが、フィンちゃんがあんなことしてまで頑張っているんだ。どういうことか、まだわからないことが多いけれど、僕はフィンちゃんのために全力を出したい)


平八は心の中でそう強く思った。


「旦那~。その気持ちが本物ということは、相当、あの公女様に惚れてますな」


 ペンダントとしてぶら下げた指輪から、トラ吉が煙と共に飛び出した。ナセルは酔いつぶれているので、ソファに寝かせておく。


「ああ。彼女のことがすごく好きだ」

「だとすると、旦那。相当な奇跡が起こらないと旦那の恋は不幸な結末を迎えますぜ」


「ど、どういうことだ?そりゃあ、フィンちゃんが僕のことをどう思っているか分からないから、振られるかもしれないけれど…」


「そういうことじゃないですぜ」


 トラ吉は自分を買って救い出してくれた異世界の青年のことが何だかすごく気に入ったのだ。トラ吉が考えるまでもなく、公女もこの異世界の青年のことが好きなのだろう。でなければ、自分の旗艦の艦長にするためにわざわざ召喚したりしない。異世界からの召喚には結構な費用がかかるのだ。あの公女様は、そのために戦列艦を買うべき支度金をはたいたに違いない。


「まあ、オイラが教えなくてもすぐ分かるけどね。明日の城のセレモニーが始まれば…旦那に活路があるとすれば、旦那自身が艦長として責任を果たすことかな。まあ、それがこの世を救うパンティオン・ジャッジの目的でもあるからね」


 トラ吉はそう言い、また、指輪へと戻っていった。夜はふけている。平八も眠くなった。先ほどのフィンの可憐な姿を思い描きながら、ベッドの枕を抱えて眠りに落ちた。


この世界トリスタンに来て、10日間が過ぎようとしていた。


トラ吉の言う不幸な結末っていうのが気になるんですけど…。ちなみにコイツの特技はスカートめくり?妖精族からペットの身分にされた理由がなんとなくわかるんですけど。

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