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1話 帰宅
チャイムが鳴り響くと、浮き足立った雰囲気のまま帰りの会が終わった。
生徒たちはまばらに教室を去り、茜は持ち帰り損ねた教科書の詰まった鞄を背負った。
「じゃあ、また電話するね!」
「うんっ!」
友人と簡単な挨拶を交わし、絵の具バッグを手に持つと茜は教室を出た。
底の削れたローファーで強い日差しに焼かれたアスファルトを踏み締め、一歩また一歩と帰路を進む。
額を伝った汗が目に入り、涙が溢れると視界が蜃気楼のように歪んだ。
「茜様」
薄ぼけた世界に、人影が迫る。
「え…?」
絞り出した声は口元に留まり、ようやくピントが合った目で声の主を捉えた。
「お連れいたします」
柔らかそうな金髪はふわりと揺れ、和かに見つめる瞳はガラス玉のように透き通った水色であった。
彼が身を屈め、茜へ手を差し伸べた。
——途端に足元が沈み込むような感覚に襲われる。
あわてて体勢を整えようと足を上げようとするが、もうその感覚は失われていた。
黒く染まりゆく視界の中で茜は、男性の笑みに歪む口元を眺める。
「おかえりなさいませ」




