第34話 不器用な関係
朔は、あの日の風紀委員室での会話がすべてを変えてくれると、無邪気に信じ込んでいる。
そして彼は間違っている。変化は起きている——だが、その方向が彼の想像とは違っているのだ。
木曜日の朝。朔が教室に入ると、自分の机の上に一枚のメモが置かれているのに気づく。
『浅倉朔くんへ。素行不良につき、本日から一週間の風紀観察処分とする。毎日昼休みに風紀委員室へ出頭すること。——風紀委員会』
朔はメモを見つめ、眉をひそめる。
「素行不良」?
待て、俺は何もしていないぞ?
昨日の瑠亜とのやり取りを思い返す。
――「もう俺を困らせないでくれ」
「わかった」
――彼女はそう承諾している。
だが、これが「困らせない」ということなのか?
朔はため息をつき、メモを折りたたんでポケットに突っ込む。
昼休み、彼は風紀委員室へ向かう。
「来たのね」
瑠亜の口調はひどく淡々としている。
「お前が呼んだんだろ」
「これは風紀観察よ。私が呼んだわけじゃないわ。規則なの」
「俺をもう困らせないって言ったじゃないか」
「だーかーらー、これは困らせているわけじゃないわ」瑠亜はぷいっと顔を背ける。「これは——風紀委員会の正当な業務よ」
朔は三秒間、彼女をじっと見つめる。
「わかった。で、俺はどこに座ればいい?」
「座る資格なんてないわ。でも、そっちにしゃがんでいてもいいわよ」瑠亜は部屋の隅を指差す。
朔はそちらへ歩いていき、ごく自然にしゃがみ込み、そして漫画を読み始める。
瑠亜は執務机の奥に座り、書類を読んでいるふりをする。しかし彼女の視線の端は、常に朔を追っている――彼の横顔、ページをめくる仕草、わずかにひそめられる眉を。
しかし次の瞬間、彼女は自分がまるでストーカーのようだと自覚してしまう。
それでも、自分を抑えられない。
「浅倉」
「なんだ?」
「あなたとあの金髪の女子——どういう関係なの?」
「友達だ」
「友達が毎日お弁当を届けてくれるの?」
「くれるぞ。それに、陽葵の料理の腕は最高なんだからな!」
「嘘」
瑠亜はぐっと唇を噛む。
「じゃあ——あの黒髪の子は? あなたと一緒に帰っているあの……」
「義理の妹だ」
「義妹が毎日一緒に帰るの?」
「家族なんだから当たり前だろ?」
「嘘ね」
「じゃあ——あの絵を描いている子は? 美術室の……」
「ああ——あいつか、幼馴染だ」
「幼馴染が毎日あなたと一緒にいるの?」
「そんなことで嘘をついてどうする」
瑠亜は立ち上がり、朔の目の前まで歩み寄る。
「浅倉朔、あなた、私を誤魔化そうとしているの?」
「してない。俺は本当のことを言っている」
「あなたの本当のことは誤魔化しにしか聞こえないわ!」
「それはそっちの問題だろ」
瑠亜の顔が赤く染まる。
恥ずかしいのではない――怒りだ。
「あなたって人は——!」
彼女は深く息を吸い込み、踵を返して執務机の裏へと戻っていく。
「出ていって。今日の観察は終了よ」
朔は立ち上がり、ドアへと向かう。
「浅倉」
瑠亜が彼を呼び止める。
「なんだ?」
「明日も——来なさい」
「わかってる」
朔は去っていく。
ドアが閉まる。
瑠亜は机に突っ伏し、腕の中に顔を埋める。
「またやっちゃった……」彼女はこもった声で呟く。
「どうして私、彼と話すといつもこうなっちゃうの……」
金曜日、朔はさらに理不尽な事態に遭遇する。
朝、彼はギリギリで校門をくぐる――七時五十九分。遅刻まであと一分。
瑠亜は校門の前に立ち、手にメモ帳を持っている。
「浅倉朔、遅刻よ」
「ばか言え、まだ一分あるじゃないか」
「でも、あなたの左足が先に校門を入るのを見る。校則第三十八条によると、左足から校門に入るのは『不適切な登校姿勢』に該当し、遅刻と同等とみなされるの」
朔は瑠亜を見つめる。
「三十八条も校則を作るなんて、この学校の生徒のモラルはどれだけ低いんだ」
「それは関係ないわ。風紀委員は決して冗談を言わないの」
朔は深く深呼吸をする。
「よし。じゃあ右足から外に出て、もう一度右足から入る」
彼は振り返り、右足から校門の外へ踏み出し、そして再び右足から入ってくる。
「これならどうだ?」
「今は——」瑠亜はメモ帳に何かを書き込む。「今はもう八時一分よ。罪状が一つ増えるわね」
朔は自分のこめかみがピクピクと引きつるのを感じる。
「高松瑠亜」
「なに?」
「お前、本当に——うざいぞ」
「な、なによそれ!」
「うざいと言っているんだ」
「あなたって人は——!」
朔は背を向け、振り返ることなく校門の中へ歩いていく。
瑠亜はその場に立ち尽くし、メモ帳を握りしめたまま顔を真っ赤に染めている。
「か、彼、私のことうざいって……」
傍らにいる風紀委員が恐る恐る尋ねる。「委員長、彼を記録しますか?」
「記すわよ!当然でしょ!二回分記録しなさい!」
「でも——校則に『左足から校門に入る』なんて項目は……」
「今できるの!私が追加するわ!」
瑠亜はメモ帳を地面に叩きつけ、しゃがみ込んで膝を抱える。
「どうして……」
午前中の一時間目、朔の担当教師が教室に入ってくると、朔をちらりと見る。
「浅倉、授業が終わるなら職員室に来なさい」
朔は眉をひそめる。
授業後、彼は職員室へ向かう。
「浅倉、最近お前が廊下で大騒ぎして、他のクラスの授業の邪魔になっているという報告が来ているんだが」
「大騒ぎなんてしていません。学校中どこにでも監視カメラがあるんですから、俺がそんなことをしているかどうかは先生たちが一番よくわかっているはずです」
「だが、教員用の意見箱にそういった報告が寄せられている以上、学校の管理上、お前にも確認しないわけにはいかないんだ」
「誰がそんな報告をするのか、教えてもらえませんか?」
「意見箱は匿名だからな。先生にもよくわからないんだ。すまないな、浅倉」
朔は理解する――これは瑠亜の仕業だ。
直接自分を罰することができないから、教師を通じて圧力をかけているのだ。
昼休み。美術室。
朔は本来、詩織に会うためにここへ来るはずなのに、詩織は不在で、代わりに陽葵がとうの昔から彼を待ち構えている。
「先輩!来てくれるのですね!」陽葵は弁当箱のフタを開ける。「今日はハンバーグを作ってみるのです!ずっと練習しているんですよ!」
朔が腰を下ろし、まさに食べるその瞬間、ドアが押し開かれる。
二人の風紀委員が足を踏み入れてくる。
「浅倉朔、昼休み中に指定エリア以外での飲食は禁止されている。食堂か教室へ行きなさい」
「ここは非指定エリアじゃない。美術室は開放エリアだろ」
「でも、あなたは美術部の部員ではない。非美術部員が美術室で飲食することは、校則第二十七条に違反する」
朔は彼女たちを見つめる。
「誰に言われてここへ来る?」
「委員長よ」
深く息を吸って、弁当箱を手にする。
「陽葵、行こう。教室に」
「でも——」
「行くぞ」
二人が美術室を出ると、ちょうど画板を抱える詩織に出くわす。――彼女は一部始終を見届けているようだ。
詩織のそばを通り過ぎる際、彼女が小さな声で呼びかける。「浅倉くん」
朔は足を止める。
「なんだ?」
「あの子はきっと悪い子じゃない。ただ、どうしていいかわからないだけよ」
「わかってる。でも——あいつのやり方は度を越している」
「うん。でも、やり過ぎだからって、彼女を無視したりしないんでしょ」
「お前の言う通りだ」
彼は歩き出す。
詩織は彼の背中を見つめ、絵筆を取る。
彼女は画板に一足のブーツを描き始める。
長めの筒丈の。
ヒールがとても高い。
見た目は華やかだけれど、とても歩きづらそうなブーツを。
そして、その横に一行の文字を書き添える。
『彼女には、歩きやすい靴が必要』
放課後。朔が校門を出ようとする時、瑠亜が校門の前に立っている。
「浅倉朔」
「なんだ?」
「今日の風紀観察——あなた、まだ来ていないわ」
「午前中は『左足から校門に入る』のが遅刻だと言い、午後は風紀委員室へ出頭しろと言う。お前、一体どうしたいんだ?」
瑠亜は唇を噛みしめる。
「私——私はただ——」
「俺に恥をかかせたいだけか?」
「違うわ!」
「じゃあ、なんなんだ?」
瑠亜はうつむく。
「ただ——私に注目してほしいだけ」
「こんなことをする必要はない。お前のおかげで、もう十分に注目しているからな」
瑠亜が顔を上げる。
「本当に?」
「本当だ。四歳の時からずっと注目している」
「じゃあ——どうして私にもっと優しくしてくれないの?」
「お前が俺に優しくないからだ」
「それなら私——今からあなたに優しくする。あなたも、私に優しくしてくれる?」
朔は彼女を見つめる。その黒い瞳を、ほんのりと赤く染まる頬を、メモ帳を握りしめる指先を。
「する」
「本当に?」
「本当だ」
「じゃあ——明日からは、あなたを目の敵にしないわ」
「わかった」
「でも、風紀観察には来てよね」
「どうしてだ?」
「だって——あなたに会いたいから」
トマトのように真っ赤に染まる彼女の顔を見て、朔はようやく何かに気づく。
「わかった」と、朔は口にする。
「行くよ」
瑠亜が微笑む。
不器用で、ぎこちない、まるで初めて笑い方を知るような笑顔。
「また明日ね、朔」
「ああ、また明日、瑠亜」
朔は背を向け、歩き出す。
瑠亜はその場に立ち尽くし、メモ帳を抱きしめて彼の背中を見送っている。
「『また明日』って言ってくれる……」彼女はメモ帳に顔を埋める。「私の名前を呼んでくれる……」
傍らにいる風紀委員が、無表情のまま告げる。「委員長、鼻血が出ていますよ」
「えっ!?」
瑠亜が自分の鼻に触れる。
本当に血が出ている。
「は、恥ずかしすぎるぅぅ——!」
その夜。朔は家で横になり、天井を見つめている。
今日の出来事に思いを馳せる。瑠亜は確かにうざい。しかし悪い奴ではない。彼女はただ、好意の伝え方を知らないだけの、不器用な女の子なのだ。
詩織の言うように。
『ただ、どうしていいかわからないだけ』なのだ。
朔は目を閉じる。
明日もやはり風紀委員室へ行こう。
「観察」のためではない。
彼女に——教えるために。
どうやって好意を伝えればいいのかを。
もっとも、彼自身もよくわかっていないのだけれど。
しかし少なくとも——彼女と一緒に学ぶことくらいは、できるはずだ。




