13. 一粒で二度おいしい
双子には今日も来て貰うことにした。
「トップバッターは日神・月神。最初から大放出。一度で二度美味しい双子ちゃんだ」
マダガスカルが気になっているようなので、俺は早速二人を紹介してあげた。
「……おまえの同類か。なぁ、おまえ、神とは美しいものだとか言ってなかったか?」
おかしなことを言う。まるで双子が美しくないようではないか。
「美しい筋肉!」
俺は二人を指し、美しい部位を示してやった。とはいえ、全身美しいんだけどな。この双子は。
『ふんむっ!!』『ふむっ!』
二人は格好いいポーズをしてくれた。
「ほら見ろ、マダガスカル。リラックスポーズだ!」
二人は一度室内に入ってから、登場シーンにぴったりのリラックスポーズで再び現れてくれた。
両腕と脚をわずかに開き、板の間でフロント(前面)からターン。サイドリラックス(左)、リアリラックス(背面)、サイドリラックス(右)、と美しい肉体を万遍なく見せてくれた。
そして、元のフロント(前面)へと戻ると段差を降りて歩いてきた。
さすが双子。掛け声もないのに、まわるタイミングも角度もばっちし。段差を降りる歩調まで揃っている。シンクロっぷりが凄い。
「どこがリラックスなんだ? これ、結構力入れてるよな!? ボディビルでよく見るポーズだよな!?」
どこがと言われても、これがリラックスポーズである。
事前に説明はしてあるものの、改めて双子にもマダガスカルを紹介してやることにした。
「二人とも、これがマダガスカルだ。仲良くしてやってくれ」
二人は俺がプレゼントした色白肌がよく映える、揃いのピンクとブルーの薄衣を纏っている。動くたびに、それがふわりと揺れた。
恥じらいを忘れない、もじもじする双子を視線に入れようとせず、マダガスカルが此方に質問してきた。
「なぁ、昨日から訊きたかったんだが、なんで、女装なんだ? 俺よりデカいくせに、二人揃ってそういう趣味なのか?」
一日も経ってから、今更なことを質問された。
「おまえが女神がいいって言ったんじゃないか」
あれだけ主張しておいて不思議なことを言う。
説明してやったというのにマダガスカルは、視線を此方に固定し、かたくなに双子を視界に入れないようにして、俺にだけ話しかけてくる。
なんだ、照れているのか?
「女がいいんだよ。女装じゃねーよ!!!」
照れ隠しだとしても、おかしなことを言う。
「女だぞ。見ろこの巨乳」
双子を指差し、教えてやった。
俺のあげた服は少しばかり露出が高すぎるかもしれない。肉体的魅力ばかり主張するのもどうかと思ったが、この二人の肉体美は圧倒的だ。どうしても一番に眼に入ってしまうし、そこも含めて二人の魅力なのだ。
脚をわずかに曲げて直立し、両腕を頭の後ろで組んで、キュートにウェストと脚のラインを強調するアドミナブル・アンド・サイのポーズで待機していた双子が、揃って横向きになり、バストラインを強調するサイドチェストへと移行する。バストをぴくぴく動かすサービス付きだ。なのに、
「それ、単なる筋肉! 大胸筋だろ!? 脂肪を寄越せ」
マダガスカルが騒ぐのは照れ隠しなのだと分かっていたが、あえて指摘してやった。
「いい大胸筋だろ。惚れ惚れするよな」
「おまえと話すのもうヤダ」
なぜかマダガスカルがしゃがみ込んだ。お互い照れているのか、なかなか歩み寄らない。
昨日既に、初めての共同作業を終えているというのに、初々しい限りである。
仕方がないので、俺が間に入って紹介してやることにした。気分はお見合いオバサンである。
「マダガスカル、まだきちんと二人を紹介してなかったな。
双子で見分けが付きにくいかもしれないが、ハゲでヒゲが生えている方がファルームハイト、日神、つまりは太陽の神だ。髪が少し生えててヒゲがないほうがカヴリツィオーネ、こいつは月の神な。
カヴリツィオーネは、ファルームハイトと同じ顔なのに毛が生えているから、発毛の神としても崇められている。
二人のことは気軽にファーとカヴって呼んでやってくれ」
『ふんむっ!』『ふむっ!』
紹介をすると、二人は背筋を伸ばし、ラットスプレッドのポーズでマダガスカルを迎えてくれた。
「おまえ、ヒゲって時点で男だと認めてるよな!?」
マダガスカルが俺に詰め寄ってきた。相変わらず些細なことを気にする。細かい男である。
そしてマダガスカルは、今度は双子に向かって、
「おまえら、そんな服まで着せられて、そんな紹介のされ方でいいのか!? 見たところ外人みたいだし言葉が通じないのかもしれないが、好き放題言われているぞ!?」
と、話しかけていた。器用にも同じ内容を英語で言い直したりもしている。打ち解けてきたようで何よりである。
だが、まだまだ固い。二人の見分けがついていないのかもしれない。俺はもっと分かりやすいよう説明を重ねてやることにした。
「もしくは、『ふんむっ!』が、ファーで、『ふむっ!』が、カヴだ。カヴの方が少し引っ込み思案なんだ。二人とも可愛いだろう?」
分かりやすく説明してやったというのに、
「なぁ、おまえら本当にいいのか、こんな紹介のされ方で……」
マダガスカルが双子に、哀れなものを見るようにして言った。
失礼な。彼、いや彼女らはこれで十分満足している。何故なら俺が満足しているからだ。俺が満足なら双子も満足のハズなのだ。
マダガスカルがしつこく主張するので、双子に普通の男物を着せた。
何の飾り気もない短めの白いトーガである。肉体美を活かすために下履きは半ズボンだ。そこに何か言いたそうではあったが、マダガスカルは肩を落とした後、口をつぐんだ。
マダガスカルの趣味が分からない。
「わかった。女でなくていいんだな?」
そこで、本人に確認してみた。
「そうじゃなくて男に女装させるのを止めろと……。そもそも、そんなもん紹介すんな!」
何故か疲れた顔で、そう言われた。そんな事を言われても。
「他のやつらもおまえを見てみたいと言っているし、ファーとカヴだけじゃ不公平だろ。
明日からも来るぞ。見学予定者の中には、もう弁当箱を用意して、水筒も新調した者もいるそうだ」
そう教えてあげた。
こんな面白いヤツ、みんな会いたいに決まっている。俺だけ堪能するのは勿体無い。
「俺は観光地か!」
観光地というより、珍獣の類である。
そう思ったが、指摘しないでおいてあげた。俺は空気の読める男なのだ。明日は誰が来るのだろう。楽しみだ。




