東北地方 MZ作戦地区前編
2019年6月7日
仙台湾
戦後初めて進水した大型空母である「ちよだ」は湾内で複数のイージス艦と護衛艦に守られながらゆっくりと移動していた。甲板には戦闘機やヘリが待機していて、整備兵が点検をし、金属音や無線の雑音が響いていた。艦内では次々と装備を整えた90人の兵士たちが無言で甲板に向かっていた。
――JP-SWARTS。
ついに
日本特集作戦部隊の実践運用の日を迎えた。
その一角
6人で構成された一つの班が、静かに甲板へと向かっていた。
田中班
隊長、田中龍平(30)
ずば抜けたリーダーシップ性を持つ冷静沈着な元傭兵
田中班第1突撃兵――荒木巧(23)
班員内では屈指の機動力を用いており、高い運転技術と判断力を用いて敵の攻撃から逃れることができ、反撃の機会を作る力を持っている若きドライバー兵士
田中班第2突撃兵水野相馬(23)
班内では田中に並んで「第2の司令塔」として活躍している。敵からの奇襲や圧倒的劣勢な状況を打開することのできる高い信頼性を持つ、中央連邦軍の新世代の顔
田中班第3突撃兵吉田和樹(25)
元東京自警団で働いていた彼は、圧倒的な鋼のメンタルを持ち、関東統一戦争後に関東を統一した頃に統治に反対する暴徒を制圧した経験がある。
それぞれ癖は強いが、部隊の主力として大いに活躍する存在。
田中班偵察・狙撃兵――神崎玲子(24)
普段は元気な性格だが、作戦時は百発百中の命中度を誇る
田中班特別医療兵――白石真帆(21)
静かな性格で、さらには最年少でありながら、戦場での生存率を引き上げる重要な存在
この6人は、部隊内で最も好成績な兵士で構成されており、ほかの隊員らからは「最強組」と呼ばれている。
次々と隊員が集まり始めと甲板に向かうための大型エレベーターに全員が乗り込むと、すさまじいモーター音と轟音が響き、上昇し始めた。20秒ほど上がっていくと、ついに甲板に上がった。すでに戦闘機が発艦準備が進められており、甲板はかなり忙しそうだった。
隊員90名が次々と甲板に止まっていたヘリコプターに向かって歩いていた。
田中班らの乗るヘリに近づくと、近くで待っていたヘリのパイロットが田中と握手を交わした。
「今日はよろしく頼むよ」
「戦場に連れてくまでは死なせねえから安心して乗るんだな」
「信頼してるぞ」
短い会話を交わすと、ヘリの側面に着いたスライドドアを開け、班員らは次々とヘリの中へ入っていった。全員が乗り終わり、吉田と荒木がスライドドアからはみ出して足をぶら下げていた。
「.......はぁ」
吉田がポケットから煙草を取り出し、カチッ、という音と同時にライターの火が灯り、タバコの先端が赤く光った。
白い煙がゆっくり立ち上り、機内の空調へと吸い込まれた。
「おい、あんま吸いすぎんなよ...」
「こっちにも煙が入ってきちまってんじゃねえかよ....」
水野が顔をしかめながら言った。
「別にいいだろ」
「どうせいつ死ぬか分からんのだし...」
と吉田は肩をすくめながら言った。
「あたし、タバコのにおい苦手なんだよね~」
神崎がぽつりとつぶやくと
「同感です」
と白石が同調した。
「ほら言ってるじゃん」
と水野が指をさしていった。
「だけどなぁ...」と吉田は加えていた煙草を手の取って行った。
そして視界を真横に向けると、
「荒木....お前も何かあいつらにガツンと言ってくれよ...」
「俺は喫煙者じゃないからよくわからんよ」
荒木は膝に置いていたアサルトライフルのマガジンを確認しながら言った。
するとさっきまで整備員と話していた田中が戻ってきて、
「よしお前ら、今日は初任務だ」
「絶対生きて帰るぞ」
「それと吉田、俺も喫煙者だ、別に俺は吸ってても構わんからな」
すると吉田は
「さすが隊長、分かってるじゃんか」
と嬉しそうにタバコを再び吸い始めた。
やがて、機体のプロペラがエンジン音と共に回り始め、周囲に止まっていたプロペラも動き出した。
整備員が手信号で合図をし、次々とヘリが空へと飛び立ち始めた。そして田中班の乗るヘリも空母から飛び出した。
30機ほどのヘリが旧宮城県仙台市に向けて飛び立った。
午前4時30分
少し空が明るくなってきていたころ
その上空を数十機の輸送ヘリが編隊を組んで飛んでいた。
その中の一機の機内に田中班の班員らが静かに到着を待っていた。
その時、耳に取り付けられていた無線機から少しノイズ音がした。
「.....こちら防衛省JP-SWARTS作戦本部、繰り替えす、こちらJP-SWARTS作戦本部」
「本日付でJP-SWARTS作戦本部長を任された荒川総悟だ」
2015年のあの日、記者会見で部隊の誕生を宣言した張本人だった。
「これより、初任務の最終確認を行う」
そういうと、早速作戦の内容について話し始めた
作戦地域は、東北地方旧宮城県仙台市
本部コードネーム――MZ作戦地区
旧仙台市は核攻撃を受けておらず、現在もビル群が立ち並び、交通やインフラも完璧に整備されている。
だが、今この都市を運営しているのが旧宮城県と旧岩手県、旧青森県の海岸沿い一帯を管轄にしている日本統一を目指す「東北連合」によって統治されている
実際に東北連合の中心都市であるMZ地区では対空レーダーが幾つも張り巡らされており、対空ミサイルや対空砲の存在もステルスドローンの隠密調査ですでに確認していた。
さらにはそのMZ地区の国防を担っているのは東北連合が買収した民間軍事会社「仙台紅軍」によって守られており、政府によって購入されたことで、装備も兵装も我が中央連邦軍とは変わりない状態にまで強化されている。少しでも敵の標的になれば死ぬ可能性は非常に高かい。
そして、今回JP-SWARTSの担われた作戦は、中央連邦軍が管理している武器庫からいくつかの銃器が他国に横流しされているらしく、その人物を特定した。
その人物が東北連合で工作員として雇われている角田怜という男の確保だった。
ただこの工作員を雇っている企業の監視システムは特殊で、我が国の研究機関が調査をしているものの、まだほとんどこのシステムの解読は不可能だった。
ただ一つ分かったのは、この工作員らが確保されたことを何らかの行動をすることで読み取れるらしく
彼らの体のどこかにGPS機能が搭載され、すぐに取り戻すための部隊が送られるらしい。
つまり、どれほど早く作戦を終わらせれるかがカギになっている。
「異常が本作戦の概要だ」
荒川の声は最後まで変わらなかった。
「諸君らは、この部隊の初陣であり、今後の基準となる存在だ」
そして最後に
「...今作戦の成功と生存を期待する」
「グッドラック」
すると通信が切れ、それとほぼ同時に旧仙台市郊外に侵入した。
やがて田中が口を開き
「...降下準備を」
その一言で全員が動き出し
ヘリの中にあったラぺリング用ロープをヘリに括り付け、荒木と吉田は下を見て、ロープを下ろすタイミングを見極めていた。
降下地点まで残り数十メートルほど
まだ太陽が昇っていない仙台
JP-SWARTS最初の作戦が始まろうとしていた。
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