38 楽しいお昼休み 交流、嫉妬全面戦争編
全く、気分が悪いったらないです。
彼方先輩は、憤慨している私に言いました。
「陽子さんの気持ちも分かるけど、エミリーも、これだけ嫌われててもあなたを気にしている事だけは分かってあげてね」
まるで母親のように諭されてしまいました。
「彼方先輩までそう言うんですか?」
「エミリーとも友達だからね」
そう言われると、あまり悪くは言えません。
「まあ、確かに。何故か私を心配してくれている事だけは理解しますけどね。あ、感謝はしませんよ。私達は敵同士なので、そこは譲りません。譲りませんからね」
「ふふ、分かったよ。そういう事にしておくから」
彼方先輩は、仕方が無いという反応で後頭部を掻きました。
それから少しして、ふーりんは和美さんが一緒にやって来ました。
改めて、昼食の始まりです。
「ではお姉様。私のお友達を紹介します。ふーりんと和美さんです」
ゼリー飲料を食しているお姉様に、名前を呼びつつ、それぞれに手を向けて紹介をしました。
光先輩とお話するのは、今日が初めてだという二人は、どのような距離感で接するべきか悩んでいるようでした。
「風鈴、和美さん。始めまして」
頭を下げ、挨拶をする光お姉様。
言い間違いにふーりんはすぐに対応しました。
「あ、いえ。風鈴では無く、ふーりんです。うの部分を伸ばすんです」
「風鈴では無く、ふーりんですか。夏は勘違いが多そうですね」
「いえ、本名はフレデリカなので、間違われる事は無いですよ」
「そうですか。間違われないのですね」
良かったですねと微笑み、話を終わらせるお姉様。
「えっと、陽子さん。これはコミュニケーションを取れていたのでしょうか?」
「はい、ばっちりです。交友関係が広がるのは良い事です。ねぇ、お姉様」
「多くの人と繋がりを持てるのは素晴らしい事ですよ」
同意の微笑みを見せるお姉様。その笑みだけでささくれた心も、癒されます。お姉様の笑顔は、死んだ大地すらも蘇らせる力があるのです。
「あの、彼方先輩。やはり、接し方にまだ悩みが……」
もっと何か出来るのではないかと、ふーりんは考えてくれているようです。
これに対し、彼方先輩は言いました。
「細かい事は気にしなくて良いよ。きっと、こういうやり取りが良い方に転がってくれるだろうから」
「良い方にですか?」
「そう。ほら、学院での立場が最悪でしょ。だから接する相手は決まっているし、相手が同じならやりとりもどうしてもパターン化してくるでしょ。光自身も、積極的に動ける状況じゃないから。新しい刺激になれば良いなと思うんだよ」
「そうでしたか。分かりました」
ふーりんは何が必要なのかを理解したようで、深く頷きました。
「光先輩、一言言わせてください」
いきなりのふーりんが言いたい事があると切り込んできました。唐突だったので、光お姉様以外は驚いていました。
「どうしました?」
動じずにいたお姉様は、ふーりんのお願いに向き合うためか、ゼリー飲料を膝に置き、視線を合わせました。
視線が合わさった事を確認すると、ふーりんは言いました。
「私の事はふーりんでは無く、フレデリカと呼んでください。さあ、どうぞ」
「フレデリカ?」
「そうです。私がフレデリカです。光先輩」
「私は光です。よろしくね、フレデリカ」
友好の笑みをふーりんに向ける光お姉様。この光景を見た私はショックの余り、手に持っていたサンドウィッチを握り潰していました。
「光お姉様。私の、私の名前も呼んでください。朝、呼んでくれましたよね?」
フレンドリーなやり取りの末に名前を呼ばれたふーりんに対し、私は嫉妬に燃えていました。
ここはお姉様の妹になる予定の私が張り合わねばならない所です。
「あなたの名前? 何さんでしたっけ?」
思い出せなくて申し訳ないという顔の光お姉様。その表情も素敵で、私の手のサンドウィッチは更に硬くなり、岩石のようになっていました。後で飲み物と一緒に頂くとしましょう。
「一度会ったら忘れられないほどのインパクトを持った陽子さんなのに、覚えられてないって……」
和美さんは、声を出して笑ってはいけないと、肩を震わせて耐えていました。
「ちょっと和美さん、笑う所じゃないですよ」
「って言われてもさぁ。ちょっと試してみたくなるわ。光先輩。彼方お姉様の妹です。あたしの名前は分かりますか? さっき紹介されたんですけど」
「まあ、和美さんは彼方さんの妹だったのですか?」
「はい、この前の交流会でそうなりました」
お姉様と親しげに会話をしつつ、腰の辺りではガッツポーズを決める和美さん。
次に彼女は、私に向けて勝ち誇った表情をしてきました。これは全面戦争の合図となる行為です。




