04「生命人形に望みを」
――一度寝かせてしまえば、よくよくのことが無い限り朝まで起きてこないが、万が一ということもある。手っ取り早く済ませよう。
「召喚主の毛髪を小瓶に入れ、そこへ水を注いで蓋をすべし、か」
ギルバートは剃刀を手に取り、後ろ髪の一部を切り落としてテーブルに置き、髪だけを小瓶の中に入れ、そこへ水差しから水を注いで蓋をし、ノートの横に置く。
「次のページに描かれた図形をチョークで床の上に描き、さきほど用意した小瓶とデッサン人形を、その中心に据えるべし、か」
ギルバートは、白いチョークを手に取り、フローリングの上に六芒星と、その六つの頂点に外接する真円を描き、中心点に指定の二品を並べ置く。床の隅には、丸められた絨毯が見える。
「次のページに書かれた召喚文を、一字一句違わず詠唱せよ。さすれば、望みの僕が出現するであろう、か。いよいよだな」
ギルバートは、ノートを片手に持ち、舞台俳優のように朗々とした声で詠唱する。
「大地を削り、烈火を鎮め、大樹を育む、大いなる水の精霊よ。我に力を貸したまえ。今ここに、我が望みに応え、我が生涯に亘って忠実に仕え、決して主君を裏切ることのない従順な下僕を降臨せん。いでよ、フェルナンデス!」
ギルバートが言い切った瞬間、チョークの線から閃光が天井へと貫くように延び、しばし周囲は、真っ白で何も見えない状態になる。
「うおっ。眩しい」
咄嗟に利き腕で両目を覆ったギルバートが、そっと腕をどけると、さきほどまでデッサン人形と小瓶が置いてあったところには、燕尾服を着て眼鏡と白手袋をした少年が佇んでいた。少年は、大きく欠伸をしたのち、ギルバートの姿を認め、近寄ってお辞儀をしてから言う。
「ふわぁ~、よく寝た。――あっ、これは失礼。あなたが、僕の新しいご主人さまですか?」
「わぁ、ホントに召喚できた」
「はい?」
「ヤッタ―! ハハッ。嬉しいな。大成功だ」
いまいち状況が把握できないフェルナンデスをよそに、ギルバートは小躍りし、しばらく全身で歓喜を表現した。




