道しるべ
「ここにいる君達全員で極悪人ハイドラットを追ってもらいたい」
おっと、ここでハイドさんに箔が付いたっスね。
外道だったはずのハイドラットが極悪人にランクアップっスよ。
本人が聞いたら怒り・・・、いや、あの人だったら戦闘を避ける理由が増えたって喜びそうっスね。
自分は当人を知っているのでアレっスけど他の連中は、ルブラスカで見たことない方々なんで鵜呑みにしそうっス。
「つまり、そいつを捕まえれば俺の罪が帳消しになるってことだな?」
アイザックにそう訪ねたのは隻眼の赤髭の男。
顎髭を生やした筋肉モリモリのマッチョマン。
見た目は40代くらいで、いろいろ経験豊富そうな厳つい顔してるっス。
言動から考えるにそこそこ強いんじゃないんスかね。
自分としてはそこまでピンとくるものがないっス。
メイムの姉さんには、出会った瞬間から異様なものを感じたんスけどね。
中には、ハイドさんみたいに、脅威は感じないのトリッキーでヤバい人もいるんすけど、この人からはそんな印象を受けないっス。
装備は黒い重装鎧。
罪が帳消しとか言ってるっスけど、どっかで聞いたような・・・。
そういえば、自分も帳消しって話だったス。
室内を見回すと自分の他には4人。
・・・このメンツ、もしかして全員罪人かなんかなんじゃないっスかね?
腕の立つ人選してるのかと思いきや行き先は未開の地。
騎士団でない者は死んでも構わないという人選してんじゃないっスか?
「追うって、そいつら逃げたの西の果てでしょ。あーし降りてもいい?」
金髪ポニテの女がアイザックに聞いたっス。
割と整った顔に身軽そうな軽鎧に腰後ろにダガーを差してるのが特徴的ッス。
年齢的には自分より下っスかね。
「身体を売ることになるがそれでもいいのかね?」
「今更、男相手にしたって何とも思わないわ。いつ戻れるかわからないとこに行くよりはマシよ」
「そうかね。君は残ったところで命の保証ができないが仕方ないな」
「はぁ!?」
アイザック団長が残念そうな顔しながらポニテ女を見てるっス。
その眼には憐憫が混じってっス。
「罪は金を積めば消えるものではないよ。
君が殴った貴族は金には困ってなくてね、身柄の引き渡しを要求している。
君の技能的は惜しいが謝礼金に代わるなら問題ないとしよう」
「ちょっと待って!!」
慌てるポニテ女。
そりゃそっスね。
本人は軽く身体売れば済むつもりだったのに命を売る話になってんすから。
でもって、やっぱり罪人。
ん~、こりゃきっと集められたの全員罪人っスね。
命と冒険を天秤に掛けられてるっス。
当人に選択肢が余地がないっス。
アイザック団長、変わらず鬼っス。
ポニテ女は、団長に懇願して冒険に同行することになったっス。
「で、僕らはどうやって彼らに追いつくんですか?」
杖持ってる生意気そうな少年が尋ねるっス。
職業わかりやすいっス。
この少年はいったい何をやらかしたんスかね?
「それを考えるのは君たちの役目だ。
依頼というものは、自分では困難からだからこそ、できる者に任せるのだよ」
「当然のように言い返してるっスけど、自分らができる者であるかは確定してないっスよ」
「冒険者というものは達成する自信があるから依頼を受けるものだよ。
受けた以上は達成するのは義務とおもわんかね」
平然な顔してゴリ押して来たっス。
難易度B級くらいの依頼をやっとこなしてる冒険者にS級クラスの依頼を強制してるんスけどね?
この時点で、今回の任務がどれだけ困難かわかるっスよね?
「彼らの行き先が分からないのでは追い付きようがないのではないのかな?」
と、クールな感じの銀髪のイケメン。
罪状はイケメン、スかね?
イケメンてイケてないツラでもイケメンな気がするんスけど、それはブサメンっていうらしっス。
メイムの姉さんの知識っス。
自分はどちらかっていうとイケメンすね。
これ、冗談じゃないっスよ。
これでも自信あるっス。
女が寄ってこないだけっス。
見る目が無いんスね。
「確かに、相手の行き先が分からないのでは捕まえようが無いではないか」
声を荒げるおっさん。
でも、この仕事を与えるのに対してなんも策を用意しないアイザック団長じゃねぇっス。
昨日の話だと占星術師とかいたっスよね?
ハイドさんらの場所が特定できる人。
「彼女が彼らの場所まで案内してくれるだろう」
ほら、やっぱりー。
伊達に団長なんて肩書持ってないっスね。
そう言って指さした先にいるのは、部屋の隅の窓枠に腰かけた少女。
セミショートの髪に何処となく儚げな印象を受ける少女っス。
間違いないっス。
間違いなく戦えないタイプの女の子っス。
こんな子、連れて行くなんて鬼畜っスね。
困難と予想される旅路を更にハードモード。
緩くなだらかな道か、困難で険しい道か。
でも、緩くてなだらかの方選ぶとゴールが永遠に見えない可能性あるんスよね・・・。
緩くてなだらかなベリーハード。
困難で険しいイージー。
難易度設定おかしくないっスかね?
というか、いつからいたんスか?
「彼女の名はフィ「スィー」」
団長の紹介にスィーさんが重ねたっス。
名前間違えるなんて団長にしては珍しいっス。
そして、このお嬢さん。儚げな印象とは裏腹に、意思は強いみたいっス。
なんか不思議な感じ。
どこかで見たことある顔な気が・・・。
「ああ、スマンね。
コホン。
彼女が君たちの進むべき方角を示してくれるだろう」
団長は咳払いをして仕切り直したっス。
「おいおい、情報の精度は確かなんだろうな。
これで見当違いな方向へ進んでいたら堪ったものじゃないからな」
「彼女の情報が正しいという証拠はあるのでしょうか?」
「僕より年下の子が当てになると?」
「野郎だけじゃなくって良かったわ~」
口々にスィーさんに対する感想言ってるっスけど疑うのはどうなんすかね。なにせ・・・。
「私が保証するのに不満かね」
組んだ両手に顎前に構えたまま静かに団長が言ったっス。
その瞬間に場が凍り付いたっス。
言葉でというより、その身から発せられた威圧感に飲まれた感じっスね。
少年は圧に慣れてないのか口をパクパクしている。
ポニテ女については否定してないので精神的ダメージはない模様。
自分はちょっと背筋が震えてるっスね。
いや、嬢さんを疑ってるわけじゃなく、目の前の団長の実力を知っているだけに、この圧はキツいっス。
アレっスね。条件反射ってやつっス。
「いえ、行き先が曖昧なので、その根拠が知らたくて」
イケメン、なんで、わざわざ藪突くんスか?
駄メンさんスか?
しかも噛んだっス。
「その情報を公開できる程、君たちが信用されていると?」
ですよねー。
団長かの圧がさらに強くなってるっス。
この駄メンさんも何らかの罪状持ってんでしょうしそんな奴を信用しろと言われてもね。
あれ、でも・・・
「その情報は嬢さんが持ってるわけっスよね?
それを自分らに預けて大丈夫なんスか?」
団長の圧が止む。
「うむ、我々からの信用の証だと思ってくれたまえ」
にっこりと微笑む団長。
話、繋がってないんスけど・・・。
信用されてんのかされてないのかよくわからねえっス。
でも、わかったっス。
「お嬢さんの面倒はこのトーラスがしっかりとさせて貰うっス!」
ビシッっと胸に手を当て姿勢を正して答えるっス。
女の子のお世話っス。お世話っス。
大丈夫っス。
自分、変態じゃないっス。
可愛い女の子が好きなだけ。
同じ気持ちを伝えた時にナナシさんに『同志』とかメイムの姉さんに『ロリコン』なんて蔑まれたっスけど、どういう意味かよくわからんないっス。
ハイドさんの妹さんのルラちゃんの世話してたんで問題ないっス。
慣れてるっスよ!
「嫌」
あああああああああ、断られたっス。涙っス。
「自分のどこが嫌なんスか!?」
無視。
あー、なんスかね。
幼い子に無下にされたっス。
悲しいっス。
嬢さんは立ち上がってポニテ女の方に歩いていくと、その腰に抱きつきながら
「こっちの方がいい」
性別の問題だったっスか。
そりゃ、仕方ないっすね。
嫌われたわけじゃないみたいっス。
元気出たっス。
その後、嬢さんの世話はポニテ女に一任されたっスよ。




