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召喚士リルナのわりとノンキな冒険譚  作者: 久我拓人
冒険譚その3 ~パペットマスター~

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~パペットマスター~ 4

 まずはスペルクがいつも利用している倉庫に向かうことになった。倉庫の場所は商業区でも東側にあり、街と外を隔てている壁の近くに建っている。この壁はモンスターの侵入を防ぐ役割を担っているが、東側の壁の向こうは断崖絶壁の崖になっており、落下防止の意味も込められていた。


「おぉ~」


 倉庫周辺に来るのは初めてなのか、リルナはキョロキョロと見渡す。高い壁はあっても、潮風は吹いてくるのか、少しだけ傷みの早い倉庫が多かった。


「ここですよ」

「あ、はいっ」


 スペルクの倉庫も、同じく少しだけ傷んでおり、立派とは言い難い建物だった。それでも、物を保管するには充分な大きさであり、スペルクの商人としての地位はそこそこ高そうだ。

 ガチャリと大きな錠前を外すと、両側へスライドする扉を少しだけ開く。人間が入るにはそれだけで充分であり、リルナも腰の倭刀がつっかえ無いように気をつけて中へと入った。


「これが壊れた馬車?」


 倉庫内には、一台の馬車。だが、スペルクの言う通り片側の車輪が壊れており、斜めになっていた。これではいくら馬力の強い馬が引いても、少ししか進めそうにない。せいぜいグリフォンでもてなづけて、空を飛んで運ぶしかなさそうだ。


「根元からぽっきりと折れてしまってね。修理にかなりの金額がかかるのですよ」


 ため息混じりのスペルクの言葉に、リルナは馬車の裏側を覗いてみる。車輪を繋ぐ軸が、完全に折れており、素人目でも分かる程に馬車にとっての致命傷だった。


「あちゃぁ」

「それで、運んで欲しい……いえ、召喚して欲しい荷物はこちらです」


 スペルクが示したのは、倉庫の隅に詰まれた木箱の山だ。ざっと見ただけでもかなりの数があり、リルナの身長などはゆうに越えている。

 これを馬車なしで運ぶのは無理を通り越して不可能。ほとほと困り果てたスペルクの表情がなによりの証拠だった。


「これ、中身は何ですか?」

「肉や野菜です。これらをダサンで売って、香辛料や調味料の類を買い、サヤマに戻るつもりでした」


 なるほど~、とリルナは良く分からないまま頷く。


「どうでしょうか? 大丈夫でしょうか?」

「任せて任せてっ。まずは召喚陣を描くので、離れていてください」


 スペルクに少しだけ離れてもらって、リルナはマキナとペイントの魔法を発動させる。そのまま身体制御をしながら大きく円を描き、文字を書き込み、魔方陣を完成させた。


「できたっ!」

「ほほ~。これは?」

「召喚したい物をこの上に置いておけば、召喚することが出来る設置型魔方陣です。木箱の一個一個に描いてもいいんだけど、一気に送るのならば、これの方が便利なので」

「おぉ~……しかし、ということは……」

「あ、はい。木箱の位置を魔方陣の上に変更しないと……です」


 少しばかり歯切れの悪いリルナの言葉に、スペルクは苦笑した。


「楽ばかりは出来ないということですな。はりきって運びますか」

「あ、わたしも手伝いますっ」


 部屋の隅に高く詰まれた木箱を、二人でドンドンと移動させていく。腕力仕事なので、リルナの成果は遅い。その分、スペルクはまるで重さを感じさせない勢いで運んでいった。商人といえども、力仕事も多いのだろう。


「す、すごい……」

「これでも商人ですので」


 頼りない雰囲気のスペルクだったが、商人としての最低限の力は有しているらしく、30分程で作業は終了した。


「はぁはぁ……う、腕が震えてる……」

「はっはっは。まぁ、魔法職の方には厳しい仕事ですな」


 ともあれ、木箱は全て魔方陣の上に移動することが出来た。あとはダサンの街に移動して、召喚術を使用するだけである。

 少しばかりの小休止を挟んで、リルナとスペルクの二人はサヤマの街の西側から出発し、ダサンの街を目指すのだった。


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