ep 62 Against The Clock⑦
過去分を加筆修正中で、現在ep 4まで修正済みです。
今週また修正分を上げると思いますので、都度ここで報告させていただきます。
よろしくお願いします。
「何か掴んだみたいだね」
「ああ。だが”自覚”しただけさ」
町中のメッセージには『西から南へ』とある。私の推理が正しければ、町中はまだ南にいる。おそらく島路山奥。一般の立ち入りが禁じられた地ではあるが、そんなことは”敵”にとってはお構いなしなのだろう。
私は携帯をポケットに落としキャップを深く被り直した。
「島路山の奥へ行くよ。いいかい?」
「もっちろん!」
天ちゃんは元気な声で答え、両手でピースをしてみせた。
「あーでも、わたしが許可したのはかえちゃんだけだから、他の子にはご退場をお願いするけど」
「そのつもりだよ」
天ちゃんの隣の彼に目をやると、まだこちらを真剣な眼差しで見つめている。
「大丈夫ですよ。言いたいことはわかりますから。あと30分以内に、貴方に纏わる全ての呪いを打ち払ってみせましょう」
伝えると、彼はゆっくりと瞬きした。
「善は急げだ。天照様、彼をお願いします」
「うん。気をつけてね」
ひらひらと手を振る天ちゃんに一礼して、正宮を後にした。
私自身の意思が侵されていようとも、私は私の仕事をするだけだ。
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島路山内は圧倒的な生命力に満ちていて、神宮のそれとはまた違った雰囲気を持っていた。生い茂る木々は、服でも着ているかのように緑緑とした苔を纏っている。足元の雑草にも露が滴っているものが多い。まるで雨上がりの森のように湿っていて、緑の香りが充満していた。驚くほど静かで、時折動物のものであろう高い声が、真っ新の紙に墨汁を一滴垂らすかの如くこだまする。朝熊山とはまた違った意味で、プライベートで訪れてみたいと思わせる場所だ。禁足地であるためこれっきりになりそうだが。
朝熊山の時と同じように魔力を消して、且つ敵の気配を探りながら土を蹴り、進むと、空気感が変わった。この感覚は結界を通った時のものではあるが、魔法によるものではないとすぐに分かった。魔道具の小規模結界に違いない。魔法でないなら私の存在に気づかれることはない。
それから目的の人物を見つけるのにそう時間はかからなかった。姿勢を低くし、木陰に隠れる。少し開けた場所にスーツの男性と金髪の女性が少し距離を置いて立っていて、女性の側にもう一人淡い青のワンピースを着た若い女性が正座をしている。男性は間違いなく町中だ。正座の女性の暗い表情を見るに、金髪の女性が敵だろう。
魔力を凝らして正座の女性_____おそらく人質_____を見てみると、鎖のようなものが首に巻かれているのが見えた。鎖は空に伸びており、その先を目で追ってみると結界に使われているであろう魔道具が浮いていて、鎖はそれに繋がっているようだ。当然鎖は魔法で作られたものだとわかる。
(鎖にどんな力があるかわからない以上、迂闊に手を出すわけにはいかないか)
金髪の女性は、垂れ目気味の一見優しい目に冷徹さを含み、町中を凝視している。町中は背中を向けているため、どんな顔をしているかはわからない。手をポケットに突っ込んでいるところをみると、それほど切迫しているわけでもなさそうだ。
「貴方はいったい何なんですか。何故私の魔法が効かない」
特に声を荒げるわけでなく、金髪の女性が言う。既に戦闘が始まっているらしい。
(連絡しろって伝えたのに、一人で突っ込んだのかこの人は…)
人質に特に外傷がなく、怪しい鎖も作動していないことが奇跡的に思えた。
「敵に種明かしするほど、俺は馬鹿じゃないからなぁ」
町中が手をポケットから出し、ポリポリと頭を掻いた。
「でもまぁ、何なのかと訊かれりゃ、そりゃ決まってる」
魔力ではないが、何かが蒸気のように町中の体から噴き出ている。
「その子を頂戴しに来た、仮面ライダーみたいなもんだよ」
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