ep13 都立桜ヶ丘学園
私と茜は南口を出てすぐのところにあるクラブハウスサンド屋に立ち寄って、昼ごはん用に1つ買った。茜が「買えるんだ」とびっくりした様子で言ったが、私は黙っていた。
私達はそんな話をしながら新宿御苑まで来た。私達の学校は新宿御苑の隣なのだ。
「いよいよだね」
私が言うと、茜が「何が?」と訊き返してきたので、「こっちの話だよ」と言って誤魔化した。いざという時口に出してしまうのは私の悪い癖だ。
都立桜ヶ丘学園は創立200年を迎える、偏差値の高い古き良き学園として知られている。幼小中高大とエスカレーター式の学園ではあるが、進級制度が厳しく、ある一定の成績を修めないと小学生でも留年してしまうほどだ。私と茜は小等部からの付き合いで、現在2人とも桜ヶ丘学園高等部の魔法科学科に在籍していて、他にも普通科も存在する。私達のカリキュラムとしては、普通科の科目に魔法科学が乗っかったものだ。もちろん実技もある上、生死がかかっている。私はこの学園の高等部内で魔力の暴走により爆死した生徒を3人見た。こういった危険があるから普通の家庭は魔法科に子供を預けたがらない。将来高収入が約束される身分と天秤にかけても命は無駄にできないのだ。だから魔法科の生徒は孤児か上昇志向の高い家庭の子しかいない。私も茜も孤児だ。ちなみに爆死事故の被害者だが、跡形もなく破裂し、血溜まりが残るだけだった。
血生臭い話は一旦置いておいて、建物の話に移ろう。高等部魔法科の校舎の造りは豪奢でも質素でもなく、しかし現代的というには少しはばかられる、そんな煉瓦造りの建物だ。小中あたりは近代的なデザインになっているが、高等部の校舎には蔦が絡まっている。中も木造で、一歩踏み込む度ギシギシと音を立てるものだ。そんな校舎でもセキュリティは厳重で、出入りする時は手をかざして生体認証を行わなければいけない。生体認証をパスした上で入らないと、炎魔法が発動し、全身炭にされてしまう。その防護魔法を突破したのは200年の歴史の中で楓先生ただ1人らしい。私には絶対無理だ。私と茜は生体認証をパスして校舎へと入った。
教室は隙間風などが入る心配はないが、やはり古さを感じる。高等部の生徒全員合わせて1200人ほどいるが、そのうち魔法科生徒は30人だけだ。それも以前のデータで、今では3人失って27人となっている。少ないから古い校舎を割り当てられているのか、わからないが、1学年10人の少ない人数なのでそれでもいいだろうと思われている節はあると私は思っている。ちなみに私は首席だが、それは普通科生徒も合わせて首席であるということだ。断じて10人ぽっちきりの学年で首位を取っていることに誇りを持っているわけではない。それは次席の茜も同様だ。
校舎の2階にある教室に入ってみたが、今のところそれらしい雰囲気はない。当然だろう。1週間だ。1週間私が通っている間学園は人身売買を隠していたのだ。そう簡単にわかるはずもない。かといって、そう長くは隠し通せないだろう。なんせ相手は赤ん坊だ。泣き声が校舎に響いたら存在が明るみになるのも近い。しかし、違和感はある。この1週間、泣き声を聞いていない。久美子さんのお子さんは普通科の校舎だろうか。それでも泣き声がしたら誰だって不思議がるだろう。とにかく慎重にことを進めなくては。
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