ep12 女子高生の日常②
茜は大きな欠伸をしながら言った。
「歩くの面倒だなぁ。空飛んでいこうかな」
「あまり調子に乗ると、魔力が暴走して体が内から爆発するよ。浮遊魔法は制御が難しいんだんだから」
「周防先生ならできるのかな」
「まぁできるけど、魔力の無駄だし、体力つけるためにも歩いたほうがいいっていつも言ってるよ」
「高尚だなぁやっぱ。それにしても__」
茜は私の前に飛び出し、後ろ歩きをしながらからかうように言った。
「学年首席が浮遊魔法もできないなんてねー」
「そこなんだよねぇ。茜が羨ましいよ」
「まぁそんなのなくても首席取っちゃうのが夏樹なんだけど」
「やけに絡むね。どうしたの?」
私が訊くと、茜は「まぁねぇ」と真剣な面持ちで続けた。
「昨日さ、仕事中に連絡くれたじゃん?その時1時回っても帰れないって言ってたよね。あれ見てさ、思ったんよ。私も頑張ってるのに、仕事してる夏樹より成績悪いのってなんでだろうってさ。それで嫉妬したってわけ。よくある話っしょ?」
私は真剣に悩む親友の目を見て、真剣に答えた。
「あんたが私に勝てない理由はね、あんたが授業中寝てるからだよ!」
「…はっ!」
何か重大な衝撃を受けたかのように、茜の目は見開かれた。
「なんで今気づきましたみたいな顔してんのよ。そんな態度で次席取れるんだから、そっちの方がすごいと思うけどね、私は」
「私夏樹にノート見せてもらってなかったらカスみたいな成績だった!」
「よくノートだけで9割取れるよ…まったく。茜って天才だよね」
「よく言われる!」
目を輝かせて喜ぶ茜を見て、朝にして本日3回目の溜息が出た。
「言うんじゃなかった」
私は肩を落とした。
ふと茜を見ると、朝の日差しが茜の髪の色に溶けて真っ赤に燃えていた。「明日までに成果を上げてくれたまえ」という楓先生の言葉が頭の中で反芻された。今日1日が勝負かと思うと、茜の能天気さを前にしても笑ってはいられなかった。もし失敗したら__。そんな思いが常に頭の片隅によぎる。まずどこから手をつけていいのかわからない。初手で失敗したら学内を騒然とさせるだろう。私にも学年首席という地位の重さはわかっている。私には学生として、最優秀生徒としての態度が求められる。周りの目がある中で、どれだけの立ち回りができるだろうか。霞が学校に売られたのが事実なら、教師陣も当てにはできない。話しかける相手を間違えれば私の身の危険もありうる。そうなれば霞どころじゃなくなる。
「どしたの?」
茜が不思議そうに見てくる。私には守るべきものが多すぎるみたいだ。
私は茜の顔を見て、笑顔を努めて言った。
「これから大仕事が待っててね、茜にも迷惑かけるかもしれないけど、私は大丈夫だからね」
「…う、うん。よくわかんないけど」
茜は困った顔で言った。
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