012
「何か楽しそうなゲームを、しているよだね」
緊張感のない声が、聞こえてきた。
その声を見ると、ミディアムヘアーの茶髪に兎の耳のようなカチューシャをつけた女子生徒だ。
茶色のブレザーにリボン、見た目は子供っぽい女子生徒。
校則より明らかに身近な白いスカートと、風紀委員の腕章が似合わない女。
「女天栖、今日の審判は照美栖」
「まあまあ、いいじゃ無い。テミちん」
「テミちんではありません、ちゃんと光山先輩と呼ぶように」
光山は、相変わらず淡々とした顔を見せていた。
「ルーキーさん、最近入ってきてもすぐに負けちゃうから」
歩き回りながら、部屋に入ろうとすると……烏嶽に近づく前に見えない壁で阻まれた。
「神々のカードゲーム、ゲーム内だったかね」
「見れば分かるでしょ」
「でもね、この子が生徒会長の妹さんでしょ、期待のルーキーね」
「あんたは……『冴木 女天栖』」
彼女の名は、冴木 女天栖。
生徒会長の会計だった人物が、なぜここに来ているのか分からない。
姉の遥乃が、彼女の才能を選んで生徒会に招いた。
「冴木さんは、生徒会を辞めて風紀委員になったの?」
「そ、そ。面白いでしょ」
可愛くアピールする冴木。
だけど、あたしはムッとした顔に変わった。
「面白くないけど」
「なんで乱入したの?大人しく、冴木は見ていなさい」
「そうはいかないよ、女天栖の彼が助けて欲しがっていたから」
かわいらしく、ポーズを取って見せた冴木。
その冴木は、あたしの顔を指さした。
「あたし?」
「そう、ユッキー」
「なんであたしに?あなたたち風紀委員は」
「硬いことは言いっこなしよ、女天栖は、彼氏の味方だから」
「誰ですか、それ?」
「秘密ですよ」
人差し指を立てて、ウィンクした冴木。
どうもギャルっぽくて、かなり話しにくい相手だ。
「でね、今は凄い悩んでいるんでしょ」
「そこまでは……」
「多分、このカードゲームは役者が有利だと思う。
演技できるし、騙すことも出来るし……後は自分を欺くことも出来る。
役になりきるってヤツかな」
「うん」烏嶽は、確かに不思議だ。
質問の中で、別の人物に話しかけているかのような瞬間があった。
これは彼が演劇部の部長であるが故、複数の人物を演じていることに他ならない。
そのことを考えた瞬間、あたしはある事を閃いた。
(そうか、これが、あたしが烏嶽に対して引っかかっていたことだ)
何かを思い出して、目を大きくした。
そんなあたしを、腕を組みながら見ている烏嶽。
「あの、早くしてもらえないですかね。時間は後1分ですよ」
「そうね」あたしは、天秤左皿に置かれた砂時計を見ていた。
砂時計の砂は、8割ほど落ちていた。
だけど、なんとなく見えてきた。
烏嶽 芳吉が演じていた人物の素性を、あたしはようやく理解した。




