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烏嶽は、既に勝利を確信した様子だ。
対するあたしは、まだ烏嶽のカードをよく分からない。
おそらく、このターンで当てなければ次の烏嶽の狙いは予想が出来た。
焦りが無いといえば、嘘になってしまう。
(やっぱり経験者は、戦い方が全然違う)
既に2度目の戦いを経験している烏嶽は、相手のカードを当てる術をよく知っていた。
揺さぶりをかけて、読みもかなり鋭い。
簡単にあたしの考えも、あっさりと読めてしまう。
「次……天瀬 雪乃」
光山が、宣言した。
制限時間は5分、僅かな時間であたしはカードを当てないといけない。
だけど、あたしは顔を上げた。
ここで、顔を下げてはいけない。
逃げることも、隠れることも出来ない。
目の前の男が選んだ人物を、当てないといけない。
(なんとしても、烏嶽から情報を得て……当てる)
選択肢は烏嶽の両親と、女子マネージャーと後輩の4人。
この中に、間違いなく答えがあった。4択の正解率は、25%だ。
だけど、このターンで正解しなければあたしの負けはほぼ濃厚だ。
かなり追い込まれた状況で、烏嶽をじっと見ていた。
(でも、どうやって質問をする?)
烏嶽は、なかなか情報を出さない。
こちらの質問にも、満足に答えてはこない。
彼のパーソナルデータを、ここであたしは洗い出すことにした。
見た目は運動部員のような体がガッチリした男性。
筋肉質で、腕も太いし肩幅も広い。
2年C組で、あたしの元彼『長谷』の部長。
そうだ、烏嶽は演劇部の部長だ。普通に考えれば、演劇部系の人間の可能性が高い。
最も今は例の感染症もあって、それほど部活動は活発では無いが。
「演劇は好き?」
「当たり前だ」
「秋の文化祭で、やった演目は?」
「ロミオ犬とジュリエット猫」
「どんな演劇?」
「ロミオを犬の擬人化で、ジュリエットの猫に恋をする話」
「烏嶽の役は?」
「ジュリエット猫の父親猫」
「榊原さんの役割は?」
「マネージャーだ」
「後輩の梶原君の役割は?」
「ロミオ犬の弟だ」
演劇のことは、割とスラスラ出てきた。
なるほど、烏嶽は本当に演劇が好きなのだろう。
演劇系の人間に絞ったところで、この質問をすることにした。
「今まで、つきあったことのある人物は、いる?」
「何でそんなことを聞く?」
「いいから、答えて」
「いないな」
烏嶽は、不思議そうな顔であたしの質問に答えた。
この質問は、あたしの中でようやく絞れる一つのヒントになった。
(おそらくこの感じだと……今の選択肢の中で『梶原 龍馬』で間違いないと思う。
女っ気はないし、家族の線も薄い)
だけど、あたしはこんなに簡単でいいのかと思っていた。
あたしは、目の前の烏嶽を見ていた。
烏嶽は、なぜか眠そうに欠伸をしていた。
そんな中、視聴覚室のドアが再び開いた。




