010
烏嶽は、初めからあたしを揺さぶってきた。
最初の会話も、的確な揺さぶりだ。
あたしに対しての揺さぶり通りにいくのか、それとも違う攻め方をするのか。
強ばった顔のあたしは、固唾を飲んで見守っていた。
やがて、烏嶽は口を開いた。
「お前の名前は?」
「『天瀬 雪乃』」素早く反射的に答えた。
烏嶽は、そんなあたしをじっと見ていた。
穴が空くほど、ジロジロとあたしを見てくる。
同世代の男に普段余り熱心に見られることがないので、少し照れくさく感じてしまう。
年上の男にジロジロ見られるに、あたしは慣れていない。
「部活は?」
「ダンス部」
「得意教科は?」
「数学」
「苦手教科は?」
「英語」
「父親の具体的な会社で、取り扱っているモノは?」
いきなり、具体的な質問が飛んできた。
驚きを顔に出しそうになったが、なんとか冷静な顔を保っていた。
この烏嶽、あたしの答えを知っているのか。
だけど、烏嶽とは面識もないしまともに話すのも今日が初めてだ。
それでも、あたしには有名な姉の遥乃がいた。
学校でも有名人の遥乃を通して、あたしを知ることは難しくは無い。
必死に、冷静な顔であたしは前を向いていた。
「ノーコメント」拒否をした。
それでも烏嶽は、口を開いた。
どこか笑っているようで、余裕の雰囲気を漂わせていた。
「まあ、初めから決着はついていた。
お前が負けるのも、俺が勝つことも。
照美栖が『プロテクションカード』を選んだときに、俺の勝ちは既に決まっていた。
お前が選んだのは、こいつじゃないのか……『天瀬 智雄』だろ?」
いきなり、あたしの父親に答えがいき着いた。
最初の揺さぶり通り、あたしの両親に烏嶽が絞ってきた。
それでも、あたしは口を開いた。
「ハズレよ」緊張した顔で、あたしは言っていた。
「あ、そうか。じゃあつまり、こっちじゃ無ければ……」
「コールしたから、次のターンになる」言おうとする烏嶽を制した光山。
「分かったよ」
ブツブツと言いながら烏嶽は、渋々引き下がっていた。
だが、彼は既に勝ち誇った顔を見せていた。
間違いない、次はあの名前を予言通りに言ってくるだろう。
探りも入れずに、迷いも無くあたしの両親……母親の名前を狙ってくるのが分かってしまった。




