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ワルツ

「それは大変だったんだなお嬢さん」

「わしは弥助ってんだ、よろしくな」

老人が小屋の中で言った。春は小屋の中で毛布にくるまっていた。外は完全に陽が落ちていて、真っ暗だ。

「よろしくお願いします...私は...」

「凛、塩谷凛です」

春は嘘を吐いた、

「そうか、よろしくな」

「鏡崎春君」

老人が息をふぅっと吐く、春に強烈な眠気が襲いかかる。春は思わず眠ってしまう。

「まったく、先生も無茶を言う...」

老人はつけひげとマスクを取り、煙草に火をつけ

「一番老人の声が上手いから、など笑わせる」

煙をふうっと吐いて愚痴る。


「さて、運ぶか」

男性は春を担ぐ。

「よいしょ...最近の女子高生ってこんなに重いのか?」

男性はぼやいて走り出した。


「このペースで走れば昼には着くが...」

「そうもいかないようだな」

「止まれ、革命軍、伊藤修」

絵佐野が木の後ろから出てくる。伊藤は煙草を捨てる。絵佐野は腰からナイフを取る。ナイフには髑髏の模様が装飾が施されていて禍々しい。ナイフが妖しく光る。春の足を少し強く持った。このまま闘う訳にはいかない。どうする?

「悪趣味だな捜査官殿」

「単なる趣味だ反逆者が」

二人が笑顔で話す。

「でもどうする?こっちは丸腰だぞ?」

「そうか、貴様を捕まえるのが楽になるな」

「そうだな!」

伊藤は背を向けて逃げる。

「塊魔法 土戦車!」

足元が盛り上がり、戦車のようになる。戦車は伊藤を追いかける。

「ふん、なかなかやる」

伊藤は呆れたように言う。絵佐野はまっすぐに伊藤を見据えていた。だが伊藤はゆっくりと絵佐野との距離を長くしていく。そろそろ森を抜ける。絵佐野は焦り、速度を上げて来た。

「クソ...早いな...」

「でも」

伊藤は振り返り、春を向こう側に放り投げた。

「反逆者め、血迷ったか?」

絵佐野が春に向かって跳躍する。そして左手が春の足を掴む。

「人使いが荒い...」

突然目の前に黒い渦が生まれる。その奥に人の顔が見える。渦は春を吞みこんでいく、絵佐野は全力で足を引っ張る、だんだん春が絵佐野の方に引っ張られる。

「渡さない...渡さないぞ...!」

絵佐野が決死の覚悟で春を掴む、伊藤は無言で脇差を構える。

「無駄だ」

伊藤は無言で絵佐野の右腕を切断した。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaあああああああああッ!腕が!ううでがああああああああああああああああああああ!」

絵佐野が腕を抑えて跳ね回る。その顔は涙と土で顔がぐしょぐしょになっている。血がその軌跡を示すかのように辺りを紅く染め上げる。

「撤退するぞ」

そう言って伊藤は黒い渦の中に消えていった。絵佐野はいまだ跳ね回っていた。


「ああ、痛い痛い痛い痛い」

絵佐野はぶつぶつと呟く。血も絶え間なく流れ続けている。

「うう、助けて」

右手の断面から血に混じって黒い液体が出る。液体がゆっくりと傷を塞いでいく。そして痛みを消していく。

「莉緒様」

黒い液体が右手の形に変形する。絵佐野は右手を動かして右手の感触を確かめる。


「”傀儡”の奴が失敗しました。」

「現在鏡崎は革命軍の手に渡った模様」

「いかがなさいますか?莉緒殿」

暗い部屋の中で二人、男性と女性が向き合って話している。

女性―――莉緒は紅茶を飲みながら優雅にくつろいでいる。

「そうね、傀儡への干渉率を上げる必要があるわね」

「まあしばらくは様子を見ましょう」

優雅で無慈悲な時間が流れた。

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