Arrival
「っ!」
絵佐野は急いで莉緒から急いで飛び退いた。分身は黒い槍のようなものが大量に刺さって動かなくなっていた。あれが自分だったらと思うとぞっとする。辺りの闇が異常に濃くなっている。視界は確保できるが、不安だ。莉緒は首の骨を鳴らしながらへらへら笑っている。血はとどめなく流れ、足元を紅く彩っている。
「ふふふ...」
莉緒が眼を瞑り合掌する。無造作に垂らされた足元の血が禍々しい魔法陣を形成する。
「遊びは終わりよ」
「 スピアダンスフロア 」
魔法を詠唱した莉緒が眼を開け、双眸が絵佐野を捉える。足元が光る、絵佐野は走り出す、そのすぐ後に足元に槍が突き出してくる。足元だけでなく、周りのあらゆる場所から槍が突き出している。絵佐野は走って莉緒に駆け寄る。槍が背後から迫ってくるが、自分を貫くには程遠い速度だ。
「そんなんじゃ俺を貫けない」
莉緒が中指を立てる、莉緒の頭上に巨大な槍が生まれる。絵佐野は迫る槍をスライディングで避ける。
「塊魔法 岩石封印」
莉緒の周りの土が盛り上がり、莉緒の周りをまるで箱のように埋める。そして莉緒を押しつぶした。土が蠢く、莉緒の形が失われていく。土が地面に帰る、莉緒だったものが地面に落ちる。
「死んだか?」
絵佐野が莉緒の亡骸に駆け寄る。頭と両腕はあらぬ方向に曲がり、右足は途中でちぎれている。瞳は開いたままだが舌がだらんと垂れている。間違いなく死んでいる。だが、一つだけ腑に落ちない点があった。
「血が出ていない...」
肉塊のどこにも血液が付着していない。ただ、黒い水が出続けている。水が辺りを浸食する、絵佐野は急いで離れる。
「なんだこれは...!」
「どうした、絵佐野君」
莉緒が起き上がる、頭と腕の向きが不快な音を立てながら元に戻り、右足が生えた。そして新しい右足で一歩踏み出す。絵佐野はナイフを構える。何なんだ何なんだこいつ。
「言っただろう」
「遊 び は 終 わ り だ と 」
莉緒が絵佐野に駆け寄る。絵佐野はナイフを突き出す、莉緒はそれに腕を伸ばす。ナイフが莉緒の中指に突き刺さる、中指が二つに分かれ中から鮮血が吹き出る。莉緒が声を上げて笑う。絵佐野は構わずナイフを突き刺す。
「闇魔法 餓狼拳」
二つに別れた中指の皮が肥大化し、狼の顔のようになる。絵佐野が手を引っ込めるより早く狼が絵佐野の左手に食らいつく。
「ぐおおおおおおおおおおっ!」
絵佐野が呻く、だが莉緒はそれよりも大きな声で笑う。
「あははははははははははははははは!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
狼が左手を食い千切る。絵佐野が左手を抑えて叫びながらごろごろと転がる。痛い痛いイタイイタイ...左手があったところから間欠泉のように血が出てくる。莉緒は笑顔で絵佐野に近づき、座り込む。中指の傷は完治したようだった。
「さあ、次は何を―――――――――――――――――」
「死ねッ!」
絵佐野は右手でその辺りにあった枝を持って莉緒の左目を突き刺す。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね――――――――――――――――――――」
枝で顔中を滅多刺しにする。顔中が真っ赤に染まる。絵佐野は怨嗟を吐き続ける。そして、最後にとどめと言わんばかりに額に思い切り突き刺した。
息が切れる、興奮しているのか腕の痛みはもうない。
「ははは、やってやったぜ」
絵佐野は座り込んでため息をつく。
「ねぇねぇ」
莉緒が喋る
莉緒が肉薄する
「次は何をするの?刺すの?殴るの?燃やすの?撃つの?蹴るの?叩くの?千切るの?捨てるの?踏むの?罵るの?嬲るの?食べるの?噛むの?斬るの?嗤うの?詰るの?犯すの?泣かすの?虐めるの?無視するの?捩じるの?折るの?抜くの?」
「ねえ、次は何?」
絵佐野は後ずさりをして必死に逃げる。莉緒は這いながら近づいてくる。顔の血が莉緒の道筋を紅く照らす。顔の傷もゆっくりと塞がっている。
「何もなさそうね」
莉緒が冷たく言い放った。莉緒は絵佐野の頭をがっちりと両手で掴み口を開ける。絵佐野は気絶してしまっていた。
口から黒い水が大量に出てくる。水は絵佐野の鼻から入り、全身を満たしていく。
何もないなら私が何かをつくってあげる
莉緒は静かにその場を去った。
暫くたって、絵佐野は目覚めた。




