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ワタリドリ

「うっ」

春はギリギリで避ける、絵佐野が向こう側に吹き飛ぶ。そして地面に着地する。

「あら外した。でもこれはどう?」

くるりと回って黒スーツが呟いて戻ってくる。春は硝子を飛ばす、絵佐野は猛獣のような四足歩行で近づいてくる。しかも全ての硝子を避けながら。もう遊ぶ気はないんだろう。速度はさっきよりも速い。次はどうしよう、多分避けられない。春は硝子を体に纏わせる。正面から勝負だ、

「今度は避けらないよ、春ちゃん♥」

絵佐野が恐ろしい速度で腕を春の腹に向かって伸ばす。貫くつもりなのだろう。見える、春はそれを躱して、思い切りボディブローを絵佐野に決める。パンチは少し自信がある。絵佐野の顔からうめき声が漏れる、苦しみなのか快感なのかは分からない。だが少し絵佐野が後ろに下がった。春は全力で前蹴りを放つ、絵佐野は吹き飛ばされる。そしてふらふらと立ち上がり、咳き込む。間違いない、効いている。

「さすがあいつの娘...凄い反応だ」

「でもあいつほど強くない」

絵佐野はそう言って立ち上がり、指を鳴らす。

「 塊魔法 愚者の塔」

地面から巨大な塔が生えてくる。塔というより柱?その灰色の柱には巨大な髑髏の模様が描かれている。模様はまだしも視界が遮られる、このままじゃまずい。おまけに霧まで出て来た。

「さすがの君でもこれは無理だろう」

声が聞こえる。でも足音が聞こえない。どこだ、どこからくる。霧のおかげで三歩先も見えない。目の前は白、ただ白。向こうも後ろも一切見えない。

「こっちだよ」

来ない、正面から来る。

「気付いてたか」

絵佐野が襲ってくる。魔法の副作用だろうか、両目がそれぞれの眼の色に発光している。おかげで位置が何となく分かる。また手を突き出してくる。春はサイドステップで横に回る。絵佐野は動かずじっとこちらを見ている。何がしたいのだろうか。

「!?」

何かに躓いた、足元に小さな直方体の突起がある。絵佐野が小さく笑う。あいつがやったのか、すぐに体制を立て直す。?、黒スーツが居ない。

「ばあ」

絵佐野は音もなく正面に現れる。この霧の中はっきりと視認できるほどの近さまで一瞬で移動してきた。まさに目と鼻の先。春は驚き、硬直してしまう。絵佐野が手を首に這わせて来る。動けば殺される。小説とかでよく見る、絶望的な敵と対峙した主人公。今ならその気持ちがわかる。絵佐野の顔が近づいてくる、底が見えない不気味な顔だ。この異常者のことだキスでもするのだろうか、嫌だ嫌だ穢らわしい。笑いが薄く貼りついた顔が、また更に笑いに歪む。春は恐怖から眼を閉じる。絵佐野は何故か一瞬手を離す。そして春の左眼を無理やりこじ開けた。左の視界に気持ち悪い絵佐野の顔が映る。美しいはずのオッドアイも汚らわしく見える。春は驚いて両目を開けてしまう。視界にはさらに口を歪ませた。絵佐野がアップで写っていた。気持ち悪い

「春ちゃん、いいもの見せてあげるよ」


「お断りします」

春はぴしゃりと言い放ち、バックステップで自分の得意な距離を取る。絵佐野は残念そうな表情を浮かべる。小さな子どものようだ、春はふと思った。

「つれないのもあいつ譲りか」

哀しそうに俯いて絵佐野が呟く。そしてすぐに顔を上げる。

「霧魔法 解除」

霧が晴れる。周りには草原と生やした塔が生えていた。そして春から少し離れたところに絵佐野が立っている。絵佐野のオッドアイの光は消えていた。霧が出ているときだけ光るのか?絵佐野が深呼吸し、眉間にしわをよせて春を見る。さっきまでの視線には愛玩動物を見るときのような、独占的な感情。いや、優しさのようなものがあった。でも今は...まるでゴミでも見るかのような冷たく無関心な視線。それに合わせて顔も冷たくなる。先ほどの明るさからは想像もできないほど冷たい表情になる。

「春ちゃん、君との戦いごっこ楽しかった」

「でも、もう終わり」

この声にも喜怒哀楽、感情が全くこもっていない。まるで機械みたいだ。これが、テロリストか。恐らくこいつは目的の為なら人を何人でも殺すし、その他目的を阻害するものは絶対に排除しつくすだろう。そう思わせるほどの冷たさがそこにはあった。絵佐野の眉間のしわが消える。春は足の間隔を肩幅くらいの広さにして身構える。

「そんなに身構えても結果は同じ」

絵佐野が冷たい言葉をかけた。春は無視した。一筋の風が通り抜けた。

「 塊魔法 憤怒の棘」

絵佐野が詠唱する。絵佐野の足元から灰色の棘...いや何かの尻尾のようなものが出てくる。それは絵佐野の足元をどんどん満たしていく。そしてうねり、せり上がっていく。棘が波のようになり、絵佐野はその上に腕を組んで立っていた。棘はそれだけにとどまらず、絵佐野の周りに群がっていく。春はじりじりと後ろに下がる。絵佐野は左手を春に向ける。そして、指を鳴らす。

「行け」

声と共に異形の行進が始まった。春は背を向けて走って逃げた。

「逃がさんぞ、鏡崎」

棘が迫ってくる。春は背中に魔力を集中させる、よし羽は動く。春は低空飛行しながら逃げる。だが向こうのスピードも上がる。このままじゃすぐに追いつかれる。どこか逃げる所...正面に林が見える。あの移動方法では木々の中を満足に動けないだろう。春はスピードを上げる、絵佐野も速度を上げる。だがすぐに速度を落とす。春は木々の隙間を縫うように素早く林に入り込む。絵佐野は棘の波から降り、走って追いかけてくる。春は何度も方向転換をする。絵佐野もそれに合わせて曲がる、だがどうしても反応が少し遅れる。森の中は薄暗く、おまけに春の着ている服が黒っぽいのもあってすぐに見失ってしまう。春は撒いたのを確認して木の後ろに隠れる。かなり距離は離せただろう。春はほっと一息つく。そして木の傍にそっと座り込む。あいつは一体何なんだ、春に疑問が沸く。お母さんと知り合いっぽいが本当にあんな危険な男が蓮千亭の人間なのか、仮にそうだったとして目的は一体何。そして、

ここはどこ?

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