邂逅
私の声が変えられる前にあなたに話したい。
「うおっ」
新沢は間抜けな声を出す。上から水滴が落ちてきた、しかもそれは新沢の肩に直撃した。新沢は驚いて後ろを向く。そのおかげであることに気づくことが出来た。上から何か降ってくる、新沢はしゃがんでそれを回避する。何かは新沢の反対側、前側に着地した。影はレイピアのようなものを持っていて、明らかに殺意がある。新沢は身構える、影がこちらを見る。顔は暗くてよく見えないが、首には真紅のペンダントが輝いていた。あのペンダント...ムカデ騒動のときに襲ってきた奴らがつけていた、となるとこいつは...
「外れ...あと一秒速かったら殺せたな」
敵。
「お前誰だ」
「さあ、誰だろうな」
人影が襲いかかってくる、新沢は剣を魔法で作り人影の斬撃を止める。顔は見えたが仮面を被っており誰か分からない。声も聞いたことのない声だ。仮面男はまた斬りかかる、新沢はそれを止める。強い、動きも早く力も強い。
「ふむ...強いな」
仮面男が喋る。新沢は意に介さず攻撃を続ける。仮面男はそれを平然といなす、おいおい本気だぞこれ。新沢は心の中で毒づく。仮面男は素早く、色々な方向から攻撃をしかけてくる。新沢は何とか防ぐ、新沢がぐらつく。仮面男はその隙を突いて蹴りを放つ。新沢は横の壁にぶち当たる。咳き込んで壁にだらんともたれかかる。勝てないかもしれない。そんなネガティブな考えが頭をよぎる。いや一瞬戦っただけでそんなの分かるわけない、新沢は心を持ち直した。
「鍾乳の錐」
横の壁から石の棘が生える、新沢は間一髪避ける。新沢は剣を構える。だが、それよりも速く男は前進し
「チェックメイト」
男は剣を新沢に突き刺した。血が滴り落ちる。男は素早く剣を抜く。いたい、熱い何かが腹を這う感覚が伝わる。前を見る、仮面男がまた斬撃の体制にはいっていた、ころされる、新沢も男に斬りかかる。男は剣を横に振る、新沢の剣が弾き飛ばされる。あ、終わっ――――――――――――――
た。新沢の体に紅い線が一つ作られた。それは美しい真紅に彩られていた。
「だんまりかぁ...」
翡翠が悲しそうに言う。春は何も言えなかった、突然の告白に対応が出来なかった。こんな化け物を虐めることができるような奴がこの世界に居るのか。この人の言うことは当たっている、私は以前虐められていた。でもそれをこんな人間のことを舐め腐っているような奴に知られたくない。春は再度無視した。翡翠が顔を覗き込んでくる。その眼は翡翠にあるまじき真剣なものだった。
「私に知られたくないんでしょ?」
見透かされていた、眼を背けたのだから当然か。
「じゃあ、ここからは私の単なる独り言として聞いてね」
「はは...痛いな...」
新沢は血を吐いて笑ってみせる、単なる強がりだ。仮面男は刀を握りなおす。やばいかも。
「そうか、なら死――――――」
「ね」
銃声が響いた。新沢は銃を魔法で作り、それを発砲していた。仮面男の腹に紅い穴ができる。図ったか、仮面男もさすがによろめく。その隙を狙い、新沢は仮面男を蹴る。だが、仮面男は即座にそれに反応し蹴りを剣の腹で止める。新沢は急いで足を離し、仮面男から離れる。仮面男は新沢に近づく、新沢はそれに一瞬遅れて反応する。男が手を伸ばし銃を奪い、捨てる。そして腹に手を勢いよく近づけていく。
「鍾乳爪」
巨大な棘が新沢の腹を貫いた。新沢は血を噴く、噴水のように。仮面男の白い服にそれがついた。新沢は倒れる、血が流れ過ぎたのか意識が朦朧としてきた。ここで死ぬのかな、新沢は思った。いやだ、魔法で銃を作り発砲する。死が近づき耳まで遠くなったのか銃声がひどくくぐもって聞こえる。だが銃弾は明後日の方向に飛んでいった。仮面男は着弾点を見る、壁に穴が空いていた。仮面男は視界を戻し、血塗れの新沢を見据える。新沢は仮面男を睨みつける、だがそんなものは何の解決にもなりはしない。そして剣を握りしめ、新沢に振り下ろす。ああ、死ぬ。新沢の頭はそれだけになった。最後にに見たのは下ろされる白濁とした色の剣が
吹き飛ばされ
る、瞬間だった。
「お前...誰だ」
「僕かい?僕は単なるビデオゲームナードさ、そして」
「こいつの保護者だ」
玲がそこに立っていた。
忙しくなりました。




