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消失点

二人で

「ここ貴女の部屋。通信使えない。隣、私の部屋、騒ぐな殺す。トイレはそこ。入浴等は私に任せろ。以上」

翡翠がロボットのような口調で言った。春はそれに何か反応しようとしたが止めた、機嫌が悪くなって痛めつけられるかもしれない。今のところ春は翡翠の事を身勝手なサディストと決めつけていた。翡翠は扉を開け、春を中に突き飛ばす。顔は見えなかったがどうせ笑っているんだろう。ベッドがクッションになり痛くはなかった。翡翠はすぐに扉を閉めた。そしてすぐ隣の扉の開閉の音がした。少し遅れてボフッと間抜けな音がした。

春は部屋を探索してみる。何か役に立つものはないだろうか...部屋にはベッドとテレビ、そして大量の本がある本棚に何かよく分からないケースのようなものに埋もれた机がある。春はまず机を調べる。そこには案の定大量の映画のDVDが置いてあった。乱雑に散らかったケースを春は横に避け、引き出しを見る。中にはノートが入っている。普通のどこにでも売っているノートだった。春はそれを開く、開いたページには何も書かれていなかった。魔力で何か隠されていないか念のため確認する。何もない、ページをぱらぱらとめくってみる。使い込まれているのか、ページをめくる音が乾いている。厚さはそれほどではなく、どちらかと言えば薄いのですぐに最終頁にたどり着く。最後のページも記し合わせたように白紙。春はノートを閉じて、ベッドに座る。これからどうなるんだろうか、いろんな物語を見てきたが、どれも餌役にされる人物は悲惨な目に合う。悲惨な目に合わないことももちろんあるが、それは救出役が強かった時だけだ。この基地に居るのは敵の中でも精鋭だろう。そもそも敵とは何なのだろうか、私はただ生きていただけだ。何も悪いことはしていない、兄は何かしたのだろうか。



「中にも何も無いねぇ」

新沢は言った、随分と歩き回ったが人っ子一人居ない。そして後ろを向く。誰も居ない、津田も居なくなっていた。さっきまで居たのに。新沢は不安になって周りを見る、幽霊的な何かが来たのかもしれない。勝手に入ってきた自分たちを制裁するために。少し怖い、そんな新沢に影が迫る。



春はすることもなく映画を見ていた。何もしないでいると不安になる、自分の死のことを考えてしまうのだ。できるだけそんなことは考えないようにしたい。また映画に集中する、今は主演の筋肉質な俳優がマシンガンをぶっ放しているシーンだった。銃を見るとあの惨状、電車の中のことを思い出してしまうが自分の死を考えるよりかはましだ。人間は自分が一番大切なんだから。そんなことが頭をよぎった。春はまた映画に集中し始めた。テレビは英雄の雄姿を未だ映していた。しばらくして映画が終わる。ああ、鬱だ。春は詰んでいた。映画が終わり、また現実に引き戻される。もう映画を見る気にもなれない。


「入浴の時間だ、出ろ」

有川が扉を開け春に言った。春はベッドに寝転んで読書をしていた。有川の事は完全に無視していた。有川は顔をしかめる。

「こらこら、見ず知らずの男に風呂入れなんて言われてホイホイついていく女なんていないでしょ」

翡翠が頭を掻きながら入ってくる。春はまだ本を読んでいた、翡翠はそこに行く。有川はさっさとどこかへ行ってしまった。翡翠は春に無防備に近づく、春は一瞬翡翠を見てまた視線を本に戻した。

「頑固だね~春ちゃん。取って食おうってわけじゃないんだからおいでよ」

翡翠は春の本をスッと取り上げる、春は翡翠を見上げる。とても悲しげな顔をしていた。翡翠の顔が一瞬ひきつる、だがすぐに薄ら笑いが戻る。

「不潔は嫌でしょう?」

「全然」

春が小さな声で返す。

「あっそ、私は嫌」

翡翠は春を担いで無理やり外に出る。春は特に抵抗しなかった。


春は巨大な浴槽に浸かっていた。風呂は温かいが心は冷たい。横では翡翠がご機嫌そうに鼻唄を歌っていた。聞いたことが無い音楽だ、自分で作ったのだろうか。春は少し疑問に思う。鼻唄くらい誰でも作れるか...春は思った。てか近い、翡翠は春のすぐ隣まで近づいていた。もし私の気が少し狂えば、翡翠の頭を今すぐにでも水の中にぶち込むだろう。実力差を抜きにしてそれが出来るほどの距離まで翡翠は迫っていた。翡翠が何を考えているか分からない、春は翡翠を見据える。何をしてくるのか分からない。翡翠は眼を逸らす、そして背中を向ける。鼻唄はいつの間にか終わっていた。翡翠は頭の上のタオルを洗面器の中に置いた。洗面器は新たな重量が加わったことによりふらふらしていた。それを翡翠は倒さないように、支えていた。この人がよく分からない、初対面は腹を殴られたところからだ。そして春に近づいてきた。

「一つ聞いていいかな?春ちゃん」

翡翠は春に声をかける。春は無視する。答えても答えなくても結果は同じだ。

「春ちゃんってさ―――――――――」

一気に二つの感情が生まれた、まずは

「虐められてたでしょ?」

怒り、過去の傷をほじくり返される....怒り

「私と同じで」

もう一つは驚きだった。

5話が欠けているので近いうちに修正します。申し訳ございません

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