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002 出会い 1

残酷描写あり。

注意してください。

 視界が暗闇から開け、俺は痛む後頭部を摩りながら上半身を起こす。

 どうやら気絶していたらしく意識がぼんやりとするな~と苦笑を浮かべて立ち上がる。

 後頭部がズキズキと痛いことから転んだと思うのだが、そんな姿を他人が見ていたらと思うと恥ずかしくてキョロキョロと周りを見回してみる。

 だが、見渡した周りには人影ない。

 それどころか、建物すら無くうっそうと茂る木々が目に入り俺は唖然と口をあけて固まってしまう。


「何処だここ?」


 痛いとは思うがついつい独り言を口にして、自分の混乱した思考を正気に戻すようにする。

 だってそうしないと状況に付いていけないと思ったからだ。


「人はいない、建物も無い、部屋でもない。なのに木があって暗くて…森の中??で、俺の頭は痛いと言うことは拉致??」


 現状を口にすると、以外にも思考が纏まる事に凄いと感心しながらも、さらに謎が深まったことに溜め息をつく。


「えっと、見張りもいない。心当たりも無い。本当になんだこれ?」


 多少はラノベも読んでいる俺には『異世界召還』か!と妄想を思いもしたが、神様にも会っていないし死んだ記憶も無い。

 だから異世界などと非現実的な妄想は頭の片隅に追いやり、現実的な思考をめぐらせる。

 やはり誰かに襲われて、知らない場所に放置されたほうが現実味があるな、っと悲しい気持ちになってもう一度何か無いか手がかりを求めて周りを注意深く見ることにした。


 落ち着いてはいないが、冷静になるよう心がけて周りを見れば、新たな発見があるもので。

 よくよく見ると、俺の周りには壊れた何かが散乱している。

 壊れた何かを手に取り見ると、どうやら木の破片らしい。

 手に取ったそれをクルクルと回しながら、辺りに同じものが散乱している事に気づく。

 しかもその原因となるものまで見つけることが出来た。


「馬車?」


 そう、映画や漫画でしか見ることが無い馬車があった。

 馬はいないがそれらしい器具があり、幌もところどころ破けてはいるが馬車以外に言いようの無いものが壊れて放置されている。

 馬車は数台に及んでいて、大破したものからそのまま残っているものもある。


「なんで森に馬車があって、俺はここにいるんだ?」


 さらに謎が深まり困惑する。

 でも、馬車があり壊れているということは少なくとも人がいる可能性があることに気づき、俺はどうにかコンタクトを取ろうと大声を上げかけてその存在に気がついた。


「お、なんだあの光」


 真っ暗と思っていた森の中で、馬車に隠れて見えなかった光源があることに気がついた。

 うっすらと明るいそれは赤く輝いていることから焚き火と思わしき感じがする。


「もしかして誰か避難しているのかもしれない」


 壊れた馬車に森の中、といえば遭難と考え避難した人が焚き火を炊いて暖を取りながら救助を待っているかもしれない!

 そう思ったら人恋しくて溜まらず、俺は光のほうへ歩き始めた。


 しばらく歩くと、光も強くなり喧騒も聞こえるようになる。

 ただ、どうも様子がおかしいことは感じられる。

 聞こえる声が『ブヒブヒ』とか『ブヒヒ』、それ以外は『あ、あああ』とか『はひぃ~~』とかなんというかM男と女性がいたしているような嬌声にしか聞こえないのだ。


 あまりの展開についつい近寄る俺の歩調は抜き足差し足になり、息を潜めゆっくりと光へと近づく形になったのは仕方が無いことだと思う。

 段々、段々近づくにつれ嬌声以外にも変な音が聞こえるようになってきた。

 『ブチュ!』とか『クチャクチャ』とか租借する音も聞こえ出す。

 しかも何か得体の知れない生臭い匂いまで漂いだしている。

 頭に響く警告音がピーピー五月蝿く聞こえるほどに、やばさが増しているにもかかわらず、俺は歩みを止めることができなかった。

 人ってダメだと思えば思うほど、その何かに惹きつけられてしまうのだと思う。

 この時の俺は、自身の身に何が起こったかわからない状況に加え如何にも危ない現場に足を踏み入れたことで狂っていたのかもしれない。


 ゆっくりと近づき、やっとその何か行われている現場を目にしたとき、俺は後先など何も考える暇もなく嘔吐した。

 胃が締め付けられ、中にあったものを容赦なく吐き出させる。

 無くなっても尚吐き出す行動を止めることも無く、嘔吐えずき四つん這いになる俺。

 そんな俺を何十にもなる視線が突き刺すように見つめていた。

 吐瀉物にまみれ嘔吐く俺を見つめる視線の先には、俺が知るどんな生物にも該当しない化け物がいた。


 化け物たちは全員筋骨隆々とした体を持ち、腹は大きく太っている。

 背丈も大きく2mはあるだろうか、その巨体に見える肌は白からピンクにかけた綺麗な肌色をしている。

 座った姿勢でいながらも見上げる感じなのだから相当大きいのだろう。

 そして顔は…


「豚?」


 そう、言ってしまって口をつむぐ。

 そう、どう見ても豚の頭をした化け物なのだ。

 その豚が、何かを抱えて腰を振り口に含んでモシャモシャと租借しているのである。

 俺の言葉に反応して眉尻をピクリと持ち上げた化け物は、しばらく俺を観察した後に興味を失ったといわんばかりに今までしていた行為に再度没頭し始める。


 その行為を見て、俺は再度嘔吐く。

 だって、豚の化け物が人間の女性を犯しながら食べているのだ。

 犯されている女性たちは、皆一様に恍惚として喜びの声を上げている。

 食われているのにだ!


 肩から、腹から血を流し肉が裂けても豚の化け物に犯されて嬌声を上げ、口から血と唾液を垂らし幸せそうに虚空を見つめている。

 人間の男性は焚き火の近くに串刺しにされ、丸焼きとなっている。

 豚の化け物は犯している女性が死ぬと、興味ないとばかりに焚き火に放り込み、焼けた男性の身を裂いて口直しのとばかりに租借し満足げに笑っている。


 それはもう地獄絵図のような光景だった。

 俺が何でここにいるのかとか、何でこんな光景に出くわしたのかと、もうどうでもいいようになる。

 ただ、嘔吐きガクガクと膝を震わせ、この参上に目を釘付けにされている。


 俺もこの光景の一部になるのかと恐怖すれども体は動かない。

 それほどまでに恐怖に打ちひしがれ心が萎縮して身動きが取れないでいた。

 すると、男性を食い散らしたであろう豚の化け物の一人が、立ち上がり俺に向かって近寄ってくる。

 ドシンドシンと響くような重々しい足音に、俺は観念した様にうな垂れただ死を覚悟していると。

 不意に声がかかる。


「オマエ…クウ…コッチ」


 ああ、そうかとガックリとする俺の体を立たせ、豚の化け物はグイグイと力任せに引っ張り焚き火の向こうに連れて行く。

 せめて一思いに殺してくれと、うな垂れながら引きずられていると、目の前に大きな檻が目に入る。


「サア…エラベ。トクベツ…クエ…ゲンキ…デル」


 何のことかと顔を上げると、俺に向かって笑顔を振りまく豚の化け物。

 その笑顔が怖いのだけど、どうも強制とか罰とかさげすみとかは感じられない。

 本当に元気出せという気持ちが伝わるのだ。

 怖いけど…


「アレ…イイ。ニク…ヤワラカソウ」


 話しかけてくる豚の化け物が指差す先には、恐怖に顔を引きつらせ檻の片隅に膝を抱えて震える女性達がいた。

 大人が3人に子供が2人の合計で5人いる。

 子供にいたっては小便を漏らし呆けた顔になって目には力が無い。

 大人の女性は、自身の末路を憂いてか意味の解らない言葉をブツブツと言っている。


「エラベ…ナクナルゾ」


 急かす様に俺の背を押す豚の化け物。

 俺はもう、何がなにやらわからないままその場に硬直したままだ。

 背を押されてもトトっと2歩ほど進むだけで立ち止まる。

 

「オマエ…マツ…アキタ。オレ…サキイク」


 はあ!?

 今来たのにもう飽きたのか!?

 と思わず振り向くと、豚の化け物はニヤリと口角を上げ檻の中に入り2人の子供を抱え上げる。

 抱えられた少女達はなすがままに身を任せ、力なくダラリと豚の化け物に連れられ檻から出てきた。


「アト…スキニシロ」


 最後にそういって豚の化け物は俺の横を通り過ぎようとする。

 俺はただ、何もできずにその様子を見ていたが、ふと抱えられた少女の一人と目が合う。

 力なく表情すらも無いその目が、俺を見た一瞬に感情を取り戻す。

 悲しみと悲哀にくれ、それでも生きたいと思う叫びが俺の中に響いてくる。

 目を逸らすことができなかった。

 少女の目から涙が落ち、必死に哀願する視線を俺に投げかけて口ずさむ言葉が聞こえたように思えたからだ。


「○●※△」


 聞こえる言葉は理解できないが、それでも意味は伝わる。

 『助けて』そう聞こえたと俺には感じた。

 だから俺は、この光景や俺自身の境遇など忘れて行動を起こす。


 だって、こんな少女がこの後起こる惨劇に見舞われることが許せるだろうか?

 俺はどんなに惨めで情けなくてもいい。

 だけど未来ある子供があんな目をしていいわけが無い。

 例え俺が死ぬとしても。


 だから俺は行動する。

 さっきまでの気弱さなど忘れたように冷静にそして獰猛にだ。

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