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新武将・芋粥秀政  作者: 得生
第十二章 伊勢太守編(秀政胃痛編)

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第百九十五話 戦国狙撃

鬼兵たちは早速と迷彩を作ろうとして、

帳から去ろうとする。


秀政はなぜか一抹の不安が胸から離れない。


(俺は何か見落としていないか?

 いや、大丈夫なはずだ。これには近代の狙撃技術を詰め込んだはずだ。


 だがな、これは火縄銃。

 スナイパーライフルによる狙撃ではないんだ……)


「待て!」


秀政が立ち去ろうとする鬼たちを呼び止める。


まだ考えがまとまっていない。

だが見落としがある。それには気づいた。


火縄銃はスナイパーライフルと違って、

射程が短く、音がする。煙も出す。


つまりは撃った瞬間に所在が敵にも伝わる。


(この戦術で十分なのか?)


「雫、今、話を聞いて新しい狙撃を覚えただろう。

 それまでの鉄砲による狙撃とはどうやっていた?」


「狙撃ですか?そうですね。

 草木や土手などに隠れて狙います。


 そして放つ。


 ずどぉぉぉん!


 すぐに一目散に逃げだして隠れます。

 だから寝そべって撃つなんて逃げ遅れそうです」


(そうか!やはりそうか!)


「雑賀も同様だな?」


「はい、移動するのは常識です。

 撃った途端に敵にも知られますから。

 どこから狙われるか分かりませんし」


「ふははは」


急に秀政が笑い出す。


(それだな。

 ライフルは無煙火薬だ。

 サプレッサーもある。弾速も速く射程も長い。

 つまり現代の狙撃は位置バレしない。

 動く必要がない。むしろ動かない方が安全。


 これは戦国狙撃にとって非常識なのだ)


「どうかなさいましたか?」


「いや、すまぬ。もう一手思いついた。

 皆、聞け。


 鉄砲を撃ちあった場合、雑賀は隠れて別の場所に移動する。

 煙と音で場所が知れるからな。

 他の射手が援護して補完し合うにしても、

 移動しなければ、次に撃たれる。


 だが、お前達は撃った後も移動するな」


「ですが、煙と音で場所が分かるのは我らも同じです」


「そうだ。だから雑賀はお前達が撃った後、

 移動すると考える。それが常識だからだ。


 だからこそ、他の雑賀射手はお前達が移動するのをじっと見極めるだろう。


 だがな、お前達は移動しないのだ。

 どうせ迷彩で見えぬからだ。


 煙は見えるが人の移動がない。

 雑賀は混乱するだろう。


 移動していないにしては人の気配が見えぬ。


 護衛役が隠れながら石を別の方向に投げ込むのもありだな。

 音と砂埃で視線を揺らして、そちらに移動したと誤認させる。


 逆にこちらは隠れながら観察手が敵の移動先まで見据えているのだ。


 敵の位置は知れて、こちらの位置は隠れたまま。

 圧倒的に我らが有利になろう。


 無論ずっと同じ場所に居続けてはいつかは撃たれる。

 二発撃てば、間をずらして匍匐でその場所からは少しだけ移動せよ。

 相手に分からぬようにな」


「なるほど、こちらは幽霊にでもなったようですね。

 姿は見えぬのに鉄砲は放たれる……」


「そうだ。迷彩を着ていれば、動かぬ方が逆に見つからぬ。

 前日に潜んだ後、試しにお互いで探しあってみよ。

 きっと見つけることはできんぞ。それがその迷彩の力よ」


(現代狙撃と戦国狙撃のハイブリッドだ。

 動くはずのものが動かぬ。

 それだけで頭が混乱するだろう)


「念入りに準備しろ、迷彩の出来で生死が分かれるぞ。

 戦場というのは、常識に囚われた者が負けるのだ」


そしてもう一つ策が浮かぶ。


(常識か……もう一つ非常識な手をあるな)


「あとな、これは酷な話ではあるが、生餌を使う。

 お前達は最初隠れているため、敵に存在は気付かれていない。


 その場合、雑賀にとっては何が一番脅威だと思う?」


「堺の鉄砲衆では?」


「そうだ、だから雑賀の最初の狙いはおそらく、

 堺鉄砲衆の伍長どもだ」


朧が表情だけは微笑んだまま、声音を落とす。


「味方の堺鉄砲衆を生餌とするのでしょうか?」


「生餌となるかは堺鉄砲衆次第だ。

 腕があればそう簡単には討たれまい。


 どうせ銭で人を殺す連中だ。

 自分が殺される覚悟もできているだろう。

 それに味方ではない。

 明日には銭を受け取ってお前たちを撃つ輩もいるかもしれん」


(どうせ保証金は信雄が払う。

 友軍を盾にする。

 非常識ではあるが、これも戦国の倣いだ)


「奴らには最初に雑賀の注意を引いてもらう。

 敵が放つ初発の煙を起点に、

 観察手は目を凝らして雑賀の初期位置を把握せよ。


 狙撃戦は先に相手を見出した者が圧倒的に有利なのだ。

 

 雑賀が堺鉄砲衆を狙って撃つと同時にこちらも雑賀を撃て。

 音が響いてしばらくはこちらの動きも分かるまい。


 それに撃たれた堺鉄砲衆は焦って撃ち返す。

 雑賀は堺鉄砲衆から身を隠すことを優先するしかなく、

 我らのことまで気を配れない。


 我らは観察手がその動き全てを余さず捉えておるがな。


 よいか!

 雑賀が堺鉄砲衆に気を向けている内になるべく多く討ち取るのだ」


霞が無表情のまま付け足した。


「補完し合える分、狙撃戦では味方の数が多い方が有利そうですね。

 最初になるべく多く削れば勝率が上がりそうです」


「そうだ。最初に言うぞ。

 俺はお前達を死なせたくない。

 一人たりとも傷つけたくないのだ」


死んでしまった白鬼の二人の顔が浮かぶ。

よく笑う娘たちだった。


「完勝する気で挑め!

 これ以上一人も死ぬな!」



二日後、鬼兵たちが配置につく。


それと同時に、織田信雄、芋粥秀政の生存の噂が各所に流された。


討ち取られたのは影武者。

傷一つなく健在。


ゆえに明日、木本砦の力攻めが再開される。


おそらく木本の様子を見るために待機していた雑賀衆にも噂が届くだろう。

鈴木佐太夫は今度こそ、信雄と秀政を討とうとする。


そして翌日を迎える。


林が率いる農兵千五百が早朝から木本砦への突撃を開始する。

どたどたと土煙を上げながら鉄巨人の林が槍をもって突っ込んだ。


ターン!


ターンターン!


噂は効いた。

早速、雑賀が戻ってきていた。


今度は確実に林に当てる。

だが真正面から受けなければ、プレートアーマーは鉄砲弾を流し飛ばす。


当たる度に衝撃が走る。


「うぬぅ!痛えぇ!!覚えておれ、雑賀め!

 木本を捻り潰したら、この南蛮具足を着こんだ俺の蹴りで踏み潰してくれる!」


鉄砲弾に当たりながらも突き進む。

さすがにこれには木本衆も度肝を抜かれた。



本陣前の堺衆も予想通りの展開となった。


タターン。

ターン。


タタターンターン。

タタタターン。


一斉に林に隠れた雑賀が鉄砲を放つ。

奇襲だ。

堺鉄砲衆の多くの隊長格が一度に撃ち抜かれて次々と倒れ伏す。


慌てて音がする方に堺鉄砲衆も反撃する。


だが、その頃には小さな影が隠れるように移動したあとで当たらない。


しかしその動きをしっかりと見つめている者達がいた。


鬼兵観察手だ。


遠眼鏡で追う。

雑賀衆が再び隠れて、堺鉄砲衆を狙う。


観察手が的確に相手の位置を射手へ伝えた。


タタターン。

タターン。

ターンターンターン。


雑賀衆が放つと同時に、鬼兵射撃手も放つ。


堺鉄砲衆と雑賀衆が同時に血を吹き飛ばしながら倒れた。


「な、何が起きた!?」


鈴木佐太夫に初めて焦りの色が見えた。

あとがき


汚れた白鬼たちです

挿絵(By みてみん)


そして愛すべき馬鹿、林です

挿絵(By みてみん)


そのご尊顔。こんなガタイをしていますが、心は大型犬の忠犬そのもの。

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
のち芋粥からの勧めで甲冑を黒く染めた部隊を指揮し、信雄方の先鋒衆を務める。敵の計略によくかかり敗北することも度々あるが負け戦でも何故か敵将も討ち取るなどの活躍したとされ、のちに黒色槍騎兵隊を結成したと…
生き残ったら万石家老くらいには成れるんじゃね?鎧は家宝で後の世には重文クラスで、ゲームに引っ張りだこかな。重いけど耐物理、いや常時狂化かな(笑)ただ問題は鎧が着れないと家督つげないなイメージついて、歴…
愛すべきバカ…良きっ!(笑)
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