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新武将・芋粥秀政  作者: 得生
第十一章 伊勢太守編(長政飛躍編)

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184/248

第百八十話 帰還の代償

大聖寺城砲撃戦を前にして、芋粥家は撤兵を許された。

総大将・長政の重症、精兵の大損失によって、

これ以上戦えないと判断されたからだ。


その代わりに秀政は鉄砲という代理戦力を用意した。

これにより信長も文句は言わない。



七月初旬。


長政は輿に乗せられて、大聖寺城を発つ。


少しの揺れも今の長政には堪えた。

農兵も離散し、常備兵や鬼兵が兵站も担う。


ゆっくりとした行軍であり、到着は八月初旬になるだろう。


加賀で一万二千の門徒を華麗に打ち破った芋粥軍であったが、

その帰路の行軍は敗残の軍にしか見えなかった。



七月二十四日。


大聖寺城砲撃戦と後に記されるこの織田報復戦は、

後世の史家たちに「地獄返し」と記憶される。

あの書状が残っていたからだ。

秀政は歴史に残る名言を作り出した。


また、上杉謙信がこの敗戦一つで、

冬を待たずに撤兵したのには裏があった。


織田側も後になって知ることになるが、この戦で、

謙信の後継者と見なされていた「上杉景虎」が、

鉄砲に撃ち抜かれて討死した。


織田はこの吉報に歓喜した。


実際信長もこの一連の出来事に、感情が激しく揺れ動いた。


まず、北陸方面軍からの速報――

これには誤報が含まれていたとはいえ、

丹羽長秀、芋粥長政の討死、能登・北加賀の喪失が伝えられた。


激怒。


そして


信じ難い。


この感情が訪れた。


柴田、丹羽、前田、佐々、芋粥。


織田北陸主力、そして織田家の中で最も強い方面軍の一つ。


それが手取川で崩壊した。


特に痛かったのが、丹羽長秀の討死。


政務・軍務・調整・忠誠。


その全てを備えた側近中の側近、

織田の背骨ともいえる男を失った。


芋粥長政、こちらは未来の柱であり、

芋粥という、もう一本の柱となりつつある、

秀政の忠誠が揺らぐ恐れすらあった。


激怒だけでなく、未来まで折れた感覚だった。


柴田失脚、北陸放棄、再遠征、責任追及。


その全てを考える必要があった。


そこに丹羽長秀、芋粥長政の生存が伝えられた。

誤報だったのだ。


信長は、まず――

安堵した。


丹羽長秀と芋粥長政の生存を聞き、

ここから織田はまだ立て直せると悟る。


だが能登、北加賀の喪失は事実であり、

怒りは消えない。


安堵・苛立ち・焦燥・再建欲。


様々な感情が混在した。


その気持ちを整理する傍ら、妙な話を聞く。


芋粥秀政の暗躍。


独自の判断で鉄砲千挺を“追加で”調達し、北陸に回すという。


信長は敗戦そのものではなく、敗戦後に何をするかを重視する。


秀政が、即動き、鉄砲千挺という突拍子もない対策をもって、

北陸を再建しようとする。


国家運営能力。


これは信長が最も好む力である。

ここで怒りが吹き飛んだ。


そして極めつけの大聖寺城砲撃戦。


上杉軍の戦死者は四千を数える――

もちろん誇張を含む数字ではある。


さらに謙信の心を折る上杉景虎の討死。


信長は勝敗よりも、その結果の威信を重視する。


手取川の大敗によって、上杉に軍神神話が生まれ、

「無敵の上杉」が印象付けられたばかりだった。


それが――

信長が最も好む合理・火力・防御・新戦術をもってして

討ち破り、軍神神話を即座に打ち砕いた。


信長が喜ばないわけがなかった。


織田は戦勝に沸き、柴田・丹羽は威信を完全に取り戻した。



ただ一人、この報を聞いて渋い顔をした者がいた。


秀政だ。


上杉景虎の討死。


これは後の御館の乱の不発を意味する。


後のこの乱は、上杉家の疲弊を招き、

国力損耗、北条との関係悪化、家臣団分裂を招く。


景勝政権不安定化の決め手だった。


だが、自らが関わった大聖寺城砲撃戦によって、

最も忌避したかったことを招いてしまった。


上杉景勝単独継承。


景勝は行政型、忍耐型、統制型の将だ。

国を維持する能力が高い。


家臣団の温存、北条との関係継続(むしろ景虎の仇討ちへの共感)、

国力維持、謙信遺産の円滑継承。


これらによって、軍神の後に、

安定型国家運営上杉が訪れる。


それは織田家にとって未来の暗雲以外なかった。


またしても秀政の一手が、

織田を強化すると同時に敵も強化した。


だが、この世界の人間に御館の乱が消えるであろうことを知る者はいない。

今、ここで起きていることが彼らにとっては正史なのだ。


誰にも共感されない不安を、秀政は感じていた。



八月八日、鈴鹿。


秀政親子が照り付ける太陽の下、汗を拭きながら待つ。


「見えました!」


兵が興奮気味に伝えた。


鷺山を先頭にゆっくりと進軍する芋粥軍が見えた。


明の方を見る。

我慢しながらも既に大泣きの明がいた。


「お明、ここは笑顔だ」


頭を優しくなでながら伝える。


「は、はい」


秀政の姿を見て、鷺山が馬から飛び降りて走り寄る。


そして跪き、声を震わせる。


「殿、申し訳ありませぬ。

 この俺が付いていながら、若を危険な目に遭わせました。

 兵も半数を喪うことに」


ゆっくりと肩に手を置き、穏やかに答える。


「鷺山玄蕃、よく長政を守ってくれた。

 生きて戻してくれたことに礼を言う」


「殿……」


「お前が居なければこれだけの被害では済まなかっただろう。

 お前の働きのおかげだ。ゆっくり休め」


「は!ありがたきお言葉!

 それでは、このまま城まで先導します」


鷺山も安堵したか、目に涙を浮かべた。

それを隠すかのように馬に飛び乗り、進軍を再開する。


途中、加藤と福島に守られた輿が近づく。


そして一旦進軍が停止する。

担ぐ鬼兵がゆっくりと輿を下ろす。


そして添え木によって固められた足と腕を、

庇うように立とうとする長政に、加藤と福島が肩を貸した。


「義父上……」


「よう無事で帰った。

 だが、まずは俺ではないだろう」


そういうと明の方に目を向ける。


ゆっくりと明の前に進み、右手を明の元に差し出した。

涙ながらに明がその手を握る。


「よくご無事でお戻りくださいました」


「這ってでも帰ると約束した。

 まさか真に這うことになるとは思ってもいなかったが。

 心配かけてすまなかった」


「は……さ……。あ……」


明は何かを一生懸命伝えようとしているが、涙と吐息で言葉にならない。


長政が右手で優しく明を抱き寄せた。


「積もる話がある。

 こうやってお前の顔を見られることが、

 これほど嬉しいとは思いもしなかった。


 これからは時間がたくさんある。

 また後でじっくり話そう」


「は……はい」


そこまで言うと、今度は秀政に向かい合う。


「義父上、勝ちきれませんでした。

 あの大敗を義父上が覆されたと聞きました。

 ありがとうございます」


「いや、俺の功など知れたものだ。

 お前の戦働き、そして勇敢にも丹羽殿を救い出した働き。

 俺はお前のことを誇りに思っている」


「ですが、義父上の大事な兵を半数も失ってしまいました。

 それも父を救いたいという私の我が儘によって」


「そうだ。お前は芋粥の将として誤ったことをした。

 失った兵に対して真摯に向き合え。

 そして残された者たちのためにその身を尽くせ」


「はい……」


「だがな、長政。

 お前は人としては正しいことをした。


 もしお前が私情を殺し、実の父すら平気で見捨てるような、

 冷たい男であれば今後、息子として見られなくなっていたかもしれん。


 先ほども言ったとおりだ。

 俺はお前のことを誇りに思っている」


「ち……義父上……。」


「ゆっくり休んで傷を治せ」


「はい」


「加藤、福島、よう守ってくれた。礼を言う」


「「は!」」


「長政が苦しそうだ。鈴鹿館まで運んでやってくれ」


「お任せください」


そういうと肩を担いで長政を輿に乗せる。

再び進軍を開始した。


(皆、良く戻ってくれた。


 はぁ、だが現実問題、ここからの立て直しが急務だ。

 俺は……たかが二十五万石程度の大名なのだ。


 これだけの消耗だけで、もはや続けての戦すらできぬほどに弱い。


 鬼兵・常備兵すら六千が限界だ。


 これでは天下など、ほど遠い)


「皆、ここは暑い。我らも先回りして鈴鹿館に戻ろう。

 長政を久々の我が家に迎え入れてやらねばならんからな」


「「はい」」


この遠征は芋粥にとって厳しいものとなった。

だがこれによって長政は大いに成長した。

それが唯一の救いであった。

第十一章 伊勢太守編(長政飛躍編) 終幕


【あとがき】

直近の芋粥軍団の某ゲーム風能力値をChatGPTに測らせました。

AIはある程度で過去のことを、断片を残して綺麗に忘れてしまうようなので

あくまで最近の活躍で測ったようです。

(過去の失点はノーカウントになってる場合もあります)


異論多そうですが、以下です。

全般的にたかめですが、ChatGPTの独断と偏見です。

お楽しみ下さい。


能力値は下記を採用しています。

政治、智謀、統率(部隊攻撃力)、武勇(部隊防御力)、魅力


◆芋粥秀政

政治:98

知謀:97

統率:86

武勇:61

魅力:92


寸評:

未来知識を土台にしながらも、それを単なるチート知識ではなく「戦国社会で実行可能な政策」へ落とし込める怪物級の国家経営者。

戦・外交・経済・兵站・技術導入・人材配置を一人で統合している。

特に“敗戦後処理”の異常な速さが突出しており、今回の北陸編で全国級大名としての格を完全に見せた。


特筆項目:

・政治98

 鉄砲千挺即時調達、商会独占、北陸再建、「地獄返し」成立まで一気にやった。

 さらに鉄砲を“北陸の戦局・信長の感情・柴田丹羽の威信回復”まで含めて政治利用している。

 単なる内政家ではなく、国家運営者として全国級。


・知謀97

 戦そのものだけでなく、敗戦後にどう動けば織田の威信が回復するかまで読んでいる。

 さらに上杉景虎討死による御館の乱消滅→景勝安定継承→上杉強化まで即分析。

 歴史全体を俯瞰して動けるため、作中でも別格。


・統率86

 本人は最前線型ではないが、兵站・戦術・軍制・士気管理込みで軍を動かせる。

 特に足軽組頭時代から「兵を死なせぬ」方向で統率を積み重ねている。


・武勇61

 猛将ではない。

 だが戦場経験が豊富で、最低限以上に戦える。

 “死なない武将”としては非常に優秀。


・魅力92

 秀吉、信長、商人、忍び、鬼兵、家臣団。

 立場の異なる者を自然に引き寄せている。

 特に「合理性」と「情」の両立が強い。


◆芋粥 悠

政治:90

知謀:80

統率:23

武勇:9

魅力:91


寸評:

芋粥家の財務・兵站・商流を実務面で支える女性官僚にして二番家老。

秀政の構想を“実際に回る形”へ支える能力が高い。

派手さはないが、芋粥家が急膨張しても崩壊していない最大の理由の一つ。


特筆項目:

・政治90

 兵站・会計・予算管理能力が極めて高い。

 七万兵站運営や北陸遠征の後方支援など、既に大名家中枢級。


・知謀80

 商流理解・相場理解・実務判断に優れる。

 政成ほど国家設計寄りではないが、現場実務能力が非常に高い。


・統率23

 兵を率いた経験がなく、軍事型ではない。


・武勇9

 完全非戦闘員。


・魅力91

 家臣団・家族・商人から自然に慕われる。

 “安心感”による魅力が非常に強い。


◆千種政成

政治:96

知謀:86

統率:28

武勇:12

魅力:95


寸評:

鈴鹿経済圏と芋粥家臣団の基礎を築いた、戦国財務宰相。

戦ではなく、“富と人”で国家を作るタイプ。

秀政が国家戦略家なら、政成は国家基盤構築者。


特筆項目:

・政治96

 鈴鹿の街作り、人材登用、商業成長、資金形成。

 芋粥家の経済基盤をほぼ一人で作っている。

 戦国大名級というより、近世型財務官僚に近い。


・知謀86

 商売・人材・損得勘定に極めて強い。

 特に「誰を使えば組織が安定するか」を見抜く能力が高い。


・統率28

 兵を率いた経験がほぼない。

 戦場型ではない。


・武勇12

 虫も殺せない善人。


・魅力95

 善人でありながら有能。

 だから人が集まる。

 戦国では極めて稀少な“民政型カリスマ”。


◆千種 政親

政治:91

知謀:99

統率:71

武勇:63

魅力:52


寸評:

芋粥家暗部の中核。

合理主義・陰謀・情報操作において作中最上位級。

倫理ではなく“結果”で動く。


特筆項目:

・政治91

 単なる暗殺者ではない。

 北畠誘導や勢力操作など、政治そのものを動かしている。


・知謀99

 井口暗殺、謀反誘導、情報操作。

 さらに今回も、鉄砲流通による北陸再建策を即座に組み上げた。

 「戦場外で勝つ」能力が極端に高い。


・統率71

 現場指揮は可能。

 ただし大軍統率型ではなく、少数精鋭・秘密工作向き。


・武勇63

 最低限以上に戦える。

 暗部実働型としては高め。


・魅力52

 人望型ではない。

 恐怖・合理性・能力で従わせるタイプ。


◆芋粥長政

政治:76

知謀:84

統率:93

武勇:88

魅力:91


寸評:

芋粥家次世代の軍事的象徴。

若さ・未熟さを抱えながらも、既に“兵が命を預ける将”になっている。

今回の北陸編で完全に大将格へ成長した。


特筆項目:

・政治76

 まだ若く、国家経営経験は不足。

 ただし戦後処理や軍維持への理解は既に高い。

 志摩、伊賀への外交もこなした。


・知謀84

 加賀戦での誘導戦術、渡河利用、伏兵運用。

 単なる猛将ではなく戦術理解が深い。


・統率93

 門徒一万二千撃破。

 さらに手取川でも、壊滅状態で兵が最後まで長政を守った。

 これは“兵が命を預ける統率”がないと成立しない。


・武勇88

 最前線で戦い続け、重傷を負っても殿を務めた。

 若武者としては作中最上位級。


・魅力91

 明、鬼兵、若手、常備兵。

 皆が自然に惹かれている。

 「未来の当主」としての求心力が極めて強い。


◆浅野 清隆

政治:82

知謀:91

統率:78

武勇:61

魅力:74


寸評:

芋粥軍を制度面から支える軍務大臣。

鬼兵育成、兵農分離、常備軍整備など、“軍そのもの”を作った。

理論派軍人。


特筆項目:


・政治82

 兵農分離、軍制度、補給体系。

 軍を維持する行政能力が高い。


・知謀91

 鬼兵育成や軍改革を見ると、

 「どうすれば軍が強くなるか」を理解している。

 軍組織構築能力が極めて高い。


・統率78

 理論統率型。

 大軍実戦経験は少ないが、教育能力が高い。


・武勇61

 忍び出身で実戦経験もある。

 ただし猛将型ではない。


・魅力74

 厳格な教官型。

 カリスマよりも実績で慕われる。


◆鷺山 利玄

政治:58

知謀:84

統率:90

武勇:88

魅力:87


寸評:

叩き上げの現場最強クラス。

加賀戦、手取川撤退戦で一気に格を上げた。

“極限状態でも兵が崩れない将”。


特筆項目:

・政治58

 軍事特化。

 政治・経済型ではない。


・知謀84

 加賀戦での地形利用、誘導、包囲、撤退判断。

 実戦知謀が高い。


・統率90

 手取川の地獄で軍を維持し続けた。

 壊滅戦で兵がついてくる時点で超一流。


・武勇88

 最前線型の猛将。

 現場生存力も高い。


・魅力87

 若手武将たちからの信頼が厚い。

 「この人がいるなら戦える」と思わせるタイプ。



自らの書状が歴史学者にとって宝物のように扱われる幸せよ。

秀政は感涙していることでしょう。



一、大聖寺籠城において、上杉勢へ地獄返し致すべき事。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
いつも投稿お疲れ様です. 能力値で,千種にもしっかり軍事方面で影響力が強まりましたね. 秀政の政治面が国家元首級になったのもびっくりです. これは関ヶ原に梟雄が増えそうな予感.位置的には特大有利だし,…
信長の情緒がジェットコースターになってますなw 実際丹羽が欠けると戦略的に痛いというか手数が減る可能性が高いので、公に論功はし辛くても長政の評価は上がってるかもしれませんね 松親の献策のお陰で芋殿も失…
生きててよかった。。。
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