言い訳「ずっと憧れて嫌いでした」――黄の供述
あたしの姉は美しい人。
いつも綺麗な笑みを浮かべて、愛しいあの人を虜にする――。
御機嫌よう、オルカの話はまた今度。
今日はあたしの話を聞いて欲しいの。
あたしの国は、夢のような国だって言われているリゾート地。
でもね、夢はタダで買えないの。
夢のような場所を維持するには、莫大なお金が必要で。尚且つその苦労が報われるわけじゃないの。
だからうちの国にしょうがなく住む人は、「ありゃ薄汚れた茶の国だ。黄薔薇なんて烏滸がましい」と嗤うわ。
悔しい、悔しいってエミリお姉様に泣きついていたの。
エミリお姉様は毎年うちのリゾート地を利用してくれていて、そうね、お気に入りは人工芝と植樹で作った森。花の手入れは大変だけど、お姉様が気に入るっていうから、薔薇園も作ったの。
でもね、あたしお姉様が憎い。
だってお姉様だけ、オルカやルシェルに愛されて狡いわ。
あたし達、薔薇と称されている男性陣のうち二人から愛されているなんて!
オルカはミステリアスな人、物静かな人で厳かな空気を持っている人。
もしもオルカが怒ったらどれだけセクシーなんだろうって、夜に胸がドキドキしちゃうくらい。
ルシェルはかっこいい人、誰にでも優しくて少し強引な人。
もしもルシェルに口説かれたらどれだけ有頂天になるのかしらって、夜も眠れなくなるくらい。
その二人を、お姉様は幼い頃から独占している。
だから、あたしは――。
事件当日、お茶会をしていて。
あたしはお姉様と一緒にお茶を飲んでいたの。
皆もそうよ、皆も一緒に飲んでいて。ルシェルとオルカなんてチェス対決してて。
その日はお姉様の国柄を研究しに、お姉様のお城をお勉強させて頂いたの。
皆のところに戻ろうと廊下を歩いていたら、お姉様と執事の声が聞こえたわ。
「茶色の国がうちの国を学んでどうするつもりかしら」
「――学の無い私には判りません」
「お前はつまらない男ね。こういうときの話相手くらい勤めてみなさい?」
せせら笑うお姉様の声と、陰から窺った表情は一生涯忘れない。
あたしは一気にその場にいるのが恥ずかしくなったの。
でも、此処で逃げたらあの言葉を聞いたと思われて、資金源を断たれるかもしれないから……あたしは我慢して、テラスに戻る。
お姉様は遅れてから戻って、あたしに気付くと、可憐な微笑みを――嗚呼、汚い汚い汚い!
そんな汚い笑みで、オルカやルシェルを誑かして!
そんなのだから……そんなのだから、殺されるんだわ。
毒殺された後も、お姉様の処理は滑稽。
オルカは納得していたし、心から頷いてお姉様を心配していたけれど。
ルシェルは何か他のことに気を取られていたから、ああルシェルとお姉様には愛なんてなかったのね、と嗤いたくなった。
皆はきっとお姉様に会いになんて、黒の国へ行かない。
そうね――ただ一人、オルカだけは可哀想。
オルカはだって――皆の厄介なお荷物の犠牲者なのだから。
此処より先は、誰も知りたくない五人の卑怯者の世界。
だからあたしは口を閉ざす。
ねぇ、それでもあの人は動くというの?
このままでも充分皆は幸せよ?
でも、そうね――あの人は清い人だから。
オルカの為に、何処までも黒く染まることができるのでしょうね。
オルカが愛したのがお姉様じゃ無く、あの人だったら宜しかったのに。
それなら一つ面白いお話をしましょうか。
親しい人ほど、落差があると憎らしく。
皆との温度差に、混乱するのでしょう。




